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「ちくわぶを斬る!」~#毎週ショートショートnoteお題「鋭利なチクワ」

 亥の刻。 
 田んぼのあぜ道の茂みにちくわは潜んでいた。
 もうすぐやつが通る。宿敵ちくわぶが!
 辺りは暗い。不意打ちには絶好だ。
 やつは小麦粉の分際で本家のわれわれを軽んじている。始末しなければならない。
 ただちくわぶは免許皆伝の手練れだ。確実に勝つには不意を突くのが得策だ。
 来た!あぜ道を黒い影がゆっくり歩いてくる。笠でよく見えないがちくわぶに間違いない。徐々に近づいてくる。ちくわは刀に手をかけた。額には汗がにじむ。
 相手が間合いに入った瞬間、ちくわは茂みから飛び出し、抜刀するやいなや相手の背中から袈裟懸けに斬った。血煙が舞い相手はあぜ道に倒れ込んだ。
 ちくわは倒れた相手を確認して絶句した。ちくわぶではなかった。知り合いのちくわだった。
 その一瞬の隙をつき、ちくわの身体が真一文字に寸断された。
 息絶えたちくわの背後にちくわぶの姿があった。

 ある晩の食卓。皿に盛られた斜切りのちくわ。鍋で煮込んだちくわぶ。 「美味しい!」子供が言った。
 勝負の行方は誰も知らない。


本件は毎週ショートショートnote参加作品です。たらはかにさん、体調が悪いのに企画ありがとうございます。


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