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『葬送のフリーレン』第25話 炎と光の演出解説

 後半?に入っても揺るぎなく面白い『葬送のフリーレン』
 今回は第25話の演出解説をしてみたいと思います。

 今回の演出、キーワードは「炎と光」です。
 まずアバン後、複製体のいる部屋の前室でフリーレンたちが作戦会議をしています。そこへ現れる瀕死のドゥンストさん。「ゼンゼさんの複製体」からの攻撃を受けて大量出血しています。
 彼がロウソクが灯されている場所(ニッチ)の近くに手をつくと、血のりがべったりと付きます。このときのロウソクをよく覚えておいてください。
 ドゥンストさんはフリーレンたちに自分たちが「ゼンゼさんの複製体」に襲われた顛末を話します。そして自分を逃がすために、ブライさんが足止めをしてくれたことも。
 ストーリー上、ブライさんの生死は不明(原作未読)ですが、ニッチのロウソクが彼の安否を示しています。
 ニッチにあったロウソクは2本。そのうち、火が灯っているのは1本です。ロウソク、とりわけそこに灯った火は生命を暗示していることが多いです。落語の傑作『死神』でもロウソクの火=生命の火でした。
 だから消えているロウソクは、ブライさんがもう生きてはいないことを表していると思われます。
 そしてメトーデさん(こんな大人声も出せるんだ上田麗奈)の治療を受け、回復するドゥンストさん。そのすぐあとでもう一度先ほどの2本のロウソクが映りますが、このとき、ロウソクの炎は大きくなっています。それだけでなく、ロウソクが燃えるチリチリいう音、炎の揺らぐ音もずっと大きくなっています。
 上田麗奈にメトーデさんに癒され、生命力が回復したことが示されています。

 ここでカンネとラヴィーネの2人が現れますが、もう皆さんご存知の実は仲良し二人組。それはたぶん衣装(意匠)デザインにも表れているのではないでしょうか。「ぜんぜん違うじゃん」と思われるかも知れませんが、白いブーツがおそろいですもん。
 確かにリボンのあるなしや、トップの白黒はありますが、丈も地も同じ。こういうところにも2人の共通点が表現されているように思います。
 そしてラヴィーネに対して「情報持ってたのか」と揶揄するリヒター。「おっさんは信用できない」と返すラヴィーネ。ヒリヒリとした空気が漂いますが、リヒター本人は「信用できない」といわれたことより「おっさん」と呼ばれたことの方が気にくわない様子。シリアスからコミカルへの転換がBGMの変化で示されます。

 続く作戦会議。困難な状況に絶望的になっているのが誰なのか、汗で示されます。先遣隊がこの部屋で壊滅したという情報を前に、ラオフェンとドゥンストだけが冷や汗を浮かべ、嘆息をもらします。この2人は他の人たちに比べて、いろんな意味で格下なのでしょう。カンネとラヴィーネも同格のはずですが、そんな状況でもいつも通り取っ組み合いを始めちゃう2人ですから、肝の据わり具合が違うのかも。
 ラオフェンは第24話のでフリーレンの複製体が放つゾルトラークを躱す際にも、1人だけ無駄な動きをたくさんしていました。デンケンたちが普通に飛んで回避しているのを、彼女だけが高速移動魔法を使い、ランダムな軌跡を見せています。彼女が高速移動魔法を使うときにはオモセン(輪郭線)が消失しますので、スローやコマ送りで確認してみてください。
 こういう描き方はスローやコマ送りにしないと確認できないから意味がないのではなく、普通に見ているときに視聴者はその印象をちゃんと受け取るので大切だと思います。
 続いて、フェルンがフリーレンの弱点を明かすシーン。デンケンが額に汗を浮かべます。これは先ほどの汗の演出と繋がっていて、強い狼狽を表しています。逆にフリーレンの弱点に気付けなかったカンネとラヴィーネはきょとんとした顔をしています。

 ヒンメルたちとの回想に続いてまたロウソクが映りますが、ここでは5本。ヒンメルパーティは4人だったので数が合いません。
 この本数の意図は不明ですが、もしかしたら今ここに集まっている9人のうち、戦力に数えられる人数かも知れません。

 さて、いよいよ複製フリーレンの攻略が始まります。
 フリーレンとフェルン、2人が部屋に入って複製体と対峙すると、複製体はまずフェルンに目をやります。フリーレンが真正面にいるにも関わらず。これが複製体が心のはたらきを正確に模倣しているからだとしたら、フリーレンがどれだけフェルンのことを気にかけているかわかります。

 ここで、ゼーリエとの回想シーン。
 ゼーリエは「気まぐれで育てただけのフランメが(寿命で)死んでも悲しくない」といいます。
 陰になった森の中を歩く2人。その横を少女フランメが追い越していきます。そのフランメには光があたり続けていて、彼女と同じ画面に収まっているときだけ、ゼーリエにも光があたるようになります。ゼーリエはだいぶ皮肉というか厭世的な性格のようですが、フランメが彼女に希望をもたらしてくれたのではないでしょうか。彼女自身は認めもしないし、気付いてもいないようですが、
 フランメは手を離して先に行ってしまい、そこは光のあたる場所です。「彼女たちの人生は短い」旨の話をゼーリエはしますが、それでもフランメはまっすぐに夕陽を見つめています。
「おまえを殺すものがいるとすれば、それは魔王か人間の魔法使いだ」といって夕陽に背を向けるゼーリエ。反対に、「楽しみだね」といって夕陽を見つめるフリーレン。対照的な2人の姿です。
 その思いに応えるように、フリーレンの複製体を魔法で撃ち抜く人間の魔法使いフェルン。

 フェルンたちとの関係でいえば、オープニングでフリーレンが彼女たち(フェルンとシュタルク)の方を見るようになりました。
 前期オープニングではヒンメルたちの方を向いていたのが、このたびを通じて少し変わってきたのかな、とも思います。


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