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【講演会レポート】スタートアップがおさえるべき逆襲の広報PR術~2/9(火)20:00- 開催(主催:ワクセル)

ワクセル(主宰:嶋村吉洋)は2/9(水) 20:00-21:00、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上の取材経験があり、また、広報部門の立ち上げに携わり5年で売上10倍という成果もお持ちである、株式会社ベンチャー広報代表取締役の野澤直人氏によるオンライン勉強会を開催いたしました。

創業3年、年商2億円、社員20名、非上場のベンチャー。そこから、ある「攻め」の広報を行うことで、5年連続で増収増益、年商を10倍の20億円に到達したといいます。本レポートではそのエッセンスをシェアしてくださった本講演会のご報告をいたします。

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■講演会の概要
本講演は、​次世代を担う起業家の輩出と人財育成に取り組む嶋村吉洋が主宰する、ワクセルによるオンライン対談イベントです。スタートアップ・ベンチャー企業の広報PRの専門家であり、企業経営にも精通している株式会社ベンチャー広報代表取締役の野澤直人氏が講師となりました。

今回のテーマは「スタートアップがおさえるべき逆襲の広報PR術」です。

本勉強会のプログラムは以下の構成で進行いたしました。

1. スタートアップの広報の基本
2. メディアとの関係の作り方
3. 誰でもできる広報ネタの作り方
4. 優秀な広報を内製化するポイント
5. まとめ


野澤氏の講演は、プレスリリースの書き方やSNSでの発信など、いわゆる一般的な「広報」戦略よりも、マスコミ広報という視点での戦略であり、非常に斬新な切り口でのプログラム内容でした。
本レポートでは、実際にどうマスコミ人脈を創り上げ、そして、どのように広報ネタを創っているのか、野澤氏が為した「攻め」の広報をお伝えいたします。

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■講演会の詳細

「広報」とは何か?

野澤氏が会場にまず問うたのは「広報とは何か?」というシンプルな質問でした。
一般的には、HPの作成、SNSの発信、イベントへの出店などがありますが、野澤氏は『マスコミを活用し、無料で商品サービス&自社を宣伝する』と定義しているといいます。

お金を払って広告として掲載してもらう方法、ではなく、無料でメディアに取材・報道してもらう方法。
それを知るにはまず、そもそも何のための広報なのかを理解する必要があります。

野澤氏によれば、『広報は企業や事業の成長を加速させるため』のものであり、広報による経営インパクトとして様々な利点があるといいます。見込客が増えること、潜在顧客を増やしマーケットが拡大できること、社員のロイヤリティーが上がること、業務提携の話が増えることなどです。

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実際、そのインパクトがわかる、野澤氏の実体験をシェアいただきました。
もともとは雑誌の編集をしていたところ、知り合いのご縁でベンチャーで海外留学の広報で働くことになった野澤氏。実際入社してみると、海外留学の中でも後発、業界では弱小・無名のベンチャー。ベンチャーで働いてみたかったものの、厳しい営業ノルマや多数のネットでの誹謗中傷の中で、仕事に取り組みます。

しかし、そんな中で野澤氏は広報を始めてたった6か月で43件の取材を獲得し、毎年平均100件以上のマスコミ報道を実現します。その結果、その会社は5年連続で増収増益、年商が当初の10倍で20億円になり、更に、国内2拠点から13拠点、海外10拠点にまで発展、遂には社員200名の業界最大手に成長します。
広報PRをうまく実践すれば、ベンチャー企業でもここでも伸びるという「経営インパクト」がわかる力強い実績です。

広報活動とは、マスコミとの心理戦

大企業とスタートアップの広報活動の違い。
広報活動においてなかなか成果にならない理由は、ここにあることが多いといいます。
野澤氏は、

大企業:「守り」=危機管理。取材を断る。
スタートアップ:「攻め」=多くの報道を獲得する。

と定義付け、「言ってみれば大企業とスタートアップではベクトルが真逆」であり、同じ広報でも似て非なるものだとします。

大企業の場合、取材の依頼が沢山入ってくるので、その中から取捨選択することが広報の仕事であり、また、いかにマスコミをコントロールできるか、という意味で「守り」の活動です。
それとは反対に、スタートアップの場合は、プレスリリースを沢山発信しても、取材の依頼が沢山来ることは稀であり、だからこそ「マスコミ心理」を学ぶことが大切になるのです。

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マスコミにとっての大好物は、特ダネ・スクープ・独自取材です。
当然、一斉配信されたプレスリリースは、それらに該当することはないので、情報価値が低く、取材する価値がないとみられます。一般的な広報の本には、プレスリリースを書くことが大切だと記されていますが、それは大企業の話であり、スタートアップやベンチャーがマスコミからの取材獲得を目的とした場合は、むしろ不要だと説きます。プレスリリースを打つときは、ステークホルダーへの「お知らせ」の手段として使う程度で良いのです。

マスコミ人脈があれば、プレスリリース公開前の情報で知り合いの記者や編集者に直接取材を依頼することができます。それはマスコミにとっても「情報価値の高い」「取材する必要のある」ネタなのです。

しかし、これはマスコミの人脈がある前提。
それでは、短期間でマスコミ人脈を創るにはどうしたらいいのか?
今回は、その秘訣も惜しみなくシェアいただきました。

『~御中』より『~様』

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「〇〇さんの書いた記事を読んで、電話しました!」

その一言で次々とマスコミ人脈を創り上げ、広報という仕事を始めて6か月で43件の取材を獲得したといいます。
どういうことでしょうか。

野澤氏は、当初働いていたベンチャーで「日経新聞に新しい留学記事(社会人向けの留学プログラム)を載せてほしい」という仕事を任されました。
どうしたらいいか考えた結果、図書館で日経新聞を過去1年分閲覧し、海外留学の記事を書いた記者を特定し、そして電話して取材も依頼してしまいます。その結果、取材が決まり、そして記事として掲載されるという功績を残します。これが強烈な実体験となり、もともと海外留学の分野に興味のある記者に引き続き取材の依頼をすることで、ピンポイントに情報を伝える価値を見出し、それをまた違う会社へ横展開したのです。

情報を伝える相手の見つけ方と情報を伝える手段を磨き上げ、量より質で、メディアリレーションを創ること。
先方へ連絡する時は「~御中」よりも「~様」という表現をされていた野澤氏の言葉からも、「興味のある人にピンポイントで」という徹底ぶりがわかります。

報道価値がある×報道してほしい

マスコミ人脈ができたとしても、最終的にはニュースバリューのあるネタがなくては取り上げられることはありません。野澤氏は、マスコミが「報道する価値がある」と判断する情報は5つにカテゴライズされるとし、これを理解していないと的外れになるといいます。

●新規性:日本初。地域初。会社で初めて。
●唯一性:オンリーワン、ナンバーワン。
●時事性:話題・トレンド・流行のもの。
●公共性:広く社会にとって役立つ。
●意外性:当たり前のことはニュースにならない。

マスコミ目線で広報を理解する時、これらのポイントが大事になります。
つまり、上記のような、マスコミ視点の「ニュースバリュー(報道価値がある)情報」と企業視点の「自社が発信したい(報道してほしい)情報」の重なる部分がPRネタとして相応しいということになります。

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それでは、いざ、社内で広報をしようというとき、社外から人材を確保した方がいいのでしょうか、もしくは、社内で人材異動した方が良いのでしょうか。

先述したように、大企業の広報とスタートアップの広報は違うので、野澤氏は、新しく採用する人材よりも、ある程度自社のことをわかっていて愛情のある社内の人の方が良いといいます。

広報担当者に必要な三要素は以下の通りです。

●コミュニケーション能力(足)
●ライディング能力(手)
●戦略策定能力(頭)

すべてをバランスよく持っている人が、広報担当者として相応しいといいます。
広報のことを知らない人でも、書籍やインターネット、セミナーを通じて学ぶながら実務を行えば、十分なレベルに到達できます。野澤氏は、一つのテーマで最低3冊読んで多角的な視点から全体像を知ることが大切だとし、初級~中級~上級でおすすめ本もシェアいただきました。

「マスコミの人が書いたおすすめ書籍を読んでほしい!」
マスコミ心理を学ぶことは広報を学ぶよりも大切なことかもしれないと野澤氏は唱えます。
マスコミ広報という視点で進む斬新な広報の学びはあっという間に経過し、最後に、質疑応答の時間になりました。

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タイトルとリード文に8割の労力を

会場よりどしどし送られる質問に、野澤氏は引き続きご自身の経験から答えていただきました。

ニュースバリューがそこまで高くない場合でも「特別に貴方へ持ってきました!」を意識すること。
PRネタを同日に複数の会社に提供することより、プレス情報解禁日前に個別に情報提供すること。
広報担当者を内製化する場合は、コミュニケーション能力が高い営業や、社長と距離が近い秘書などが相応しいこと。

その他、「スタートアップとしてユニークなネタの発想方法は?」という問いに対して、野澤氏は「競合他社のプレスリリースをみて参考にする」ということも実践されているとのことでした。プレスの中でも実際に報道に至っている記事を見て、マスコミ視点でどうニュースバリューを捉えているのかを把握するといいます。

また、プレスリリースのボリュームに関してはA4で1枚が理想としつつも、「タイトルとリード文に8割の労力を割く」とのことで、そこで惹きつける魅力とニュース性を考える方が、ボリュームを考えるより大事とのこと。


あくまでスタートアップとしての立ち位置を理解した上でのピンポイントでの「攻め」の広報戦略。
スタートアップ・ベンチャー企業の広報PRの専門家であり、そして、企業経営にも精通している野澤氏の講演会は、会場のスタートアップ関係の参加者にまさしくピンポイントで価値のある情報を提供し続け、大盛況のまま終わりを告げました。

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■野澤氏 プロフィール

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野澤直人(のざわ なおひと)
Naohito Nozawa

大学卒業後、経営情報サービス会社に入社。 マスコミ業界に転じ、ビジネス誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上を取材。その後、当時無名だった海外留学関連のベンチャー企業に参画し、広報部門をゼロから立ち上げ毎年100~140件のマスコミ露出を実現。5年で売上10倍という同社の急成長に貢献する。

2010年に日本では珍しいベンチャー企業・スタートアップ専門のPR会社として株式会社ベンチャー広報を創業。以来10年間でクライアント企業は400社を超える。講演・講師実績も多数。著書に『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)。 2014年より名証セントレックス上場のIT企業・株式会社ガイアックスの執行役を兼務。


■SOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY「ワクセル」
ワクセル(主宰:嶋村吉洋)は「これからの100年をつくるSOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY(ソーシャルビジネスコミュニティ)」として未来を切り拓く人たちが集まり共に学び合い応援し合う新しいコミュニティのカタチを掲げ、持続可能な社会づくりや事業輩出のための活動、講演会を開催してまいります。ワクセルは自律した人たちが集まった上下の関係のない横のつながりの組織です。


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