医学学習(息切れ・呼吸困難の鑑別、肺血栓塞栓症、肺高血圧症)

1.息切れ・呼吸困難

 呼吸困難は、①気道、②ガス交換、③循環のいずれかが障害されることで、全身に十分な酸素を供給できなくなった病態である。
 鑑別では、まず急性発症なのか、もしくは慢性発症なのかを確認する。
急性の場合は、まず急性心筋梗塞・気胸・肺血栓塞栓症を除外するところから始める。
急性の場合は急性気管支炎・気管支喘息・心不全が頻度が高く、
慢性では気管支喘息・心不全・COPD・間質性肺炎の頻度が高い。
 間質性肺炎の背景として、膠原病など自己免疫疾患が絡むことも多い。

2.肺血栓塞栓症(PTH)

突然の頻呼吸と呼吸困難で疑う。胸痛は右心負荷による相対的右室虚血により、狭心症様のものが起こる。
深部静脈血栓症(DVT)との連続性があり、下肢の一側性の腫脹・疼痛・赤紫色を確認する。
検査所見として①低酸素血症 ②右心負荷 ③凝固能亢進 がポイントで、心電図でⅢ・V3誘導での陰性T波(S1Q3T3のひとつで、感度が高いので指標に使う)を認めたら、Dダイマー測定を追加し、陽性ならPTHを示唆し、陰性ならPTHは除外できる。陽性なら造影CT追加し、肺動脈内の血栓を確認し、確定診断となる。

3.肺高血圧症

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、COPDや間質性肺炎といった肺疾患や、虚血性心疾患や弁膜症といった左心系疾患を認めないのに、労作時の呼吸困難が持続する場合に疑う。PTEやDVTのような症状の既往を確認する。
背景として、DVTや血管炎などが考えられる。(ウィルヒョウの3徴)

 ①肺動脈性・②左心系疾患に伴う・③肺疾患もしくは低酸素血症に続発する肺高血圧症は、同じく持続する労作時の呼吸困難で疑う。右心負荷により右心壁肥厚・右心拡大し、右心機能が低下することで症状が出現している。
 鑑別の手順として、まず心エコー上右心負荷所見を確認し、さらに左心系の所見を認めれば②となる。認めなければ造影CTや肺換気血流シンチグラフィにより換気にも血流にも異常なければ①、血流に欠損域や造影CTで血栓があれば、換気に欠損域や肺病変を認めれば③となる。
 心エコーでは右心負荷初見のほか、ドプラ法で肺動脈圧も非侵襲的に推定可能である。
 さらに右心カテーテルで肺動脈圧20mmHg以上は肺高血圧症診断で必須である。また肺動脈楔入圧は15mmHg未満である。しかし左心系疾患によるものなら、肺動脈楔入圧は15mmHgを超える。

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