父が残した犬 猫との出会い

ジョンは人懐っこい優しい犬だった。
外犬だったけど、誰が来ても激しく吠えることはないので、番犬としては全くダメだった。

お散歩が大好きで、リードを持つと飛び跳ねて喜んだ。一日2回朝晩散歩に行く。
リードを繋ぐとスタートダッシュで元気いっぱい走り出す。飼い主の後ろを歩く犬が賢い犬ならば、ジョンは全然賢くはないのかも。
おて、おすわり、まては出来たけど。

近くの公園の草や芝の上で背中をすりすりゴロゴロするのが毎日の日課。思う存分すりすりゴロゴロを満喫してから家に帰る。

朝は母、夜は私が散歩に行く。
その生活がしばらく続いた。

その後私が結婚して家を出ると、母とジョンは一人と一匹暮らしになった。
母を一人にするのは忍びなかったけれど、ジョンがいるから安心だった。

実家に帰るとジョンと散歩した。
お腹に赤ちゃんができた時も「産まれたら一緒にお散歩しようねー」とジョンに行った。
いつだって夢中で散歩を楽しむジョンは、話を聞いているのか聞いていないのか分からなかった。でも散歩の時はいつも話しをしながら歩いた。

女の子が生まれ、2歳になる頃には2キロ以上ある散歩の距離も平気で一緒に歩いた。
なので実家に帰るとジョンと散歩に行くのが楽しみだった。時には旦那が行くこともあり、走って散歩してくれるのでジョンは喜んだ。

私たち家族が転勤で遠くに引っ越すと、盆と正月しか実家に帰れなくなった。
年に2回しか会えなくなっても、ジョンは久しぶりに会うとしっぽをブンブン振って喜んだ。
そしていつものように一緒に散歩に行った。

ジョンが12歳になる春のある日。
母が旅行に出ていたので、その日は近くに住む兄がジョンと散歩に出た。
竹藪だったか草むらだったか、弱った子猫が一匹。散歩するジョンと兄の後ろをついてきた。
なぜついてきたのか分からないけど、その猫はジョンの家に住み着いた。

猫は女の子でチュンと名付けられた。片目はケガしていて、もう見えない。そのケガのケアをしたのも、毎日ゴハンをあげるのも母だけど、チュンはジョンの家で暮らしているから、チュンの中で家族はジョンだけだった。二匹は毎日狭い小屋の中で一緒に寝るようになった。片目が見えないので、昼間は怖くて歩けないけど、夜の散歩は一緒に行くようになった。犬と猫の散歩を母はした。

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