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確率の謎


 眼の手術のために入院中。
 早朝5時前、目がさめて「トイレに行きたい」。

 でもいつもの習慣で、無意識にわずらわしい……はいているものをすべて脱ぎ捨てており下半身がスッポンポンだから、パジャマ(ジャージ)の下をまず、足元付近の布団の中から、捜索する。

 点灯前ゆえ部屋は真っ暗。おまけに片眼は眼帯でクローズ。右眼はメガネなしだからほぼ全盲状態。

 ジャージの下さえ見つけることができれば、きっと下着(トランクス)は一緒についてくるにちがいない。

 手探り足探りでようやくジャージを発見。
 布団が2枚あるので、捜索にはかなりの時間を要した。
 足首あたりをまさぐり、共犯たるトランクスも確保。

 まずはトランクスをはくために、その前後を確認。これが案外難航してやがてあきらめた。

「トイレに行くだけやねんから、いっそ前後を気にせずはいてしまおう。」

 成功の確率は2分の1 だから……と、思ったのが間違い、これこそ机上の空論。

 手探りの場合、トランクスは前と後ろの2極ではなく、闇の中では東西南北、4面あることが判明した。そのうちの1面だけが正解で、小窓があいてる。
 つまり4分の1 の成功確率なのだ。

 ところが、今はトイレに行くだけであるから窓が後ろでもよいと、気を楽にして足を入れると、片方の穴に両足を入れてしまい、ベッドに座ったままで転倒。
 そうか、その確率も足せば成功確率は8分の1 だった。

 そのあと、片足をずらしていれなおし、ようやくその上からジャージをはく。

 カーテン開けて廊下にでたら、通路には蛍光灯がついてるので、ボンヤリとではあるが歩ける。
 そこでジャージの前のポケットが後ろにあることがわかったけれども、そこまでいれると確率は16分の1。

 男性用トイレに到着し、いざ事をなそうとしたらトランクスに窓がない。やはり向きが違ってた。

 さすがに裏表は間違えていなかったが……そこまでいれるとさらに確率は……

「それにしてもワシ、いったいどんなけ高確率で、とことん外してるんや! 選択の才能なさすぎ!
 こんなことではまだまだ、手先に頼る".視力のない生活"は無理やな」

 お医者さんの言うことをよくきいて、よいこ になろうと決めた。

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