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WindowsではなくChromebookという選択肢

最近、社内のとある部門のPCをWindowsからChromebookにリプレースしたところ、社内のPCのシェアでChromebookがWindowsを追い越していました。
Chromebook、日本ではいまいち流行ってない気がするんですが、とても良いプロダクトだと思うので、その魅力を紹介したいと思います。

Chromebookとは

Chrome OSを搭載したノートPCがChromebookと呼ばれます。
日本では扱っているメーカーは少なく、ASUSとAcerが2トップとなっています。
Chromeのみが動作しているので、CPUやメモリが少ない低スペックなPCでもサクサク動き、ディスクも搭載していないので軽くてバッテリーの持ちが良いのも特徴。
低スペックなので価格も安く、エントリモデルであれば3万円〜4万円ほどで購入できます。(別途ライセンス費用がかかりますが、詳細は後述)

2年前の数字にはなりますが、米国の教育機関ではChrome OSのシェアが全OSの中でトップの58%まで伸びてきているようです。
「Chrome OS、米K-12教育市場でシェア58%に」 ITmedia NEWS

日本でも、大学などの教育機関でのChromebookの導入事例が増えてきています。これはコストだけの理由ではなく、教育現場では「1台のPCを複数のユーザーで共有する」といった使い方が前提になっており、なおかつ大量のPCを導入する必要があるので、管理面やセキュリティ面でもChromebookが最適であるという証拠でしょう。

Chromebookの特徴

管理性
G Suiteを導入済みであれば、G Suite管理コンソールにChrome OSのMDM機能が備わっているので、そちらからデバイスやユーザーのポリシー設定、リモートロックなどが可能です。
・指定したドメインのGoogleアカウントのみログイン可能
・外部ストレージデバイスの使用禁止
・シークレットモードの使用禁止
など細かなポリシー設定も可能です。

汎用性
汎用性ではやはりWindowsやMacには敵いません。
ソフトウェアを自由にインストールできないので、ChromeとChrome拡張機能でできる範囲のことしかできません。最近はGoogle Playストアのアプリをインストールできるようになったので思った以上に色々なことができますが、スペックやセキュリティの問題もあり、Chromebookの良さを損なってしまう為、あまりオススメはしません。

セキュリティ
セキュリティはChromebook最大の強みでしょう。
詳細はGoogleのドキュメントに記載の通りですが、
・Chromeの各タブがサンドボックス環境で動作する
・起動時のセルフチェックによる自己修復
・ローカルディスクを持たない
といった特徴があり、マルウェア対策はほぼ不要となります。

シンクライアントと同様にローカルにデータを保持しないので、紛失・盗難に遭ってもデータ流出のリスクがありません。(厳密には不揮発領域にデータを保存可能ですが、こちらに保存されたデータも暗号化されており、ログアウト時に自動削除するようなポリシー設定も可能です)
Chrome拡張機能にマルウェアが含まれている可能性もあるのでそちらの注意は必要ですが、インストール可能なChrome拡張機能もポリシーで制限可能です。

また、ソフトウェアをインストールできないので、Windowsのように各PCのインストールソフトウェアをインベントリ管理して、「Adobe製品に脆弱性が発見されたので、早急にアップデートをお願いします」といった脆弱性対応を利用者にお願いする必要も無くなります。

コスト
エントリモデルであれば1台あたり3〜4万円ほどで購入可能です。ハイスペックモデルや2 in 1モデルにするともっと高くなりますが、それでも10万を切る価格帯です。(海外の方が製品の選択肢が多いですが、海外から購入した場合はキーボードがUS配列になるので注意)
Salesforceなどのクライアントサイドでの処理が重いWebシステムを複数タブでガンガン使うような業務であれば、CPUやメモリは良い物を積んでおく必要がありますが、想像以上に低いスペックでもサクサク動いたりするので、モデル選定の際は販売代理店から一度レンタルして使ってみるのをオススメします。

また、端末の初期費用と別に「Chrome Enterpriseライセンス」が必要となります。これは先述のG Suite管理コンソールでChromebookを管理するために必要なライセンスで、厳密には無くても使用できるのですが、G Suiteでの集中管理はほぼ必須だと思うので、必要なライセンスとして認識しておいた方がいいでしょう。
年払い版と永続版があり、永続版で1ライセンス2万円ほどです。なお、Chromebookの機種を変更した場合もライセンスは付け替え可能です。(2019/7/16追記)
Chrome Enterpriseライセンスは、機種変更の際は流用できない場合もあるようです。詳細はGoogleもしくは代理店にお尋ねください。
「Chrome 端末の用途変更または廃棄」

よって初期費用としては、
機器4万円 + ライセンス2万円 = 6万円
ほどになります。
Windows PCが1台10万円とすると、1台あたり4万円のコスト削減となり、Windows PCで必要になるマルウェア対策や管理ツールなどのライセンス費用も削減できます。PC台数が多く、PC交換サイクルが短い会社ほどコスト削減効果は大きくなってきます。
Chromebookは初期費用に加えG Suiteのライセンスも必要になりますが、既にG Suite導入済であれば、従業員に発行しているライセンスをそのまま使用すればランニング費用はゼロと考えていいでしょう。

また、G Suiteアカウントを発行していない従業員にChromebookを割り当てる場合は、裏技的ではありますがGoogle Cloud IdentityのFree Editionを使ってランニング費用を削減する方法もあります。
Free Editionでは G Suiteの一部のコアアプリ(Gmail、共有ドライブ、カレンダーなど)は使用できませんが、Chromebookへのログインやポリシー配布は可能です。G Suiteコアアプリを使用せずに他のWebシステムで業務が完結する場合は、こちらを利用した方がランニングコストを抑えることができます。

Windows PCとの比較

今まで述べてきたChromebookの特徴をWindows PCと比較すると、以下の表のようになります。

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※ChromebookはG Suiteが既に導入されている前提
※WindowsはIntuneなどのMDM/EMMがあれば管理性は上がりますが、
 単独では集中管理不可のため「×」としました

Windowsと比較した場合のChromebookのメリットを、もう少し具体的に掘り下げていきます。

管理者視点のメリット
・Windows Updateの管理が不要
・半期毎のFeature Update対応が不要
・マルウェア対策製品が不要
・インストールソフトウェアの管理、脆弱性対応が不要
・キッティングが不要
・Active Directoryが不要 ※AD参加も可能
・Windows特有の問い合わせが減る

利用者視点のメリット
・Windows Updateが不要
・起動が爆速(数秒)
・Chrome OSの更新も早く、Windowsのように何十分も待つ必要がない
・脆弱性対応が不要
・軽くてバッテリーの保ちが良い

特に管理者からすると「Windows Updateの管理が不要」と「キッティングが不要」という点は、工数削減効果が非常に大きいです。
Windows Updateの不具合の度に問い合わせが殺到したり、Feature Updateの展開計画を練ったり、マスタイメージをUpdateや機種変更の度に更新する必要もありません。Chromebookの場合は、箱から出して「はいどうぞ」でゼロタッチ展開可能です。(厳密には初回起動時にChromebookを組織に紐付ける為の作業が必要ですが、利用者に手順書を渡してやってもらうことも十分可能なレベルです)
ちなみにChromebookのEOLは発売から6年半となっていますが、リプレースの際もWindowsのように手間はかからず、新しいモデルを買って交換すれば完了です。故障してもストックを渡すだけで済み、何より安価なので使い捨て感覚で使えます。

個人的に情シス/コーポレートITの業務の中で最も工数がかかり非生産的な仕事が「Windows PCのおもり」だと思っているので、
「Windows PCの台数を減らすことは、情シスの工数削減に直結する」
と考えています。
最近はMacの割合もかなり増えてきていますが、Windows関連のトラブルに比べると、Macの方がよっぽど安定していると思います。Jamfがあれば管理もキッティングも楽になりますし。

従業員特性によって最適なPCを割り当てる

とはいえ、もちろん社内の全Windows PCをChromebookに置き換えることは現実的ではないでしょう。バックオフィスでは取引先とOffice形式のファイルのやり取りが必須ですし、インストール型ソフトウェアが必須な部門もあるかと思います。
しかし、アルバイトや派遣社員など、「業務範囲が限られていて、Webシステムですべてが完結する」ような従業員の場合、Chromebookで事足りるケースも少なくないのではないでしょうか。

たとえば以下の表のように、雇用形態や職種によって、「Chromebookがハマる箇所があれば、WindowsではなくChromebookを標準PCとする」といった方針も、一考の余地があります。(区分けはあくまで一例です)

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会社の規模や特性にもよりますが、労働集約的で定型業務のアルバイト・派遣社員が多い会社ほど、Chromebookの割り当て台数が多くなり、コストメリットも大きくなるはずです。

「Windowsじゃないとダメ」という理由は、「Officeを使いたいから」という理由に引きずられてるケースが多いです。
現状の業務では全員がOfficeを使っていたとしても、
「それ、本当にOfficeじゃなきゃダメですか?」
と深掘りして行けば、「実はスプレッドシートで事足りていた」というケースもあるかもしれません。
実際に以前の現場では、2000名ほどの全従業員にOfficeライセンスを発行していたのを半数まで減らせたこともあります。(社内の共有資料や各種フォーマットがExcelやWordだったのでOfficeが必要というだけで、対外的なOfficeファイルのやり取りは業務では必要なかったので、社内資料をG Suiteに統一してもらいました)

また、ITリテラシーが低い従業員とChromebookは、セキュリティ面でも非常に相性が良いです
特にエンドユーザーの個人情報を取り扱うカスタマーサポート部門は、「標的型攻撃メールが届き、リテラシーの低いスタッフがうっかり添付ファイルを開いてマルウェア感染する」「個人情報を持ち出される」といったリスクも想定されますが、Windowsに比べるとChromebookの安心感は段違いです。PCを頻繁に持ち出して紛失・盗難しがちな営業職とも相性は良いと思います。

更に、副次的な効果ではありますが、Chromebookを標準PCとして使ってもらうことで、必然的に業務ツールの選定はWeb・クラウドベースの物になります。Windowsの場合はソフトウェアを好きにインストールできてしまうので、「情シスが管理していない野良ツールが、いつのまにか業務上マストなツールになってしまっていた」といったことも回避でき、PCやオンプレに依存した業務が増えずに済みます。

最後に

このように、Chromebookはコスト以外の面でも様々なメリットがあります。それは決して管理者側だけのメリットだけでなく、利用者側も恩恵を受けることができます。
コスト・セキュリティ・制限などChromebookの特性をきちんと説明し、フィジビリティを検証した上で導入を進めて行くのが大切です。
「とりあえずWindows」とPCを割り当てる前に、Chromebookを導入できないかどうか、一度検討してみてはいかがでしょうか。

おまけ1

Chrome OSを搭載しているデバイスはChromebookだけでなく、据え置き型のChromeboxや、USBスティック型のChromebitなどもあります。

これらのデバイスもChrome OSが動作しているのでChromebookと特徴は同じで、ディスプレイに接続するだけで簡易的なPCのように使えます。
Chrome OSにはキオスクモードもあるので、サイネージ的な使い方もできますし、「各会議室に設置しておいてWeb会議に使用する」といった使い方にも最適です。(Windows PCを放置しておくのに比べ、よっぽど安心です)

おまけ2

実際に会社でChromebookを導入してみて、あまりの安さと手軽さに個人的にも欲しくなってしまったので、個人のサブPC用にASUSのChromebookを購入しました。(メルカリで25,000円くらいで買えました)
「MacBookProを持ち歩くのは重いし気も使うし…」といったケースも多かったので、セミナーや旅行のお供に重宝しています。

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