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01_一体「これ」は何なのか?

  • なぜ、この現実世界なるもの(=「これ」)は存在しているのか?

  • 「これ」がなくなってしまったとしたら、後には一体何が「在る」のか?

  • なぜ何もないのではなく、他の何かがあるのでもなく、「これ」なのか?

  • 一体全体、「これ」は何なのか???????

 以上のような問いを、幼少時よりずっと考えてきました。
 いわゆる、「なぜ何もないのではなく何かがあるのか?」に類する問いです。

 おそらく、小学生くらいの頃の事だったと思います。バスに揺られ、窓の外の風景を眺めながら、街路樹、ガードレール、道路標識、対向車線を走る車、空を流れる雲、大地、太陽、地球、宇宙、重力、空間、時間、そして私や他者の身体。そのようなものでこの世界は構成されているのだなぁ、と思いをはせていたとき、ふと、ではそのようなものが一切なくなってしまったとしたら。この現実世界を構成するありとあらゆるもの、宇宙そのものが消えてなくなってしまったとしたら、他にいったい何が「在る」のか? ……逆に言えば、「在る」の限界は「この現実世界」だけなのか? という考えが湧いてきたのです。
 
「『これ』以外に、いったい何が『在る』のか? もしかして、何も無いのか??」。

 このような考えに至ったとき、私はあまりにもの恐ろしさに目眩がし、鳥肌が立ち、背筋が凍り付く感覚に襲われました。まるで暗黒の真空に投げ出されるような、それどころか、真空すら存在しない「無」に投げ出されるような、絶対的な不安感。これはおそらくこの現実世界で味わうことができる、最も深いレベルの不安なのではないか、と思えるようなものが、私を襲ったのです。
 これが、私にとっての、この手の問いの原体験です。

 考えてみれば、我々は生まれてきたと同時に、物質や生命、空間や時間、鳥、猫、雲、木、机、椅子、コーヒーカップ、空、大地、地球、太陽、銀河系、意識、感情、身体、言葉、社会、宇宙、分子、原子、核子、自然法則、そして「わたし」や「他者」といった奇妙なものが存在する、なんとも不思議な謎の世界に投げ出されているようなもので、そういう奇妙奇天烈なあり方に対して、物心ついたころにはさも当たり前のもののように感じてだんだんと常識に染まって気にならなくなりますが、ふと冷静になって考えてみたらものすごく不気味で意味不明な前提を無根拠に受け入れてのうのうと生きてきたのではないかと思えてくるのです。
 いったん常識を忘れて、正気になって、冷静になって考えてみてください。本当に、わけがわかりません。意味不明です。
 いったい全体、「これ」は何なのでしょうか?


 それは「究極の問い」と呼ばれるように、あまりに根本的な問いであるにも関わらず、あまりに根本的すぎるが故に、まだ人類が誰も解答を示すことのできていない、つまり、非常に難しい問いなのだと思います。
 だから、多くの人にとってそれはたぶん、誰しも思い浮かびはするものの、考えてもわからない意味のないことであり、そんな形而上の問いに向き合うのは避けて、とりあえずは目の前にある現実的な問題に対処することを優先してしまうのだと思います。
 我々はみんな、そういう根本的な、そもそもの部分が宙ぶらりんのままで、それでもなぜか、(本当になぜだか分からないけど)生きているのです。

 しかし、当時自殺を考えていた自分にとって、それは何よりも切実な問題でした。すなわち、「死」という現実を目の前にして、実際に向き合って考える意味や価値のある、唯一の「現実的な」問題だったのです。
 だから私は、この奇妙な「あり方」、あるいは「在る」ということそのものについて、あらためて距離を置いた視点で、俯瞰した視点で眺めてみようと考えました。
 そして、いったい全体何が起こっているのか、「一体『これ』は何なのか」、ということについて、少しでもまともな理解ができないかと試みました。

 その結果、おそらくこんな感じではないか、という輪郭をつかむことができたと、ほぼ確信しています。


 本稿では、そのアイデアをみなさんと共有できたらと思い、できる限りゼロベースからの議論で、次回以降、まとめてみようと思います。
 また、その過程において、「何故なにもないのではなく何かがあるのか」「存在とはなにか」「なぜこの世界は何らかの自然法則に従っているようにみえるのか」「現象的意識やクオリアはなぜ生じているのか」「なぜ私はこの私なのか」「死んだ後はどうなるのか」「主観世界と客観世界はいかにして統合されるのか」等々の問いに対しても、はっきりと、明確な答えを与えることになると思います。


さて……一体全体、「これ」は何なのでしょうか?

つづく

注:この文章は「そごのせかい」最終話第2~4章の内容を修正・転載したものです。https://sogonosekai.web.fc2.com/

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