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小さな庭の小さなおはなし 2

コッコちゃん、おはよう! 小さな鶏舎に声をかける。新築の中では、元気にコッコちゃんが右に左に気ぜわしく動き回っている。 私は戸を開け、頭を少し入れて「よく眠れた?」と尋ねてみたけれど、驚いたようで返答はなかった。それでも艶やかな白い羽に触れてみたくて手を伸ばしてみたら、狭い小屋の中を揃って逃げてしまった。 「なんでやね~ん!」 悔し紛れに突っ込んでみた。 つばきちゃんもおっきいちゃんも、見開いたまん丸い目は真っ直ぐにこちらを見ているが、私との間を取って拒否している。

    • 小さな庭の小さなおはなし

      さあ辰年が始まった。 新しい年の始まりを告げる鶏の鳴き声が、凍えた空気に響き渡っている。 その鳴き声は、ここから少し離れた所の鶏舎から届いてくる。 鶏とやぎを飼うことに長い間憧れていた私にも、去年の秋にあろうことかな、鶏が突然現れた!それも今流行?のアローカナ種のメスが二羽。 やって来た二羽は白い羽に包まれ、首と胸の当たりが薄い茶色で覆われている。産む卵は薄めの水色。 そもそも、飼うことへの憧れだけの時間が長かったせいか、いざ現実になろうとするとピン!とこず、うん?

      • 月と星と

        遠い昔、何世紀も前に書かれた『千夜一夜(物語)』のように、私の小さな世界を幾晩も話してみよう。 中秋の名月が過ぎ、暑すぎた今年の夏が、やっと秋へと変わりだした。 畑や田んぼのあぜ道は一気に彼岸花の赤い絨毯となった。 「葉見ず、花見ず」と称される彼岸花は、最初に地中から花の部分が登場し、花が咲き終えると次に葉が伸びてくる。一つの個体だが、花と葉はお互いにその姿を見ることはない。 小さいころ、花好きの母が私に言った。 この花を家に飾らないように。家が燃えてしまう。 あの燃え

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