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ARM株大爆誕!!今買うべきなのか?俺は絶対に買わない理由を解説!!

今回はArm株について解説したいと思います。Arm Holdingsとはイギリスのケンブリッジに本社機能を置いた半導体メーカーです。Armの特徴としては自社でCPUの製造をしていないという点です。Arm社ではあくまで設計開発と、ライセンス提供のみを行っています。Arm社が設計開発した「ARMアーキテクチャ」をベースとしたCPUは、ほとんどの携帯電話メーカーに採用されています。Apple、ファーウェイといったiOS・Android市場を席巻する2社に採用されているというだけでも、どれだけシェアを持っているかという事が想像できるかと思います。実データはありませんが、99%以上の携帯電話シェアがArm社のCPUを使っていると言われています。2016年9月には日本のソフトバンクグループに買収されました。買収金額は約3兆3,000億円と言われています。

そんなArm株ですが、アメリカ9月13日にIPO(新規株式公開)され、ここ数年で一番注目されたIPO銘柄と言われています。9月15日には最大1株$69まで付けましたが、現在では$50位まで下がっています。今回はArmのIPO後の値動きと今後について、またArm株は買いなのかどうか、について解説したいと思います。

① Arm株IPO後の値動きについて

IMAGE SOURCE: BRENDAN MCDERMID

Armは先程ご説明した通り、ソフトバンクの傘下として有名です。Armは7年ぶりに株式市場に復帰し、IPO後は株価が最大25%上昇、時価総額$65billion/650億ドルにまで達しました。株価でいうと$51から$63.59まで上がりました。このArm株のIPOはここ数年間で最も市場として注目された株式上場になる、とCapital.comのアナリストKyle Roddaは言っています。Armの株価が最高値到達後、時価総額として$54.5billion/545億ドルまで下がりましたが、それでも90.6%の株式を所持しているソフトバンクに$4.87billon/48.7億ドルの利益をもたらしています。ソフトバンクは2016年に32Billionで買収しており、2020年に大手半導体メーカーのNvidiaに$40billion/400億ドルで売却する事も検討しましたが、規制上の障害により計画を断念せざるを得ませんでした。それ以来IPOに向け舵をきったと言われています。ソフトバンクのCEOである孫正義はArmのIPOに対して強気の姿勢でおり、近い未来の価格ではなく、将来的な価格に注目しているとの事です。

Armはその半導体チップ設計が世界中のほぼすべてのスマートフォンに搭載されているため、テクノロジー ハードウェア エコシステムに不可欠な存在です。 同社は先月、2大市場であるスマートフォンとパソコンの低迷を受けて年間売上高が1%減少したことを明らかにしました。CFOのJason Child氏は、Armは最新技術で作られたチップのロイヤルティ率が5%だったのに対し、以前のバージョンでは3%だったため、今後も売上を伸ばすことができると語っています。 高級携帯電話には、Arm の最先端テクノロジーが使用されていく可能性が高くなります。

Armの好調なデビューは他のテクノロジー企業のIPOを進めるきっかけとなる可能性が高いが、それが2021年のバブル市場への回帰を示すものではなさそうだとJordan Stuart(Federated HermesのPortfolio Manager)は述べています。同氏は、金利が低下し始めて債券に比べて株式の魅力が高まるまで、バイオテクノロジーなどのセクターは今後1─2年間は休眠状態が続く可能性が高いと考えています。ArmのIPOは、上場市場として勝ち取ったナスダックにとっても、実は将来の収益成長を後押しする可能性も与えています。アナリストらによると、Armのような大型取引はナスダックに短期的な知名度をもたらし、同取引所が年間上場手数料から徴収する収益を増やすための長期的な賭けになるそうです。ナスダックは新たな上場企業を取得するたびに、上場だけでなく、上場企業に取引所で販売する他のサービスを通じても収益を高めることができるようです。

②今後はどうなるのか?

IMAGE SOURCE:GETTY IMAGES

では今後Arm株はどうなるかという点についてですが、Ark investmentを率いるCathie Woodがコメントしています。

9/22の週初めの Squawk Box Europe での発言の中で、Cathie Woodは Arm について 2 つの懸念があると述べました。 1つ目はこれはNvidiaに対しても同じ事を考えている様ですが、バリュエーションの観点から見て、Armは株価が高過ぎると言う事です。もう一つの懸念点は、Armの成長見通しが一部の人が考えているほど大きくない可能性があるということです。 Cathie Woodは、半導体メーカーに対して「AIを重視しすぎている、競争力学への考え方が十分ではないのかもしれない」と述べています。つまりAIバブルが起きているということです。Armはスマートフォン用チップ市場を独占しています。 しかし、少なくともこれまでのところ、AI 分野において重要な役割を果たしてはいません。

しかし少し矛盾していますが、Cathie Woodは明らかに、AI が過大評価され過ぎているとは考えていない様です。
Cathie WoodはCNBCに対し、「人工知能が非常に重要な触媒となって将来に大きなチャンスが待っていることを考えると、イノベーションは過小評価されている」とも述べています。 Ark investmentの創設者はアームが過大評価されていると考えていますが、自身のファンドではAIへの影響がはるかに大きい、そしてはるかに低価格のAI銘柄を所有していると述べています。
Ark investmentのポートフォリオを見てみると、Cathie WoodがAIの可能性をどれほど信じているかがよくわかります。 アークの保有銘柄上位3社のうち2社(テスラとUiPath)はAI株になります。

今後Arm の AI の見通しに関しては、2 つの異なるストーリーがあると言われています。 AIが短期的にArmに大きな追い風をもたらすとは考えにくいです。何故なら今のところ、AI の主な成長分野はデータセンターであり、そこでは Nvidia のチップが市場を独占しています。 ただし、長期的 (今後 5 年以上)には、AI 処理がモバイル デバイスにさらに移行することは想像に難くありません。 このシナリオでは、Arm が AI の主要な勝者になる可能性があります。

③     Arm株は買いなのか?

IMAGE SOURCE: REUTERS/BRENDAN MCDERMID

そんなArm株ですが買いなのかどうなのかというと、私は買うべきではないと思います。その理由は主に3つあります。

まず一つ目は収益が伸びていないことです。 Arm の収益は出荷される 半導体チップを搭載したデバイスの数に依存するため、同社の収益は最終市場であるデバイスの出荷数に依存しています。 今年のスマートフォン市場は低迷しており、IDC(International Data Corporation:調査会社)によると世界出荷台数が4.7%減少すると予想されています。 3月31日の前期決済では、Armはスマートフォン需要の低迷もあり、若干の減収に見舞われました。

長期的に収益を拡大するための Arm の戦略としては、プロセッサの価値を高めることが含まれています。 Arm は、CPU コアの数とチップの複雑さに応じて、より高いロイヤルティの獲得、つまり収益を上げる事ができます。 その為、たとえデバイスの出荷台数があまり伸びなかったとしても、Arm はデバイスあたりの収益を増やすことができます。 Armは完全なシステムオンチップソリューションなど、追加のライセンス可能な製品も開発中です。それでも、今後数年間のArmの成長が鈍化する可能性は非常に高いと言われています。 2015 年度から 2023 年度までの年平気成長率収益はわずか 8% に留まっています。 Armのビジネスは安定しており、予測可能であり、混乱する可能性は低いですが、成長はそれほど見込めないかもしれません。

二つ目の理由として、利益率が改善されていない事です。2015 年度、Arm は現在の為替レートを使用して 42% の営業利益率、7 億 7,200 万ドルの営業利益を生み出しました。しかし2023 年度の営業利益率は 25% に低下し、営業利益は合計 6 億 7,100 万ドルになりました。Armは研究開発への支出を増やしている事を理由にしていますが、過去8年間全く利益が伸びていないことは投資家にとって懸念材料の一つとなります。

Armの研究開発費の増加は、新たな高付加価値市場に参入するにつれて長期的には報われる可能性がありますが、現時点では収益を押し下げています。これまでインテルと AMD の x86 チップが独占してきたサーバー CPU や、自動車における半導体コンテンツに参入する機会が今後ありますが、後発のArmでは市場の独占は難しいと考えられます。

最後に高過ぎるバリュエーションです。Armは好調なIPOにより、時価総額は650 億ドルになりました。2023年度の売上高と純利益に基づくと、Arm株の株価売上高比率は24倍、株価収益率は124倍となります。Armの売上高の伸びと利益の実績を考慮すると、成長性が欠けているため、現状の株価は非常に割高と言えます。Arm は世界の半導体市場で重要な地位を占める偉大な企業です。 近い将来、スマートフォンが Arm チップ以外を搭載する可能性は基本的にゼロです。 しかしArmは、その割高な評価を正当化するためにも、今後収益の伸びを大幅に加速させ、利益を劇的に押し上げる方法を見つける必要があります。

これらが私がArm株を買わない理由になります。

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