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「美味しい」は、うれしい

アサリのパスタを作るつもりで、スーパーの鮮魚コーナーを覗いたが無い。ひょいと振り返るとチルドコーナーに「真鯛のアラ」があって、気付くと手に取っていた。たまにはアラ汁作ろうか、アラ煮でもいいかな。夫も私も好き嫌いは無い。料理は好きな方だ。だから自由に何でも作るのだけど、肉のレパートリーに偏りがちになっている。アラのパックを買い物籠に入れた。

夕食作りを早目に取り掛かる。アラ煮は煮込む時間が結構ある。その前にアラを熱湯にくぐらせ、氷水に取り、汚れを洗った。鱗や危険な鰭は、有り難い事に処理済みだった。煮汁を整えてアラを入れ、キッチンペーパーのインスタント落とし蓋を作って入れる。後は他の家事をしながら時々火加減を見て煮汁の量も確認。他の副菜も用意して夕餉の食卓が完成。

夫の食べ始めたキッチンに入って行くと「旨いなぁ、鯛」と言う。夫は食に我儘ではない。だから何でも食べてくれるけど、「美味しい」「不味い」も滅多に言わない。余程口に合ったのだろう。良かった。

「愛してる」を言うとか、ハグやキスをする習慣が、大方の日本人のシニア夫婦に漏れずウチも無いけれど、体調の悪い時の「大丈夫?無理するなよ」、料理が気に入った時の「美味しい」、家事に対する「いつもありがとう」が、それに匹敵する。充分だ。習慣や文化ってそういうもので、映画なんかを見てると、両親が熱く抱擁してるのを子どもが微笑んで見てる場面によく出くわす。それを自分がやるとは到底思わないし、見てる側もびっくりだろう。退職を控える夫を「濡れ落ち葉」なんて言わず、今まで助け合って来たように「これからもお願いします」の気持ちでご飯を作ろう、この先も。


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