ハワイという場所
カウアイ島唯一の大学、カウアイ・コミュニティ・カレッジで一緒に勉強していた時の仲間は、今でも家族のような特別な存在です。
クラスの中にはいろんな年代の人たちがいて、それがとても面白かったのだけど、だけど普通にいったら18歳の高校を卒業したばかりの子たちが学生の大半で、その若い子たちの中に彼女はいました。
ものすごく頭の良い子で、こちらのハワイ語の学校で小さい時から育っているので、英語とハワイ語が同じように堪能です。自分の使命はハワイ語とハワイに伝わる叡智を後に伝えること、とわかっていて、若いけれどしっかりとしたビジョンを持っている子です。
その彼女が、先日州の役人とちょっとしたトラブルになった事件がありました。簡単にいうと、カウアイ島のとある神聖な場所を清掃するために山に入ったところ、コロナ禍の現在、立ち入り禁止区域に入ったという理由で、出頭要請をうけることになったのです。
その時、彼女以外にも10名ほどが一緒にいたのですが、彼女と何人かがハワイ語で役人と応対します。聖なる場所にいたということもあり、彼女たちはカウアイ島の土地を守ろうと活動していたということもあり、ハワイ語でチャント(詠唱)をし、祖先に助けを求め、一緒にいた仲間を守ろうとしたのかもしれません。名前や個人情報を聞かれたとき全てをハワイ語で答えていたら、役人は彼女が話していることが全く分からず、ハワイ語を話すのをやめて英語で話せと苛立って、ことが悪化します。
出頭要請自体の問題は、おそらくそれほど大ごとにはならないと思います。ですが、ここで彼女が大きなショックを感じて、私たちに伝えたかったのは、ここはハワイでハワイ語が母国語なのに、ハワイ語を話す人に英語を使えと言われた側の気持ちを若い彼女が痛烈に痛みとして感じたこと。そういう時代があったことも、わかってはいたけれど実際に自分がそういう立場になったときに、ハワイの魂が強烈なパワーを持って動き出した・・・
私は、この話を聞いたときに彼女のその時の混乱と悔しさが伝わって、考えさせらてしまいました。彼女たちのグループが山に入っていたのは、放置されたままになっていた心無いキャンパーたちが残したゴミを撤去するためです。こんなふうに自分たちの土地を侵されるような行動を、ハワイ文化を尊重して日々暮らしている人たちは許すことができません。とても悲しいことですが、それをハワイ語を話してはいけないという対応で返されてしまったら・・・どうして彼女がハワイ語で応対したのか、その本当の気持ちは何なのか。
なんだかまとまりがつきませんが、ハワイという場所に住んでいる、住まわせてもらっている自分にとって、今できることは何なのか、また想う時間が増えました。
アロハという言葉はハワイのあちこちに溢れていますが、本当のアロハはどこにあるのか。しばらく観光の方がいらっしゃらない静かなカウアイ島で、このことについてじっくり考えてみたいと思います。