同人ゲーム「月姫」が伝説たる3つの理由
はい!
どうも皆様。
いらしゃませ!!
市野わひる でございます。
2020年12月31日。
伝奇ビジュアルノベル「月姫」のリメイクが発表されました!
発売は約半年後の2021年夏にも関わらず、Twitterの話題が「月姫」に染まる大狂乱となりました。
しかし、ジャンルの垣根を超えて大盛り上がりするタイムラインとは対照に「月姫」を知らない若いヲタクはそれほど熱量がない様に感じました。
そこで同じく「月姫」を知らない世代、けれどもヲタク史・サブカル史を個人的に研究した私わひるが、なぜ「月姫」がここまでの熱狂を産む『伝説』となったかを3つの理由を解説していこうと思います。
それでは
参ります!
・注意とお願い
上記の通り僕は当時の「月姫」を知りません。
故にこれから綴る内容は情報ベースになります。
情報は十分精査していますが、当時の感覚とは少し違うかもしれません。
ですので、この記事を読まれた方で当時を知る方がいれば、当時の思い出を教えていただければと思います。
一緒に「月姫」の素晴らしさを伝えていきましょう!!
1,同人らしからぬクオリティー
まず最初に「月姫」という作品がどういったものかを説明していくとともに1つ目の理由を解説していきます。
同人ノベルゲーム「月姫」は、武内崇を中心に構成された同人サークル「TYPE-MOON」が2000年12月コミケ56で頒布された「月姫~完全版~」が始まりです。
(1999年12月コミケ57で体験版が、2000年8月コミケ58で「月姫~半月版~」が頒布されていますが、ゲームの全貌が明らかになった「月姫~完全版~」の頒布を起点と考えます)
この「月姫~完全版~」が話題を呼ぶわけですが、その大きな理由の一つに同人作品らしからぬクオリティーがあります。
壮大な世界観、細かな設定。
そして何より膨大な内容量。
世界観や設定に関しては「TYPE-MOON」の「月姫」以降の作品である「Fate」シリーズや、「TYPE-MOON」に所属する奈須きのこ氏の長編伝奇小説「空の境界」に繋がるものがあります。
これら人気コンテンツを支える世界観や設定のディティールの細かさは語るまでもありませんね。
ここでは「月姫」の内容量について書こうと思います。
「月姫」は成人向けノベルゲーム(いわゆるギャルゲー)で、進むストーリーによってルート分岐があります。
「月姫」における大きなルート分岐は
・連続猟奇殺人事件の真相を追う『表ルート』が2つ。
・主人公の一族の因縁に巻き込まれる『裏ルート』が3つ。
計5つのルートで構成されています。
......ピンときていない方に向けて、同じ「TYPE-MOON」のノベルゲーム作品である「Fate/stay night」と比較してみましょう!
「Fate/stay night」における大きなルート分岐は「セイバールート」「凛ルート」「桜ルート」の3つ。
昨今の「Fate」シリーズの原点である「Fate/stay night」でさえルートは3つなのに「月姫」はルートが5つもあるのです!
しかもそれぞれに細かなエンド分岐があることを考えると、ボリュームがとんでもないことがイメージできるでしょうか?
「月姫」伝説の始まりは、
『企業による商業ソフトを凌ぐクオリティーのゲームが同人サークルによって生み出された』
というところから始まっていくのです。
2,【同人】という概念を広めた逆転現象
1つ目の理由に起因してとある逆転現象が発生します。
この「月姫」を題材にした同人作品や評論集などが制作され始め、これに目をつけた出版社が「月姫」の二次創作のアンソロジーを商業出版として出したのです!
一般的に流通していない同人ソフト、しかも成人向けの作品のいわゆる「同人の同人」が制作され、それらが全国の一般書店で販売されそれらを集めたコーナーが特設されるという前代未聞の事態。
元来多くの同人作品というものは、商業作品であるアニメや書籍がメディアを通じて広く共有され、その中の要素を自分の趣味性癖に合わせて加工していくものです。
〔 商業作品 ➡︎ 同人〕
という流れなわけです。
それが「月姫」では
〔同人 ➡︎ 商業作品〕
と、流れが逆になってしまったのです。
「小説家になろう」など門戸が開かれた現在ならともかく、2000年にこの逆転現象を起こした「月姫」という下克上の衝撃は凄まじかったでしょう。
そしてこの逆転現象が世の中に【同人】という概念を広め、創作界隈に身を置く人が増えたきっかけではないかと僕は考えています。
あくまで自論ではありますが、根拠は二次創作の歴史を紐解くと見えてきます。
ニコニコ動画で一時代を築いた『三大ジャンル』をご存知でしょうか?
ニコニコ動画において投稿数・視聴者数が多く人気が高い『三大ジャンル』
・東方Project
・VOCALOID
・アイドルマスター
です。
この『三大ジャンル』はニコニコの中でも群を抜いて作品数が多く、存在が認められた作品達な訳ですが、なぜこの3作品は母数が多いのでしょうか?
『三大ジャンル』と「月姫」の最初の作品の発表時期を時系列順に並べてみます。
2000年12月 「月姫~完全版~」
2002年8月 東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil.
2003年2月 VOCALOID
2005年7月 THE IDOLM@STER
『三大ジャンル』全てが「月姫」以降の作品であり、その間に2年近い時間が空いています。
「月姫」で【同人】という概念を知った人が創作に手を出し、実力が付き始めた頃に発表された作品の二次創作を始めた.....
という流れが見えてこないでしょうか?
......まぁこれはあくまで僕の想像なので事実に沿わないかもしれません。
しかし
・2000年に一般書店に「月姫」の二次創作が並んでいた
・『三大ジャンル』において二次創作作品が爆発的に増えた
これらは事実として存在し、どちらにも二次創作という共通項が見えるのです。
僕の自論の真偽はともかく、2000年に同人ソフトである「月姫」の二次創作が一般書店に並ぶという前代未聞の逆転現象が起きたことはご理解いただけたでしょうか?
ちなみに、「月姫」と時を同じくして逆転現象を起こした「ほしのこえ」という監督・脚本・演出・作画・美術・編集のほとんどを一人で行われたアニメーション作品があるんですよ。
その一人というのが「新海誠」っていう人なんですけど。
3,伝説は語られるのみ
実力と人気を兼ね備えた「月姫」ですが、なぜ『伝説』となったのでしょうか?
答えはとても簡単。
2000年12月の「月姫~完全版~」以降新作が発表されていないからです。
同じ「TYPE-MOON」が発表した「Fate/stay night」は2004年1月に初版が出て以降2005年10月に続編的立ち位置の「Fate/hollow ataraxia」が発売。
その後も復刻版が出たり全年齢版が出たりスピンオフが出たり.....
2015年に配信された「Fate/Grand Order」が今もなお人気が高いことはこの記事を読まれている方はご存知のはず。
にも関わらず「月姫」においては2001年に続編となる「歌月十夜」が頒布、2002年12月に「月姫」のキャラクターが登場する格闘ゲーム「MELTY BLOOD」が発表されアーケードに展開したぐらい。
2003年10月にアニメ「真月譚 月姫」が放送されていますが、これはあくまで同人ゲーム「月姫」のアニメ化であり、ノベルゲーム「月姫」の新作とは呼べません。
実は2008年に「TYPE-MOONエース」誌上にて「月姫」リメイクの開発開始を発表しているのですが、それでも今の今まで何もなかったことを考えると、ノベルゲーム「月姫」には12年もの沈黙が流れていたことになります。
正直な話、もう「月姫」の新作を期待している人は数少なかったでしょう。
2000年にその同人作品らしからぬクオリティーで空前絶後の逆転現象を起こした「月姫」は、下克上を果たした『伝説』として語り継がれるのみだったわけです。
それが2020年12月31日、12年の沈黙を破り「月姫」リメイクの発売が発表されたのです!
諦めかけていた約20年ぶりの「月姫」の新作が発売されるとなると、ジャンルの垣根を超えて大盛り上がりするのもお分りいただけるでしょうか?
ここまで読んでいただいてありがとうございます!!
僕の様な世代でない人間に「月姫」をプレイする権利を与えてくれた「TYPE-MOON」に感謝の意を表明して終わりにさせていただこうと思います!
ありがとうございます!!!!!
以上!