医学学習(帯状疱疹、皮膚筋炎、偽性腸閉塞、胸痛の鑑別、背部痛の鑑別、咽頭痛の鑑別)

1.帯状疱疹

疾患の概要
神経節に潜伏したVZVが加齢や免疫低下の背景で再活性化し、デルマドームに一致した疼痛・皮疹をきたす。皮疹は紅斑・丘疹・水疱・膿疱・痂皮の各段階が混在。水疱を認めた患者にはワクチン接種の有無と周囲の感染状況を聴取。

2.多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)

疾患のイメージ
中高年女性の近位筋筋力低下で疑う。問診では発熱・関節痛・筋痛・レイノー現象ありを聴取する。
DMは悪性腫瘍の合併多く(30%)、中には皮膚症状のみを呈するものもあり、その場合間質性肺炎の合併を検索する。

3.偽性腸閉塞

疾患の概要
機械的な閉塞起点が無いにも関わらず、腹部膨満や腹痛、嘔吐をきたす。原発性と続発性があり、続発性では全身性硬化症が最も多い(ほかアミロイドーシス、多発・皮膚筋炎、Parkinson病、ミトコンドリア脳筋症など)。大腸のみが急速に大きく拡張する急性(術後に多い)と、全消化管にわたる慢性(6ヶ月以上)がある。

鑑別
ほかの腸閉塞きたす器質性疾患を除外、巨大結腸症と要鑑別

治療
消化管減圧が主軸で、イレウス管や消化管運動促進薬・下剤投与、消化管吸収障害時には栄養療法(IVH)を併用。


4.胸痛の鑑別

一般外来と救急外来で疾患頻度が大きく変わることに注意する。
急性発症で冷や汗・苦悶様表情で呼吸促迫などあればkiller chest painである可能性が高く、①ACS ②大動脈解離 ③肺塞栓症 ④緊張性気胸 ⑤食道破裂 の5つを鑑別・除外する必要がある。
①は20分以上持続する絞扼感・圧迫感があり、左肩・頸部・下顎部に放散痛がある場合があり、DMや高血圧、脂質異常症、喫煙がリスク因子となる。血液検査でCK・LD・トロポニンTの上昇や、心電図・心エコーで確認。
②は移動する胸を裂かれるような胸部・背部痛があり、高齢・高血圧がリスク因子となる。血液検査でDダイマー上昇、血圧左右差、造影CTで確認。
③は呼吸困難感と頻脈があり、頸静脈怒張や〜を認める。・血流停滞(長期臥床など)・血管内皮細胞障害(手術後や外傷)・凝固能亢進(担癌患者やエストロゲン、凝固能亢進)がリスク因子となる。血液検査で凝固能亢進、下肢エコーや造影CT。
④は呼吸困難があり、片肺の呼吸音減弱や頸静脈怒張、皮下気腫、気管の偏位を認める。喘息や肺気腫患者の急性増悪、外傷、人工呼吸管理がリスク因子となる。胸部X線で気胸と縦隔偏位。
⑤は飲酒後の大量嘔吐後の胸骨後面の激痛で、嘔吐→胸部激痛の病歴が鍵となる。胸部X線で縦隔気腫、上部内視鏡検査、胸部CT 、食道造影。

これらを除外した後、上気道炎後では胸膜炎・心膜炎、5分以内に最大となる発作性反復性のものはパニック障害、食後・夜間の胸痛ならGERD、片側性や皮疹あり・ピリピリ痛は帯状疱疹、胆石既往あり食後の右下胸部痛は胆石症・胆嚢炎を鑑別する。

5.腰背部痛の鑑別

腰背部痛が主訴となることは多く、その中で診断がつくものが2割ほどと少ない。だからこそ問診では以下の危険な徴候を見逃さないことが大切。
①初発年齢50歳以上 では、悪性腫瘍や圧迫骨折、ほかに65歳以上で喫煙・男性だと大動脈瘤の可能性が上がる。
②外傷・骨粗鬆症の既往・ステロイド内服 圧迫骨折。
③免疫力低下・IEなど最近の感染症の既往 感染症。
④安静時痛 悪性腫瘍や感染症、脊椎関節炎。
⑤胸背部痛を伴う裂けるような痛み 大動脈解離。
⑥尿・便失禁や肛門周囲のしびれ、性機能不全 馬尾症候群。
⑦下肢の脱力・しびれ・麻痺 椎間板ヘルニアや馬尾症候群。
⑧悪性腫瘍の既往 骨転移。

これらを念頭に問診したのち、視診では姿勢や帯状疱疹を確認。
触診では棘突起の圧痛や脊柱部に段差の有無、脊椎叩打痛の有無を確認。
坐骨神経痛はSLRテストにて誘発し、とくに陰性時の除外診断に役立つ。
悪性腫瘍を疑う場合、血液検査ではPSA(前立腺癌)を確認するほか、貧血があれば多発性骨髄症も鑑別に挙がる。血尿では尿路結石を疑う。
そのほかの鑑別として、骨盤臓器疾患(子宮内膜症、骨盤腹膜炎、前立腺炎)や消化器疾患(膵炎、消化性潰瘍、胆嚢炎)など挙がる。

6.咽頭痛の鑑別

咽頭痛の多くは急性ウイルス感染が原因で3日前後で軽快する。
しかし、溶連菌感染・緊急疾患(血圧の変動・低酸素・呼吸困難感)・流涎・嚥下困難・開口障害・嗄声・喘鳴・咽頭所見に乏しい激痛などは危険なサインであり、これらを鑑別するのが重要。

咽頭痛と漿液性鼻汁の組み合わせは急性ウイルス感染に典型的で、特に咽頭後壁にリンパ濾胞を認める場合はインフルエンザの可能性がある。

扁桃炎所見があり、後頚部優位のリンパ節腫脹があればEBウイルス感染を疑う、異型リンパ球も上昇する。CMVやHIVでも同様の症状出るが、さほど強くない。

ほか、心筋梗塞や大動脈解離の放散痛の場合もある。

溶連菌感染症
溶連菌感染はCenter criteriaで評価し、2点以上で溶連菌迅速抗原検査に進む。
①38℃以上の発熱 +1
②咳嗽がない +1 
③圧痛のある前頸部のリンパ節腫脹 +1
④扁桃の腫脹や滲出物 +1
⑤15歳未満 +1
⑥45歳以上 -1

溶連菌陽性なら合併症予防のためペニシリンやアモキシシリンを10日間内服で加療。



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