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東京国際映画祭日記DAY1

いよいよ本日10/24から東京国際映画祭が始まった!

昼過ぎに有楽町に着き、まずはシネスイッチ銀座へ向かう。昨年よりも規模が大きくなり、コロナも多少は落ち着いたからか、海外の方もちらほら見かけた。昨年が初参加だったのでコロナ前の映画祭の様子は分からないが、映画祭によって街が活気付いているのは何よりも嬉しい。

記念すべき今年の1本目は、ツァイ・ミンリャン監督の『楽日』。
アジアの巨匠ツァイ・ミンリャン監督のデビュー30周年を記念して、東京国際映画祭と東京フィルメックスにて過去作のリバイバル上映を行うようだ。
『楽日』は2003年のヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した作品で、デジタル修復版は今回が日本で初めての上映となる。

<あらすじ>
まもなく閉館を迎える映画館では『血斗竜門の宿』(67)が上映されている。場内では観客が映画を観ている。映画は終盤に差し掛かり、映画館の最後の時間がやってくるー。

『楽日』場面写真(東京国際映画祭公式Twitterより)

オープニングは映画を観る観客を映し、さらにその映像を観客が観るという構図から始まり、「観る」という行為の多重性を感じさせられた。ほとんどセリフはないまま物語は進んでいくが、カメラの配置とフレームの中の人の動きが面白すぎる。少し引き気味の定点カメラを使って、普通ではあり得ないほど同じ場所を映し続けることで、人々の色々な思いを引き出し、何の動きのない表情からも、なぜか感情が伝わってくる。
映画を観る行為への愛に満ちた、素晴らしい作品だった!

続いて2本目、TOHOシネマズシャンテで『神探大戦』を鑑賞。
中国・香港で今年大ヒットを記録した刑事アクションドラマで、ワイ・カーファイが監督した。

<あらすじ>
かつて「神探」と呼ばれていた刑事が、同じく「神探」を名乗り、未解決事件の容疑者を次々と殺害する犯行グループに挑む。

これはスケールが凄まじい。物語は多少荒削りで、性急な部分もあったが、とにかくド派手な演出で全てを乗り越えていた。「神探」と呼ばれる刑事役のラウ・チンワンの多彩な演技も見どころの一つで、設定が面白かった(おそらく日本公開があるはず)。女性刑事役のシャーリーン・チョイとの掛け合いも面白い!連続ドラマとかでも楽しめそうなストーリーだった。
ド派手なアクション映画を、映画ファンと共に満席のスクリーンで堪能することも、映画祭の楽しみの一つだと思う!

『神探大戦』を観終えて外に出ると、ちょうどミッドタウン日比谷でレッドカーペットが行われていた。立ち止まってじっくり見ることはできなかったが、隙間からKing Gnuの井口さんが見えた。レッドカーペット自体も3年ぶりの開催のようで、華やかな映画祭の雰囲気も楽しめた。
東京には、東京国際映画祭という大イベントがあるのだと、映画ファンにも、そうでない人にも胸を張って発信していきたい。

夕食はサイゼリヤ。学生にとって、ワンコインでお腹を満たせて時間を潰せるファミレスの存在は本当にありがたい。会期中かなり利用させてもらおう。

続いて3本目はコンペティション部門の『輝かしき灰』。『漂うがごとく』でヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で国際批評家連盟賞を受賞したベトナムのブイ・タック・チュエン監督の作品。今年最初のコンペ部門作品だ。
なんと、東京国際映画祭で初めてコンペ入りしたベトナム映画らしい!(上映後Q&Aで発覚)

<あらすじ>
ベトナム南部の川沿いにある貧しい村を舞台に、3人のヒロインとそれぞれの男性との恋愛模様が描かれる。

『輝かしき灰』場面写真(東京国際映画祭公式Twitterより)

男性の生き方に支配される女性の抑圧を、川沿い自然の美しさと共に描いた、見事な作品だった。家父長制の関係性から始まり、それが続くことで、次第に、愛の形もその関係に支配されていく。
女性は、男性を待たなくてはいけないだろうか?と疑問に思ったときには、もう後戻り出来ないほど好きになってしまっているのだ。
ベトナム南部に住む女性作家の短編小説が原作ということもあり、生活の息遣いの生々しさも素晴らしかった。
上映後の監督・キャストの皆さんの舞台挨拶Q&Aによると、脚本を書き始めてから撮影を終えるまでに7年かかったとのこと!
今回がワールドプレミアということもあり、皆さんの感慨深さも伝わってきて、とても好きな作品になった。

『輝かしき灰』舞台挨拶の様子

本日最後の1本は、ヒューマントラストシネマ有楽町にてコンペ部門の「ザ・ビースト」。
今年のカンヌ国際映画祭でもプレミア上映された作品で、『おもかげ』(19)で知られるロドリゴ・ソロゴイェン監督が手がけた。

<あらすじ>
スペイン山間部にある小さな村に移住してきたフランス人中年夫婦のアントワーヌとオルガは、地元の有力者の兄弟から嫌われ、嫌がらせを受けている。それがやがてエスカレートしていき…。

『ザ・ビースト』場面写真(東京国際映画祭公式Twitterより)

これは、非常に嫌な気持ちになる映画。全く落ち着かず、終始不穏さが漂っていた。
見応えはかなりあるので、A24作品が好きな人などには受けるのでは?と思った。

地元の兄弟が画面に映る度に、胃がキリキリした。しかも画面の端っこにこっそり映っていたりするから、絶妙にイライラさせられる。
夫婦の正義と地元の兄弟の正義が全く噛み合わず、どちらもそれなりの言い分はあるからこそ、どこまで行っても平行線だった(正義感の限度はあると思うが…)。
お互いに論破しようと躍起になるからこそ、対話そのものが成り立っていない。怒りに対して怒りで返しても何にもならないのではないかと、側からみればそう思ってしまうが、怒っている人たちの耳には届かない。
相手よりも優位に立つことにカタルシスを覚える時代だからこそ、まずは冷静に、自分の大切な人の声に耳を傾けることの重要さを伝えているように感じた。
後半の展開は少し冗長に感じたが、不穏さが徐々に変容していく感覚は楽しめた。

やっぱり、映画祭は楽しい。心がときめく。好きなものに全身を包まれながら日々の生活を送れることが、いかに幸せなことか。国際映画祭が開かれることに感謝をして、年に1回の大行事を楽しんでいこうと思う。

2時前に就寝。明日も4本観る!

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