クライアントと握る、ということ

※写真は握手をしていますが、ここでの握る、というのは手を握るということではありません。

よく営業とかしていると「クライアントと握る」という発言を会社で聞くことも多いと思います。時として「クライアントと握ってないからトラブルになったんや」なんて怒られたりもしてきました。

さて、この握る、ということですが、「確認をする」という言葉にも似ていますが、「確認をする」という言葉だけでは済まない要素もあるので、改めて自省も込めてメモしておきたいと思います。

工数を掛けて作り込む前に握っておくこと

とあるデザイン案件で、クライアントからの与件が出たあとにデザインを提出する場面があったとします。
与件が示すようにデザインをすれば良いのですが、たいていの場合は与件自体がふわっとして、なかなかこうだという答えが見えないことがあります。

そういったときは「例えばこんな風なイメージはどうですかね」などラフ案やプロトタイプベースで話をして、握っておくということも最近では割と一般的です。

しかしブラッシュアップをして決め込む前に、枝葉ばかりの意見を箇条書きにしすぎて、本当に握っておくべき大事な部分を握れていない時が時折発生します。
クライアントから見ればそれは、腑に落ちないデザイン案を作ってしまったという様な残念な結果に。とても丁寧に「確認」を重ねたにも関わらず、デザイン案が通らなかったケースがありました。それは作り込んだ手間を無駄にした、ということを意味します。

「例えば」メソッドで与件を詰めていく

デザイン案は抽象的でふわっとした形で与件を示されることが多いわけです。もし与件を煮詰めて行くのであれば「例えば」という枕詞を使い、どんどんアイデアを出していきます。

そうすればクライアントの好みや価値観などをYes/Noやその回答を元に導き出すことが出来、より具体的な与件にまとめていくことが出来ます。
アイデアを出せば出すほど、具体的な情報が集まってくるのです。

「例えば単なる白抜き文字だと動きを感じにくいので、赤色を一部いれてみるのはいかがでしょうか」みたいな感じでイメージをさせて、回答を引き出していきます。

この「例えば」メソッドをひたすら繰り返していくごとにおおよそのデザインの方向性が見えてくると同時に、与件がより強固で具体的なものになっていきます。そこには当初の与件には無かった重要なポイントがポロリと出たり、実は最初の与件にあったことがそれほど重要でなかったりすることがわかったりすることもしばしばあります。

クライアントと握るというのは腹落ちしているかを確認すること

クライアントが言うことをそのまま箇条書きにテキストに起こすだけなら単なる御用聞きで終わってしまいます。

先に書いたように与件をちゃんと引き出し整理するという過程が重要です。
そして大切なのは重要度の高い順と思われるものから確認してクライアントの同意をとっておくことです。時は重要度の確認も有益でしょう。

ここで同意しているか否かを見ていれば、クライアント側もそれで納得している、腹落ちしているか否かを探ることが出来ます。
そこで同意が得られたこと(=腹落ちしているもの)は必ず提案に反映させることが必要です。逆に言えば、腹落ちしている部分は重要視して、枝葉の部分はある意味無視してしまってもいいのです。

そうすればデザイン案もA案、B案、C案とあったとすれば
A案は腹落ちしたものを枝葉を含めて忠実に再現したもの
B案は腹落ちしたものと方向性が違うもの(腹落ちしている部分を最低限押さえた案)
C案は腹落ちしたものを大切にしながら、違う切り口で表現したもの
といったような形でバリエーションを出せて、おそらくどれかの方向に落ちることが多いと思います。

こういった感じで、先に握っておくことで無駄な案を作ることは減ります。ただし、デザインのようなクリエイティビティを求めるものに関しては、論理的に詰めていく腹落ち感も重要ですが、それを突き抜けるものが本当は出てきてほしいものです。




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