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制作会社と事業会社どちらのデザイナーになるか?

デザイナーの働く選択肢として、会社の形態としては大きく事業会社と制作会社の2つがあるかと思います。

今回は、事業会社と制作会社の双方で勤務経験のある3名のデザイナーをゲストに、事業会社と制作会社、実際どう働き方が異なるのか、ワヴデザイン代表松本と一緒に匿名座談会形式で語ってもらいました。

登壇者プロフィール

🦄 ユニコーンさん(女性):事業会社在籍
都内文系4年制大学を卒業後、事業会社、制作会社、企画会社のデザイナー / ディレクター / プロデューサー等を経験。現在はアパレル系IT事業会社デザイナー・マネジメント職を手掛けている。

🐻 クマさん(女性):事業会社在籍
4年生大学を卒業後、内装デザインの仕事を経てWeb業界に転職。制作会社で複数のサービスのデザインを経験。現在は事業会社に在籍し、WebサービスのUI、UXデザイン・ディレクションを手掛けている。

🐸 カエルさん(男性):制作会社在籍
4年生大学を経て、システム会社、広告会社、制作会社を経て、事業会社に転職。飲食系シェアリングエコノミーサービスの企画、情報設計、リサーチ、UIを担当し、再度制作会社に転職。現在は制作会社に在籍しながらサービスのデザインを手掛けている。

事業会社と制作会社の「デザイン」の違い

ー 事業会社と制作会社で仕事の内容はどう違いますか?

🦄 : 違うところは結構あると思います。ありすぎてどこから話せばいいのか笑。私の場合、自社のwebサービスを作っているけど、デザイナーとして関わるのはUIデザインになります。制作会社だと色んなクリエイティブを試せるけど、事業会社でwebサービスなどを手掛ける場合、いかにボタンやコンポーネントを共通化して、いろんなところで効率よく使えるように出来るかに重きが置かれます

デザインする対象が違うというか。広告とかCMとかのクリエイティブを見てデザインを志す人が多いと思うんですけど、そういうのとはまた全然違うものを求められますね。

デザインコンポーネント

ー 「デザイン」っていう言葉が一般的には表現を意味するけど、事業会社はそうではないってことですね。

🦄 : そうですね。事業会社のデザインは、ビジネスも含めた広義の意味での設計になると思います。見た目のデザインだけではなくて、インタビューや要件定義なども含まれるし、そこを伸ばしていきたいと思っていたので事業会社に移りました。

私はもともとマークアップエンジニアだったんですが、進路を変えてからはデザインがメインの職能としてあって、更にどういう領域を伸ばしていきたいかで判断し今に至ります。デザインのバリエーション増やしたいなら制作会社の方がいいだろうなと思うし、どういう方向にデザインのスキルを伸ばしていきたいかによって変わりそうです。

🐻 : 事業会社だとビジネス職やカスタマーサクセスなど、サービスに関わる全ての部署とのやり取りが密になるので、コミュニケーションのスキルがつきます。逆に、制作会社だといろんなジャンルに触れる機会があるので、かっこいいものやかわいいもの、いろんなサービスやデザインに挑戦していけるので、どちらが良いかはご自身次第じゃないですかね。

🐸 : 僕が以前いた広告代理店は制作会社的機能があって、そこは見た目だけのデザインが多かったですね。現在は制作会社でも、ビジネスも含めた広義な意味でのデザインをしているとこも増えている印象です。

ー 分かりやすくすると、事業会社でデザイナーは領域広く関わる一方、制作会社はクリエイティブの質を追い求めている所がある。事業会社では、クリエイティブの質に関してはどういう価値観なんでしょうか?

🐻 : 分かりやすく伝えるところと情緒的・魅力的に見せたいところ(例えるならLPなど)の使い分けをしているとおもいます。どちらも大事で何を伝えるかによって使い分けています。実際にユーザーに使ってもらうところは「分かりやすい」を優先しています。

ー アウトプットの目的によって優先順位が変わるってことですね。ユーザビリティと見た目の良さは両方求めると思うのですが、どうやってバランスをとってますか?

🦄 : 社長とデザインチームは、そのバランスを求めてやっていきたいという気持ちが強いです。けど、エンジニアの数が多いのでパワーバランス的にはそっちが強くて、いわゆる機能面のみが優先されてリリースされてしまうこともあります

今はデザインコンポーネント化して、パーツを共通化して使いやすいものにしていくことをやっていますが、色味、インタラクションなどは装飾より使いやすさを念頭に置いたデザインをしています。効率化と見た目のよさを両立していくことを目指していますね。

🐻 : 効率化はとても共感します。私のチームも効率化は気にしていますね。

ー 仕事のプロセスはどうですか?

🦄 : 上流の設計~プロダクトのデザインの順序が前後することはあります。開発する流れが順序通りにいかないこともあるので、デザイナーが全部をハンドリングしづらいことはあります。特に私のいる会社ではエンジニアの力が強いので、エンジニアドリブンな部分もあって。事業会社でも上流の要件定義をデザイナーがやるところもあるので一概には言えないんですけど。

🐻 : 私の場合は、チームとして、デザインては大事だよねという雰囲気を感じるので、デザインプロセスは大事にしてもらえているかなと思います。デザイナーとしては、デザイナーの方で要件定義をしたりスケジュール切ったり、デザインの領域じゃない部分も多いですね。それでコミュニケーションが増えています。効率よく早く世に出したいというニーズも社内にあるので、落としどころを決めていくところの課題感が個人としてはあります。

🐸 : 制作会社は案件内容に応じて変えているかなと思います。いくつかの制作会社で働きましたが、プロセスが整理されている会社もありましたし、特に型もなく属人的な進め方をしている会社もありました。

事業会社と制作会社の「デザイン」の違い

やりがいのポイント

🦄 : 事業会社でのやりがいは、ひとつのプロダクトを育てていくことですね。私はそれがやりたかったので転職しました。

制作会社時代、色々な企業さんと多様な価値観、スタイルでデザインをやれるのは楽しかったけど、作った後にあれどうなったのかな?とか、結果に対するFBが貰えたり貰えなかったりすることが歯がゆくて。制作したものに対して成長していく過程を見れることはやりがいです。色んな部署の方とやりとりがありますが、デザイナーがそのブリッジ、ハブになる機会が多いです。コミュニケーションスキルが伸びるとデザイナーとしての価値も上がると感じてます。

🐻 : 私の今の環境は案件オーナーといって、一つの案件に対して責任を持つ役職についています。案件がローンチするまではもちろん、ローンチしてからその後の改善まで責任を持つ立場なので、駄目だったときにどうしたらいいかを考えさせてもらえるのはやりがいを感じます。あとは、ユーザーが増えたり、有償化してもらえた時は単純に嬉しいです。

🐸 : 事業会社にいたときのやりがいは、自分が能動的に取った一行動が評価されやすいことだったと思います。制作会社と比べて評価のされやすさの違いはあって、僕は制作会社時代にも常駐という形で事業会社に行っていましたが、その場合はある一定期間で評価されるのに対して、事業会社に勤めた際には行動ひとつひとつに評価がつく感じでした。

僕自身が飽き性というのもあって、事業会社は一つのものにコミットし続ける楽しさや嬉しさがあるけど、制作会社はホッピングできる楽しさがあるなと思って戻ってきました。

ー 双方にやりがいはありますよね。事業会社のデザイナーにはコミュニケーション力やどこまでやる・やらないを決定するなどサバイブする能力が必要なんでしょうか?

🦄 : いると思います。100~200人規模だと領域をそもそも広げるか否か自分で決めなさいというか、目標の決め方も、上から降りてきたものをやるのではなく自分がやりたいからやる感じです。自分が何をしたいかを決められないと苦労したり、戸惑ってしまうかもしれません。

両者でのやりがいの違い

社内の体制や待遇

ー 今は皆さんリモートワークですか?

🦄 : フルリモートです。私たちはチームで朝会をやっていて、業務の相談だけでなくて雑談もそこでしています。ほかにはおやつ会、zoom飲みなんかもあります。

🐻 : フルリモートですね。全社会、ランチ会もリモートで行われています。

🐸 : 同じくフルリモートですね。そこは事業会社、制作会社に違いはなさそうですね。

ー 会が催されてるときの雰囲気はどうですか?フレンドリーなのか、ガヤガヤなのか。

🦄 : うちは正直部署によります。開発部は、トップの人の雰囲気づくりのおかげで上下なくフラットです。CTOとか部長に対しても意見が言える笑。別部署では序列がありますね。

🐻 : 個人によってしまうのですが、傾向で言うと、フランクで否定から入る人はあんまりいないかな。じゃあもっとこうするといいね、って会話になりやすいのでいい刺激になってます。相談しにくいとかはあまりないし、言ったら怒られるかなみたいな圧力は感じていないです。

🐸 : 僕は今また制作会社に戻ってきましたが、フラットだし話しやすいし意見も言いやすいなって感じてます。風通しはすごくいいと思います。人数(現在の制作会社は30人ほど)のせいなのか取り組みのせいなのか、今後の方針を共有する風通しのよさがありますね。

ー 少し踏み込んで給与や待遇についてはどうですか?

🦄 : 事業会社のほうがいいですね。歴代で一番いいです。評価制度がしっかりしてます。馴染まない人もいるとは思うんですけど、向上心のある人は上がりやすいです。

🐻 : 同じく、事業会社のほうが数字だけで見るといいですね。私の場合、面談はあるんですけど、評価制度はまだ特に確立していません。何をどうしたらいくら給与が上がるって決まりはない分、自分はこれをやったんだって実績を作って、アピール出来るようにしておかなきゃとは思います。

🐸 : 事業会社のほうが待遇としてはいいですね。それまでも給与は気にして調べていたので、違いはあるなあって思ってます。ただ制作会社でも良いとこはあると思います。

ー 社内教育はどうですか?

🦄 : ほぼないです。全てが自分がどうやりたいかに則ってる。研修補助や書籍購入補助はあるけど、新人研修のように体系だったものはありません。デザインチームとしてキャリアを皆で探っていき、新鮮な刺激を得たいと思っています。やっている取り組みとしては思考の柔軟性、鮮度を保つために外部から定期的に講師を呼んでいます。

🐻 : うちは人数が少ないので、教育という教育はないに等しいです。オリエンみたいなものはあるけど、どういうやり方が適しているかは探りながらやっています。経験者が集まっているということもあると思うのですが。事業会社でも規模が大きいところはちゃんと整ってやってると思いますが、うちはまだこれからですね...。

🐸 : 事業会社ではなかったですが、現在の制作会社ではあります。オープンな勉強会や知見の共有会は積極的に行われています。フルリモートになり力をいれているようです。ただ、制作会社でも社内教育があるのは稀に感じていて、事業会社、制作会社に限らず、規模が大きく歴史もあると、社内教育が整えられている印象があります。

一般論と実際

ー ではここで一般論と認識合わせをさせてもらえればと思います。事業会社と制作会社の違いについて、Web上ではこんな感じでまとまっていますが、皆さんいかがですか?

🦄 : うん、違和感は特にないですね。

🐻 : 事業会社の「広い視野が持てるようになる」=デザイン以外の視点を持てるってことですよね?それで言うと、ビジネスチームとの会話が増えて、事業としてやっていかなきゃいけないんだ、と数字にコミットする意識が芽生えたのでその通りだと思います。

🐸 : そうそう、こういう感じって思います。

事業会社に向いている人、向いてない人

ー その人のデザイナースキルのステップに応じて価値観が変わるから、自分が何を大事にするかで選ぶと良いんですかね?

🦄 : 私は制作会社と事業会社のどちらかに寄せなければいけないとは思っていなくて、行ったり来たりしたらいいかなと思います。年齢と成長によって自分の価値観は変わりますから。突き詰めてやっていきたい職人気質な人は、キャリアの後半でもものづくりに集中していくのに向いているんだと思います。私はキャリアの後半で事業会社に移ったわけですが、ビジネスにもっとコミットしたとか、この事業を成功させたいっていうモチベーションがあるからでした。あんまりこれでいかねば!って思わずに、その時その時でどちらの会社にいくか変えていくと良いのじゃないでしょうか。

🐻 : 自分のスキルのどこを強くしていきたいかで選んでいくと、未来に繋がるかなと思います。

ー 自分が今なにをやりたいかってどうやったら分かると思いますか?

🦄 : 繰り返し満たされない欲求が出てきたら、次のステージに行けるんじゃないでしょうか。満足しているうちにはそれでいいのだと思います。私なら「自分の作ったものがどうなったか知りたい」って気持ちが何回か湧いてきたので、事業会社に惹かれていたのだと思います。自分の感覚をしっかりキャッチしていく、世の中の流行り廃りありますが、自分の価値観に常に敏感にいることが大事なんじゃないかな

🐻 : キャリアを重ねるにつれて、自分の得意なことがちょっとずつ分かってきたところがありました。自分の強みがどちらに活かせるかで考えるのも良いかと思います

🐸 : ぼくは自分が身につけたいスキルベースで考えました。ただ、その考えで両方いってみて思ったのは、結局はどちらにいっても自分次第かなと。もちろん環境に左右される場合もあるのですが、いかに自分で身につけたいスキルがつくように動けるかってことが一番大事なのかなと思っています。そう思えるようになってからは悩まなくなりました笑。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

デザイナーの働く選択肢が増えた今、事業会社・制作会社のどちらに所属しようか悩んでいる方の参考になったら幸いです。大きな視点で見れば、デザイナーの活動領域はどんどん広義になっています。まだまだ選択肢は増えるかもですね。協力頂いた3名の方、ありがとうございました。


ワヴデザインは衣食住・教育・医療の分野を中心に、ブランディングやデザインコンサルティング、サービス開発支援などを手掛けるデザインファームです。サービス開発支援では事業会社のデザインも多数手がけています。クリエイティブの質にこだわりつつ、数字や効率などプロダクトを育てていく視点も同時に持ったデザインを行っております。
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