お金を渡したら、渡した私が幸せだった
朝6時頃。
電話が鳴った。
私は不動産全般の業務に携わっている。
電話の相手は入居者のKちゃんだった。
「…もしもし」
深夜早朝に入居者さんからの電話なんてトラブル報告でしかないから恐る恐る電話に出た。
「黒瀧さん!キャリーバッグ持ってますか?」
「え?」
「私、今日韓国に行くんですけどキャリーバッグを持ってなくて。貸してもらえませんか」
「え?今日?飛行機は何時??」
「8時には空港に着きたいです」
詳しい出発時間やルートは忘れたけど、え?間に合うの??と思ったことは覚えている。
「え?Kちゃんは今家にいるの?キャリーバッグあるけどすぐ取りに来る?」
「今友達の家なので30分後くらいに取りに行きますっ!」
え?間に合うの????
すぐにキャリーバッグを準備してKちゃんの到着を待つ。
30分程でKちゃんが私の自宅に来たので、キャリーバッグと、餞別として2,000円を渡した。
「楽しんでおいで」
Kちゃんと別れたその後、なぜか私は幸せな気持ちになった。
この子はこれから楽しみに行くんだなぁ。
わくわくしているんだろうなぁ。
楽しんで来て欲しいなぁ。
渡したのは2,000円だけど、少しでも美味しいものが食べられたり、遊べたりしたらいいなぁ。
…あれ?
お金を渡したのは私で、私がお金をもらった訳でも韓国に行くわけでもないのに、私は幸せな気分になっていた。
なぜだろう。
おそらくきっと私はKちゃんのわくわくをお裾分けしてもらったんだろうなぁ。
ありがとうKちゃん。
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