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里都まち♡なかいわいがやサロンレポートvol.2│よいものをみんなでつくるため。先進事例からのまなび

6月からスタートした「里都まち♡なかいわいがやサロン」。あらたに整備する生涯学習施設のあり方を考える対話の場です。
2回目の7月20日(土)は、町民みんなで先進事例を見に行く回。視察先は東京都・多摩地区にある瑞穂町の「瑞穂町図書館」と「瑞穂町郷土資料館 けやき館」です。全国的に夏休みがスタートした地域も多かったこの日、計20名の町民が視察に参加しました。

わいがやは、バスの車内から
朝から気温がぐんぐん上がる猛暑のなか、集合場所の中井町農村環境改善センターに、参加者たちがぞくぞくと集まります。貸し切りバスに乗り込んで、いざ瑞穂町へ。車内でははじめにアカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)の岡本真さんから、お話がありました。

片道1時間半~2時間の貸し切りバスのなかも、対話しながら過ごす時間に。

「今日集まったのは、中井町でつくる施設への思いや願いをもつ皆さんです。瑞穂町でも、ぜひ意見を出し合ってみてください。
午前中に訪問する『瑞穂町図書館』は、2022年に築45年の建物をフルリノベーションしてリニューアルオープンしました。現地では司書さんのお話を聞きましょう。
中井町の施設には郷土資料館の機能が含まれる予定なので、午後に訪問する『瑞穂町郷土資料館 けやき館』も参考になるでしょう」

この日は町長も、いち参加者でした。ほとんどの町民が瑞穂町に行くのは初めて。想像をふくらませながら、和やかな雰囲気の“わいがやバス”に。

[1日の行程]
8:30       中井町農村環境改善センター集合・出発
8:30~10:30   往路(圏央道)
10:30~12:30   瑞穂町図書館滞在
12:30~14:00   移動、昼食
14:00~15:00   瑞穂町郷土資料館滞在
15:00~17:00   復路(圏央道)
17:00             中井町農村環境改善センター到着、解散

「瑞穂町図書館」の見学
瑞穂町に到着すると、瑞穂町図書館の館長 友野裕之さんと、司書 西村優子さんが出迎えてくれました。

図書館のエリアと一体にある「瑞穂町ふれあいセンター」。建物の向かいには町営プールも
「瑞穂町図書館」へのアプローチ。瑞穂町図書館のロゴタイプは開館当時(1973年)のものを引き継いでいます

「まずは先入観のない状態で、館内を自由に見学していただきたいんです」と岡本さん。参加者は、思い思いに館内を歩きます。「Mizuho town library」のネオンサインが印象的な入り口から一歩、足を踏み入れると、洗練された空間デザインに驚きます。
館内はWi-Fi使用可で、電源も随所にあり、フリードリンクの機械には水・お茶だけでなくコーヒーも完備。パンが買える自動販売機もありました。
そして豊富な閲覧スペースには、くつろげるソファーがあれば、自習やリモートワーク向きのカウンター席があり、数人がたまれる半個室もあれば、10人程度が座れるガラス張りのスペースもある――。
わいがやサロン第1回目のキックオフでも、特にWi-Fiやカフェや、勉強に集中できる自習スペースは、施設に求めたい機能として複数の声が上がっていましたね。

子どもが走り出したくなってしまうという入り口の廊下。職員たちは「走らないで」ではなく「ゆっくり歩こうね」と声をかけます。
印象的な「テーマ配架」。「ティーンズ」のコーナーには「Bふつうって何?」「C学校で学べないこと」「E社会とつながる」などのテーマが並びます
大瀧詠一さんが晩年を過ごしたというゆかりの瑞穂町。大瀧詠一さんライブラリーにはレコードジャケットや、貴重な資料も
複数人で勉強をする子どもたちの姿も、随所に見られました
コワーキングスペースのように、カウンター席を使う人たちも。
お茶、お水だけでなく、アイスとホットが選べるコーヒーも。自動販売機ではパンが買えます
ドリンクを片手に、ソファーで本を読む親子連れの姿もありました
飲食可能な読書テラス。お弁当を持参してテラスで食べ、1日中図書館で過ごしていると話してくれたご年配者も。立川市から月に3回、バスで通っているそうです
「おはなしコーナー」には絵本や紙芝居など。未就学児の親子連れにとって靴を脱げるスペースはマストアイテム
ファンミーティングにも使われる個室スペースは、視察時、小学生の4人組が勉強していました

夏休みのスタートもあり、子連れのお父さんやお母さんはもちろん、小学生だけで勉強をしていたグループも。わいがやサロン参加者の一人は、子どもたちにインタビューをはじめました。
「おじさんたちは中井町っていうところから来た。中井町にも、こんな施設をつくりたいって思ってるんだけど、ちょっとお話し聞かせてくれる?」
そう切り出すと、リニューアルされる前に遊びに来たことはあるか、いまはどんな風に図書館を使っているか、お昼ご飯はどうするかなど質問していきます。
「新しくなる前は知らなかった」「みんなで勉強ができるからうれしい」「お昼は自動販売機でパンを食べ、午後はプールに入ります」とすこし照れながら、子どもたちも応じていました。

「瑞穂町図書館」の司書 西村優子さんのレクチャー
自由見学に続いては、司書の西村さんのお話を聞く時間。

「瑞穂町ふれあいセンター」の一室に集まって、レクチャーを受ける参加者たち

瑞穂町図書館リニューアルのキーパーソンだったのが、司書の西村さんです。レクチャーでは「ハード面」と「ソフト面」の改修事業の特徴について、お話しいただきました。
「本日は、『わいがやサロン』の一環でお越しいただいたと聞いています。瑞穂町図書館も、住民ワークショップを開催したことが、リニューアルに際しての大きなポイントでした。意見を出し合いながらつくったことで、ここが住民の皆さんにとって本当に必要な場になったと思っています」と西村さん。冒頭で、対話するプロセスの大切さにふれました。
瑞穂町図書館の改修にあたってのメインコンセプトは「本や人とゆるやかにつながり、自分の居場所と感じられる図書館」です。図書館を見学したのちにお話を聞くと、そのコンセプトが具現化されていたことに気づきます。
コンセプトを実現するためのテーマは以下の5つ。

・誰もが利用しやすく
・つながりや交流による学びの拡大
・周囲の自然環境を活かす
・地域の文化と産業を学び、支える
・安全で持続可能に

まずはハード面について。瑞穂町図書館は、1973年に竣工したRC構造の建物をベースにフルリノベーションを行って、2022年にリニューアルオープンしました。過去にも増改築を行った経緯があったため、2022年のリニューアルでは現行法に沿った改築を行う必要がありました。そこでもともと3階建てだった3階部分を減築して2階建てにしたうえで、一部増築をしています。
増築部分は、RC造に負荷のかかりにくい鉄骨や、木造にすることで、持続可能な構造を生み出していることが、ハード面の特徴です。にもかかわらず、施設のなかを歩いていて、どこがRC造でどこが木造(増築)か、見分けがほとんどつきません。それぐらい、施工チームがうまく工夫をしてくれたと西村さん。
また施設内にはエレベーターやスロープを設けたり、通路はベビーカーや車いすでも行き来しやすい広さを確保したりと、誰もが利用しやすい機能を整えています。

「瑞穂町図書館」リニューアルのキーパーソン、司書の西村優子さん

続いてソフト面。冒頭でふれたワークショップは「①計画策定~設計段階」と、「②開館準備段階」の大きく分けて2段階で行いました。各3回ずつの開催で、延べ約170名が参加したそうです。②の時期はコロナ禍が始まったころで、開催するかどうかの判断も難しかったと西村さん。結果的に、このとき実施したことが今の図書館の姿につながったと、振り返りました。
また配架されている本の見せ方にも、瑞穂町ならではの特徴がありました。多くの日本の図書館は、膨大な書籍を「日本十進分類法(NDC)」によって整理し、背ラベルで管理します。ですがここでは「みずほ楽」「みずほ学」「みずほ育」といった独自のテーマを設け、テーマに沿った書棚をつくりました。「本屋さんで、本を手に取る感覚に近いと思います。『みずほ』に関わりの深いテーマから本を探していくことで、まちの文化にふれてもらう。この土地に、愛着を感じてもらいたい」と西村さんは話します。

「みずほ学」の棚には「Dみずほとお茶」や「Eみずほと農×商」、「Gみずほを学ぶ」などのテーマが。

もうひとつ、瑞穂町図書館には大きな特徴があります。それは誰もが「自分の居場所」と感じられる図書館であるために、「禁止事項がない」ことです。
瑞穂町図書館では、ワンハンド(おにぎりやパン)であれば、館内での飲食OK(お弁当はテラスのみ可)。おしゃべりをしてもいい。Wi-Fiを使ってパソコンで仕事をしてもいい。子どもがゲームをしてもいい。
ですが開館当初は、子どもたちが館内で走ってしまったり、周囲をはばからず大きな声でおしゃべりをする人がいたりして、西村さんたちは悩みました。走らないで、話さないで、とは言わないやり方があるだろうか。
そこで、立ち止まって考えてもらうため、いくつかのポップを掲出することにしました。ポップのひとつには、こんな言葉がありました。「誰もが利用しやすい場所であるために わたしにできることはなんだろう」。このように働きかけていった結果、図書館がお互いに配慮し合う場になってきたそうです。

「誰もが利用しやすい場所であるために わたしにできることはなんだろう」と書かれたポップ
具体的にはどのようにテーマ配架を実現していったか、年間にかける図書購入費の予算はどのぐらいか、運営にあたっているスタッフの体制(人数)についてなど、参加者たちからたくさんの質問が
最後にみんなで記念撮影。瑞穂町図書館の皆さま、ありがとうございました!
みんなで昼食のひとコマ。「禁止事項をつくらないってすごいけど、実際はどうやってやるんだろう」と、思いを巡らせた人も。

「瑞穂町郷土資料館 けやき館」と「耕心館」の見学
昼食が終わると、午後の視察へ。「瑞穂町郷土資料館 けやき館」と、社会教育施設の「耕心館」を見学します。いずれも瑞穂町が所有する公共施設。
2014年に開館した郷土資料館は、瑞穂町の歴史や文化、自然について、楽しく学ぶことを目的としています。常設展のテーマは大きく分けて「瑞穂の自然」と「瑞穂の歴史と文化」の二つ。狭山丘陵を擁する豊かな自然と、瑞穂町図書館でもふれてきた「狭山茶」や、多摩だるま、村山大島紬などの文化が、ジオラマや映像なども交えて分かりやすく紹介されていました。

「郷土資料館 けやき館」。樹齢約300年のけやきの巨木と、この地にゆかりのあるニホンオオカミのブロンズ
郷土資料館の入り口には、1,000分の1の縮尺でつくられた瑞穂町とその周辺の航空写真「バーズアイ瑞穂」が床一面に広がります
自分の家が分かるぐらいの大きさなので、町民たちはこれを見ながら盛り上がるのだとか
町内の豊かな自然と生きものについてテーマごとに紹介するコーナーや、狭山丘陵の雑木林の様子を光と音出演出したコーナーなど
「地形シアター」ではプロジェクションマッピングで、土地の隆起や多摩川の変遷によって地形が形づくられていくさまや、道、鉄道、横田基地などによって変遷していく様子を伝えています
この地の伝統工芸として続く「多摩だるま」。現在は5つの家がそれぞれ特徴のあるだるまをつくっているそうです
「狭山茶」の産地である瑞穂町。お茶を摘み、揉むときの手作業の技術についてお話を聞きました
江戸時代からかたちを変えて受け継がれてきた、和洋折衷様式の風情ある「耕心館」。コンサートや展覧会の自主事業だけでなく、一般への貸し出しも行っている社会教育施設

1日の振り返りを、復路のバスで
まる1日、たっぷりと瑞穂町の施設を見学したわいがやサロン一行。復路のバスでは、マイクをまわして振り返りを行いました。岡本さんからはこんな前置きが。
「皆さんお気づきかと思いますが、今日見た図書館、郷土資料館、社会教育施設という3つの機能。瑞穂町では一つひとつが独立していましたが、中井町では複数の機能を融合した複合施設になるでしょう。
皆さんからも指摘があったとおり、瑞穂町図書館のリニューアル事業は、この地域に『横田基地』があることで、費用の多くが防衛省の補助金によるものでした。
つまり瑞穂町の事例が、そのまま中井町で真似できるわけではありません。ですがアイデアは、制約があるからこそ生まれるものです。中井町で取り入れるならどういうところか。ぜひ考えてみてください」

中井町の生涯学習施設なら、どんなところを取り入れられそうかという視点で考えようと岡本さん

マイクを受け取った参加者たちも、次々と言葉をつないでいきます。
「勇気を振りしぼって子どもたちに声をかけてみてよかった。夏休み初日の瑞穂町図書館は、ほんとうに子どもたちの“居場所”になっているんだなとわかりました。こんな施設が中井にもあったらいい」
「図書館では、瑞穂町をアピールする力を感じました。子どもたちのなかには、故郷愛が確実にはぐくまれていくんだと思います」
「周囲の景観を生かすという、図書館のリニューアルの考え方は、里都まち♡中井でも取り入れたいです。郷土資料館の地形シアターでは立川断層の話がありましたが、防災など、未来への備えも伝えていきたいですね」
参加者たちの感想は絶えませんでした。

帰路の車内では、マイクをまわして濃密な1日を振り返りました。各々の感想をみんなにシェアして、第3回目のわいがやサロンにつなげます

中井町の生涯学習施設への熱い思いは、「わいがやサロン第3回」のテーブルへと引き継がれていきます。都合がつかず、今回は同行できなかったという方も多くいらっしゃることでしょう。ぜひ、3回目のサロンにご出席ください。視察の熱を、参加者たちが共有します。3回目からのジョインももちろん歓迎です。
皆さまのご参加をお待ちしています!


無事に中井町農村環境改善センターに帰ってきました。皆さん、長旅お疲れ様でした!

次回以降開催概要

3回目:視察報告をもとにみんなでディスカッション
日時:8月9日(金)18:30~20:00
18:00から開始までプレサロン(フリートーク)オープン
場所:中井町農村環境改善センター

最新の情報は、中井町のホームページSNSをご覧ください。

中井町公式Instagramアカウント
https://www.instagram.com/nakai_town/


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