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お父さんは風俗嬢?!

最初は単なるヘアメイクの仕事だった。
確かにちょっと特殊な現場ではあったけれども…

。.:+*:・'☆。、:+*:.

「新規オープンするニューハーフヘルスの店長がさ、ウイッグ対応出来るヘアメイクを探してるんだけど、塁(るい)、あなたに頼めないかな?」

夏も終わりだと言うのにやたらと蒸し暑い9月中旬、期間限定のちょっとお洒落なビアガーデン最終日の飲み会の席で『腐れ縁』と言う表現がやたらとぴったりハマる友人のカヤが唐突に僕に尋ねてきた。

「ニューハーフなのにウイッグ?地毛じゃ無いの?…ひょっとしてエクステびっちりつけてるパターンとか?」

ニューハーフのヘアメイク…と言っても特に普通の女性と施術が変わる訳では無い。
まぁ、これがファッションの話であるなら体格的な問題などは生じるかもしれないけれど、女性だろうがニューハーフだろうが髪は髪なので個人差以上の明確な差が出ることはありえないのだ。

「ううん、違うよ、ニューハーフキャストさんは当然地毛なんだけど、ウイッグセットが必要な女装子キャストさんが居るらしいのよ。あたし良く分かんないんだけど、予定していた美容師さんがウイッグのヘアメイクは嫌だって仕事受けてくれなかったらしくて店長が困ってるのよね。…て言うか美容師なのにウイッグが嫌って、そんな事ってあんの?」

そこまで聞いて合点がいった。
ウイッグと言うシロモノはヘアメイク的には確かにめんどくさいものなのだ…

「ウイッグの髪って素材がファイバーだったり人毛由来のモノでも表面にコーティングが施されているから切るとハサミの切れ味が一発でショボくなるんだよね、しかもウイッグってドライヤーセットが出来ないから普通の髪の毛のセットに比べて格段に手間がかかるんだよ、要するに面倒臭いのw」

完全に納得した…という感じで頷きながらカヤは急いで言葉をつなげる。

「塁はさ、あたしのウイッグをバッチリヘアメイクしてくれるじゃん?ハサミの切れ味とか無問題だよね?、、、ねぇ、仕事引き受けてくれない?他に頼める人いないのよ!おねがいっ!」

やたらと煌びやかなラメをあしらったボディーコンシャスなワンピース、その肩口にあしらってあるチャームが取れてしまうのでは無いかと思うほど激しい動きで身体を前傾させ、人の鼻先スレスレまで拝んだ両手を近づけながらまたカヤは同じセリフを繰り返す。

『お・ね・が・いっ! (人∀・)❤︎』

カヤは昔から物腰は柔らかいのにやたらと押しが強く、頼み事は基本的にNOと言わせない話術の持ち主だ。某有名商社で常に営業成績トップ張ってるくらいだからそれもまぁ当然なのだろう、でも日中のスーツ&ネクタイ&オールバック姿の『メンズモード』を一度も見た事が無いのでこういう時以外はその事を忘れてしまう。

「OK、OK、ギャラとスケジュールの折り合いがつけば無問題だよ、現場は…」

僕がそこまで喋った所で、カヤは食い気味に…

「ホント?塁ならOKしてくれると思ってた!、大丈夫、塁のスケジュールに紗理奈の予定をあわせさせるからっ❤︎

そう言いながら早々に「ヘアメイクGET!」と先方にLINEを送るカヤ、
本っ当〜〜に仕事が速いな(^^;

そして秒で『やったー!』と言う感じでウサギのキャラがバンザイしているスタンプが返ってきた(; ^ω^)

どうやら紗理奈というのは店長の名前らしい、、、

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