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キヤノンがハイエンド一眼レフ生産中止へ

デジカメ業界ではキヤノンの御手洗会長のインタビュー記事が大きな反響を呼んでいます。

キヤノン旗艦機「一本化」、デジタル一眼レフ終了へ…御手洗会長

ソニーから始まった、ハイエンドカメラのミラーレス化。レフ機の売上が落ちる中ソニーの一人勝ちと言ってもいい状況が続き、ここ数年ニコンとキヤノンという巨大2強もミラーレスへ全力投球してきました。

おかげでニコンもキヤノンも売上とシェアは伸ばしているようで、ハイエンドからミドル機のミラーレス市場はソニー/ニコン/キヤノンの三つ巴状態。市場原理からすれば、いい状態です。

そんな中での御手洗さんの発言。今後もレフ機の伸びは期待できないので経営者もしくは企業の判断としては当然でしょう。おそらくニコンも近いうちに同様の判断をすると思います(社内的にはもうしているかも)。ちなみにソニーはとっくに一眼レフは作ってないし、販売していません。

さて、そうは言ってもデジカメ市場全体の売上は落ちているのですよ。

CIPA統計データ

スマホにシェアを取られたとか、このご時勢なので外出が減ったとか、そもそもカメラという趣味が斜陽とか、いろいろ指摘はある。

しかし、カシオのQV-30とか使っていたデジカメ好きのボクからすると、ひとつ、デジカメメーカーに強く言いたいことがある。

「マウントの規格を統一しろ」

デジイチ(レフ機にしろ、ミラーレスにしろ)を使っている人は知っての通り、カメラ本体のメーカーを変更すると、レンズも全部変更しないといけない。これはカメラに装着できるレンズの規格がメーカーによってバラバラだから。

キヤノンならEFマウント、ニコンならFマウント、ソニーならEマウントなど。同じメーカーでも複数あるからね。キヤノンならEFにEF-MにRFに。

キヤノンのEFマウントを使っていた人が「ソニーで欲しいカメラが出た!あのカメラを使おう!」と思ったら、カメラ本体だけではなく、レンズも買わないといけない。なぜなら今まで使っていたキヤノンのレンズが使えないから。

マウントアダプターと呼ばれるマウントの変換器を装着すれば使えることも多いけど、そもそもアダプターが高い、入手しにくい、レンズによっては装着できない、装着できてもAFが遅くなることがある、画質が落ちる(レンズ枚数が増えるから)など、使い勝手は悪い。

メーカーからすると顧客囲い込みの観点があるんだろうし、特許でガチガチの各マウントなので、規格を統一するのは現実的には無理なんでしょう。唯一MFT(マイクロフォーサーズ)という統一規格があるけど、参加しているメーカーはオリンパスとパナソニックだけだし、パナソニックはフルサイズマウント(L)に注力してるから、統一規格というより「単なる一つのマウント」ぐらいの存在感しかない。

古参のユーザーやデジカメにがっつりお金を使う人は今の状況も受け入れられるでしょう。でもどの趣味も市場全体の売上を伸ばすには新規とライトユーザーの人数を増やさないといけない。将来の優良顧客見込みなんだから。

でも「今からデジカメ始めたい人」「デジカメにはまり始めた人」にとって、カメラメーカーを変えると、今まで使っていたレンズが使えないという業界の暗黙ルールは理解できない。ましてや、24mmに35mmに50mmに75mmのレンズをまた全部買い換えないといけないなんて、そんなお金に余裕のある人は少ない(いないとは言わないけど)。

マウント変えたらレンズも全部買い換えなんて当然と言えるリッチ層はマイナー層であることを認識すべきなんです。特にメーカー。

ひと呼吸置いて周りを見回してみましょう。ボクらの周りにはたくさんコンテンツがあります。

音楽に映像に電子書籍にパソコンに。

すべて規格が統一されています。

音楽ならMP3。映像ならMP4。電子書籍ならmobi。パソコンならWindows/Mac(統一されとらんがな)。

細かい規格や仕様があるのは一旦忘れます。ボクたちが普段コンテンツを楽しめるのはストリーミングにしろ、スマホにしろ、規格が統一されているからです。アマゾンで買った電子書籍をiPhoneでは読めるけど、アンドロイドでは読めないなんてことはない。

でもデジカメでは、この当たり前が当たり前ではない。マップカメラで買ったニコンのレンズをニコンのカメラでは使えるけど、キヤノンのカメラでは使えない。

これではカメラやレンズの趣味が幅広く広がるはずがない。

問題はデジカメが斜陽産業と言われ始めてから長い年月が経っているのに、マウント規格を統一しようという動きすらないことです。メーカー自身が問題と思っていないんだよね。それなのに「なんとかしないといけない」「スマホに食われた市場を取り返さないといけない」とメーカーは言っていて、「本当に危機感持ってる?ユーザーの声聞いてる?」と思うわけです。

ギター本体を買った時、マーティンのギターにはマーティンの弦しか使えませんと言ってるようなものなんです。

パナソニックのテレビを買ったら、パナソニックのHDDレコーダーしか接続できませんと言ってるようなものなんです。

トヨタの車を買ったら、トヨタのタイヤとかナビしか使えませんと言ってるようなものなんです。

古くはVHSとβの頃から、最近だとUltraHDまで、規格の統一に関しては各メーカーとコンテンツ屋が競い合ってきました。それほど規格の統一は大事なんです。それだけユーザーに広げるには統一された規格って大事だからです。

故スティーブ・ジョブスが音楽の5大レーベルを自ら回って説得して、当時のiTunesで音楽配信を始めたのは、それだけ規格統一をすることでストリーミング音楽が受け入れられることを知っていたからです。

30年後もマウント規格がバラバラなら今よりさらに売上と出荷台数は落ちてるでしょうね。

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