西瓜切る母の手をただ見つめている
久し振りに実家に行く。
喧嘩ばかりしているので、なるべく言葉は交わしたくない。
奥の座敷に寝転んでうたた寝をしている。
「今年は西瓜、食べたんか?」
百姓の長男だから、西瓜など買うわけもないことを見抜いている。
私は起き上がって台所の隅に立った。
一個を半分に切ってくれたので、それを丸ごと食べてしまって、
「今年の西瓜は美味しくないな」
と私は言った。
「食べる者がおらんので古うなったわ」
と母は言う。
私にだって西瓜の味はわかる。
ここの畑で採れた西瓜は、ここの味がするのだ。
そんなことは言葉に出さずに、西瓜を切る母の手を見ている。
背丈も、手も、小さくなったな、と思う。
2005年8月11日 (木曜日)