短編「家」~青ブラ文学部参加作品
瑠璃子が郊外の古びた終末期医療病院に転院して一ヶ月になる。小高い山に建つその病院は苔むした赤煉瓦と蔦に覆われた外壁から見るからに陰気な雰囲気を纏っていたが、往来する車も面会に来る人も少なく、静かで空気が澄んでいたから瑠璃子は結構気に入っていた。
五階の瑠璃子の病室は相部屋だが、他のベッドは空いていて実質個室のようなものだった。瑠璃子はほぼベッドに寝たきりだったが、横になったままでも小さな窓から外が見えるので、昼夜問わず窓のカーテンを閉めないように看護師に頼んでいた。午後七