熊の場所へ
一番好きな作家は舞城王太郎。その舞城の『熊の場所』という短編集がある。
初めて読んだ社会人なりたての時、その中の「ピコーン!」という作品に衝撃を受けて、一番お気に入りの部分はスマホの壁紙にしてあるし、書き写して壁にも貼ってある。ダメな自分を奮い立たせるために。
MAIJOっぽくないトコ抜き出してごめんなさい笑。でも特に一番最後のとこが怠惰なわたしに刺さる…。
で、その短編集には他に「熊の場所」と「バット男」が収録されてるんだけど、まぁピコーン!も含め全部そこそこグロみや痛々しさがあるので、ピコーン!以外は殆ど読み返していなかった。
ところが先日、あまりにも人生にヤル気が起きなさすぎてまたピコーン!を読み返し、ネットで感想を見て回っていたら(人の感想を読むの面白いですよね)、「熊の場所」についての感想を目にし、アレ?そんな作品だったっけ?となった。
あらすじは、小学生の主人公が、皆に疎まれる同級生「まーくん」が猫を殺しているのではないか?と感じながらも友情を育んでいく、といった話。ざっくり。(説明力ないなぁ私)
では熊の場所とは何かというと、主人公の父親が若い頃に熊に襲われた時、すぐに現場に取って返し熊を殺したことで得た教訓「恐怖を克服するには、すぐ"熊の場所"に戻り、恐怖と対峙して打ち勝たなければならない」ということから、恐怖の根源や、恐怖の存在する場所、みたいなもの。主人公は同級生まーくんが猫殺しだ!と気付き恐怖を感じたため、敢えて距離を縮め、友人関係を構築しようとする。
全然読み返してなかったせいか、勝手に自分の中で、この作品は「因果応報」みたいなテーマだと思っていた…。
そして思った。いまのわたしにはこの「熊の場所に戻る」ことが必要なんだと思う。
日々の恐怖。恐怖なんて壮大な言葉で語るのは烏滸がましいけれど、「ちょっと後回しにして脳の片隅にずっとこびりついている企画書作成」や、「今日中に送らなければならないけどまだ手をつけたくなくてウダウダしてる断りメール」みたいなちょっとした「やらなきゃ」を、無意識のうちに心の底に澱のように積み重ねて、いつしか恐怖に変えてしまっていたのだと思う。それらとひとつひとつ対峙して退治していくこと。そういうちょっとしたコツコツが、わたしの自己肯定感を自分で引き上げてくれるのではないか。この「思考が脳の上を滑る感じ」も改善されるのではないか。なんて。
やる気の起きない時、やる気を出すいちばんのコツは取り敢えず手をつけ始めること、みたいな。そういう話、かなぁ。
いつまで経っても芯を食わないこの人生、給料は悪くないし会社からの評価も悪くないけど、うっすらウツで日々時間潰しみたいなこの人生、自由時間の大半を床に寝そべって茫としているようなこの人生、きっと何かしら必要なのだ、長っがいテコの棒みたいなヤツが。その棒で、ちょっとした窪みにハマったわたしの人生という石をコジ起こすしかないのだ。あ、なんか立原道造っぽいかも。笑
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