消したくても消せない、ロクでもない録画たち。~2本目~「死ねよりも殺すの方がうれしかった」(太田光)

買って10年くらいになるうちのテレビ。
ハードディスク容量がいっぱいになり、
新しく録画しようとするときは
断腸の思いで昔の録画を削除する。
しかし、その中にいつまでも消せない録画がある。
何度削除ボタンに指を伸ばしただろう。でも消せない。
そんな極私的名作番組、
自分一人だけの熱狂をここに記録します。

消したくても消せない、
ロクでもない録画たち。 2本目
「死ねよりも殺すの方がうれしかった」
(太田光)


2本目に取り上げる番組。
ハードディスクの中でいちばん古いものです。

2011年4月7日O.A.
NHK「爆笑問題のニッポンの教養スペシャル『コミュ力!爆問学問×東京外国語大学』」

 

これはなにか琴線に触れるものがあって残していたんだと思うのですが…あまり覚えていない…のでちょっと見直してみました。

のっけから太田光が学長の股間を触って「外大!」と叫ぶシーンがありつつ、コミュニケーション能力が不足している日本、その処方箋を外大で探るというテーマですね。観てみるとたしかに興味深い議論が多いです。

・赤ちゃんのコミュ力はすごい?
・コミュ力は発信する力ではなくまわりに受け取る力を向上させる力?
・マイミクが多いとコミュ力があるということ?
などなど時代を感じます。

その中でも、太田のネットとの付き合い方について。2ちゃんねるに「死ね」と「殺す」と書き込まれたことを話していました。死ねは突き放す。殺すは脅迫。自分がということが入っている。だからうれしかったんだと。でもこのような乾いた文字はやはりメンタル的にきつすぎる。書き込んだ人もこの文字を打っているとき以外はそんなことは考えてない。つまりそいつ今頃パフェ食ってるよという、ネットの向こう側を想像しないとつぶされてしまう。そんな話でした。

それからもう一つは、「チョコはいらないと先に言ってきた彼の本心は?」女子大生の不安な気持ちに寄り添うシーンも素晴らしかった。何だかまた恋愛系の話題にピンときてしまうのが恥ずかしいものです。

仮説1.(前の男にチョコを渡したという話をした後だったので)嫉妬したのではないか。
仮説2.それ以上の関係になることを恐れている、今はタイミングではないのではないか。
仮説3.あえて断ることでチョコを渡してくるか試しているのではないか。

仮説2は学長のアンサー。とても冷静で素晴らしいです。最後は太田が、恋愛に関してはあらゆる人間に学習能力がないんだと、当時の大桃美代子の騒動話をからめて。だからもう自分が後悔しないかどうかしかない、と無難にまとめて終わりましたが、まあ面白い議論でした。

コミュニケーションは気合いだ。日本はその時点で負けている。と言った教授もいたし、人と関わりたい欲求を隠すのがうまくなっている日本だけど、人と完全に関わるのはどうすればいいか太田光はもがいているという学生の鋭い指摘も。言葉では足りない。自分は答えを出せる自信はない。問うことが僕にとっての好奇心。なんでってのをとことん考えている。そんな今と何ら変わっていない10年前の太田、貴重です。

私的には、コミュ力とは空気を読めない力だと思っています。自然と空気が読めないというところがミソ。それが個性となって人の感情を動かします。自分にはその力は無いなあと少し切なくなった回でした。