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(パナスタロングレポ)Fujii Kaze LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE 2022.10.16. at Panasonic Stadium Suita 

 藤井風にとって初の有観客スタジアムライブとなったPanasonic Stadium Suitaでのライブ。音楽も演出もコンセプトも今、表現したいことが全てできたというこのライブは藤井風の魅力が、みっちり詰まった風の秋まつり2DAYSだった。

1. SERVE ALL



 2022年10月16日日曜日、9時すぎに万博記念公園駅に到着。ライブのスタートは17時というのに、パナソニックスタジアム(以下パナスタ)への階段には、すでに行列ができていた。
 今回のスタジアムライブは、エリアが2つに分かれており、風さんのセカンドアルバムのタイトルLOVE ALL SERVE ALL(以下LASA)に因んで、SERVE ALL AREAとLOVE ALL AREAに分かれていた。左はライブが行われるスタジアムやグッズ販売ブースがあるLOVE ALL AREAへのルート、右の行列が藤井風さんが初監修したフードブースであるKAZE KITCHENのあるSERVE ALL AREAへの行列だった。9時半ごろ同行人のSはグッズ販売へ、私はSERVE ALL AREAへの列に並んだ。並んでいる階段や通路に、のぼりというのか、LASAのブックレットの写真を使った縦長の旗がたくさん立っている。満面の笑みの風さん、祈る風さん、気怠く横たわる風さん、いろんなのぼりがあるので、その写真を撮りながら順番を待つ。
 SERVE ALL AREAに入ったのが1時間後(このころ、グッズがもう買えるとSからの連絡)、そこへの入り口は丸太を組んだオブジェのようなゲートがいくつか用意されており、ネパールにあるようなカラフルな旗や、ネイティブアメリカンのドリームキャッチャーを思わせるモチーフなどが飾られていて多国籍な雰囲気。インド風の音楽と、漂うスパイスとお香の香りに、予想外の暑さも相まって異国の地にいるよう。

行列の横で、はためくのぼり
LASA王国への入り口はもうすぐ

 一人のアーティストのライブのために専用フードエリアがあるというとても贅沢な企画!風さんが大切にされているベジタリアンであり動物を愛するということにちなんだ一切肉のないメニューで、フードロスの啓発ブースまであるという。こうした啓発はちょっと海外のアーティストを思わせる。それでいて、隣接するショッピングモールに数万人のライブ待機組が溢れたり、開演直前にモノレールの駅が大混雑することを緩和する狙いがあったのではないかと考えると、なんとも各方面に配慮のある風さんチーム。
 会場近辺にも、常にスタッフが配備され、とくにパナスタ駐車場の出口付近を通らないように気を配られていたし、帰り道もモノレールの駅や送迎バスへ向かう道にもスタッフが配備されて、道に迷うことのないよう、危険なことのないよう見守られている感じがあった。こういうイベントの時は大事故が起らないかが、一番懸念されていることだと思う。

 ブースに並んでから40分後に大豆ミートバーガーとチュロスを購入した。購入するお店によってとてもかわいい色違いの"hehn rec Vegetable(ヘンレコベジタブル)”のシールがもらえる上、店員さんもとっても感じがよかった。
 1年前から、忙しい合間をぬって野菜を育て始めているという風さん、野菜中心の健康的な食生活を広めたいという願いから、今回のライブに合わせて"hehn rec Vegetable"というチームを立ち上げたのだ。この夏行われたホールツアー("alone at home Tour 2022"=aahT)の舞台セットで、看板に書いてあった少々謎なメッセージ「YASAITABEYO」はここに繋がっていたのだった。これからこの"hehn rec Vegetable"がどのような展開を見せるのか、風さんの海外進出と共にとても楽しみだ。
 フードロスミュージアムでは、トートバックに入った規格外野菜が風さんからのコメント入りで販売していたり、パネル展示にも「わしは賞味期限切れなんて気にせんわ」というような風さんのコメントが入っている。インスタライブで賞味期限切れのナッツを堂々と食べていた風さんを思い出した人も多いだろう。ただ単にふざけているように見えて、実はフードロス啓発への伏線だったのだ。何より、こういう問題は、堅苦しく考えがちだが、好きなアーティストの音楽ライブに来てこういう展示があることでより身近に感じ、できることから行動する人が増えたら素敵なことだと思う。
 偶然なのか、10月は食品ロス削減月間だということを、後日知った。

 SERVE ALL AREAとスタジアムの間にあった公園の木陰にレジャーシートを敷き、リハが行われている(だろう)パナスタを遠くに眺めながら、Sと大豆ミートバーガーを食べ始めた。美味しい!甘みのある玉ねぎ、フレッシュなトマトとレタス、何より大豆ミートが美味しいことに感動した。これなら本当に肉なしでもいけるかも。価格も、味とイベント会場でのフードということを考えると高すぎない。
 この頃、Sの手にバッタがぴょーんと乗ってくるハプニングも。

青い空と観覧車とKAZE KITCHEN

 余談だが、公園の少し古い感じのトイレにも行列はできていたが、きれいに掃除してあり、トイレットペーパーも沢山置いてあって配慮が行き届いていると感じた。
 食事を終えてから、パナスタを見に行こうと歩き始めた。南駐車場を挟んで向かい側から、青い空と白い雲の下に見たパナスタの美しさは素晴らしかった。左手にはエキスポの観覧車と、駐車場の真ん中に風さんの機材を運ぶ黄色いトラックが2台見えた。この辺りの飲料の自販機にも行列はできていたが、時々補充されていたようだ。
 エキスポシティに行き、この日のための特別な風さんの動画入りデジタルサイネージを確認して、休憩しているとあっという間に3時過ぎになり、再びスタジアムへ。

 スタジアムに着くと、壁面にある風さんの二つの巨大写真が嬉しくて、写真を撮る。右がLASAのオレンジっぽい瞑想中のような写真。左はHEHN(ファーストアルバム「HELP EVER HURT NEVER」)のダークトーンの祈っている写真。これまでリリースした2枚のアルバムが対になっており、陰と陽を表しているよう。お寺の山門にある阿吽の像のようでもある。そして、ブックレットの写真の中でも、宗教的な印象を受けるこの二つの写真を選んだあたり、風さんが強く打ち出していきたいことなんだ、と納得させられた。
 パナスタの壁に飾られていた写真で、密かに好きだったのは、ピアノを弾いているかのような指にヒンディーが書いてある写真。密かになんて言っているが、そう思っている人が、何万人何十万人もいると思う。スタジアム前で沢山写真を撮り、たまたま居合わせた親子と写真を撮り合った。

 アリーナに入場すると、うわーっと声が出た。サッカースタジアムに行ったことはあったが、フィールドの部分に入ることは通常はない。スタンドを見ると上までびっしりと客席があり、通常サッカーをされている芝の上には、白い板が敷かれていて、その上に簡易な椅子が並べてられている。昔のパイプ椅子よりも少し軽量なタイプのように思う。大切な芝をいためないように、アリーナでの飲食は禁止で、水のみOKとされている。
 スタンドに並ぶ無数の柱には、風さんのデジタルサイネージが、映し出されて、舞台のほうを見ると、何か海外アーティストでも来るのかと思うような舞台装置と、真ん中に花道、その先に小さなステージがせり出している。  
 左右が黒い巨大な画面なのだが、メッシュ状になっているのか、後ろが少し透けて見えている。ライブが始まるとそこには、風さんを絶好の角度からとてもクリアな画像で映してくれたため、自分の席からは双眼鏡を使う必要がほぼなかった。
 心配されていたのは女子トイレの少なさだが、大量の仮設トイレがアリーナ横に設置されており、行列もすごかったが、比較的サクサク進んでいたと思う。

 LizzoやArianaのノリのいい曲が会場内に流れ、開演を待っている間に夕陽が差し込んできた。電光掲示板の辺りをオレンジのLASAカラーの夕陽が照らしている。これか、風チームが私たちに見せたかった最大の演出は。自然界の紡ぎ出すものの中で最も壮大で美しいともいえる夕焼け。頭上に広がっていた青空が、薄紅と紫の混ざった色に染まり始め、時の経過とともに、オレンジ、時には真っ赤に染まってゆく。この圧倒的な美を前にしたとき、人間はあまりに小さな存在で自然界、ひいては万物を作りたもう大いなるものへの畏敬の念を抱かずにはいられない。ちょうどこの時間帯に合わせて、開演するという演出に藤井風スピリットを感じる。

美しすぎたパナスタ


2. LOVE ALL



 定刻を過ぎて、今か今かと開演を待っている。どんなふうに登場するのだろう、これまでブルーレイで観た、大きな箱から出てくる、とか、後方からSAXを吹きながらとか、あれこれ思いめぐらしていると、ドローンが飛び始め、ステージにはスモークがたかれた。
 荘厳な音楽と美しい色合いの画像が映し出され、舞台の真ん中がせり上がってきた。なんとその上には大理石の仏像のような結跏趺坐(けっかふざ)姿の風様、いえ風さん!思わず手を合わせ…てはいないが、思わず歓声を上げた。これ、ウケていいんだよね。時折、神格化されてしまう自分を、自分でネタにしているようなギリギリのところを攻めてくる。ところで、この公演って声出しOKなのかな?風さんは真っ白に発光しているが、声出しに関してはグレーのまま「何なんw」が始まった。レスポンスのところで、待ってる気もする…と考えている間にみんなが立って手拍子をしだした。「立ちたい人は立ってええで〜」もう立ってるって!アウトロで花道をダッシュしてピアノソロ!やっぱりまぎれもなく本物の藤井風だ!
 次は「damn」これは、数週間前にMVが公開されて踊りを練習している人も多い曲。ふと見ると真船さんのベースがエレクトリックウッドベースで渋いビートを刻み、ちょっとレトロなダンスチューンに深みを増している。最後の決めポーズも変顔もMVを再現している。
 次は尺八奏者の長谷川将山さんが登場し大画面に「へでもねーよ」の尺八を吹く姿が映る。渋い音色と真っ赤に染まる照明が本当にカッコいい。日本には伝統的な楽器が他にもいくつかあるが、古典だけでなく、もっとこうした曲に取り入れられてもよいのでは。この曲では、皆さん大好きな「手ぇあげな」の振りがあり、炎が上がる演出と共に曲が表現している怒りのパワーを感じられた。

 最初のMCは「よう来てくださいました。」。何か田舎のお家でおばあちゃまが出迎えて下さったときに聞くような温かい挨拶。「すごくすごく大変な中、ありがとうございました。」日中暑かったことや、待ち時間が長かったことなどへの労いだろうか。「みなさん、自分の気分を優先してくださいよ。無理せんでくださいよ。」というような内容のMCをする。
 その後、流ちょうな英語で同じような内容のMC。今回は直前に海外からの観客も来れることになったのだった。最もそれがなくても英語MCはおなじみだが。
 Our gardenに関するMCからガーデンの曲に行く流れは、aahTを思い出させた。しかし、たった一か月少し前に観たアットホームで素朴な演出のコンサートと、このド派手なコンサートとの落差よ。
 地元のホールで、小さめの風ピアノと床置きのキーボードとカラオケ、ダッチさんこと山田健人さんがスマホで撮影した映像がスクリーンに映って、あれだけ楽しめた。リクエストコーナーも楽しかった。そこからの対比がすごい。

問答無用のこの手を見よ

 その後、ハミングが始まり、普段よりもテンポを落とした「ガーデン」が始まり、「やば。」に続いていく、「ガーデン」では、バックに花盛りの植物と戯れたり、ブランコに乗る"かいらしーい(かわいらしい)″風さんの、昔懐かしい八ミリのような映像。「ガーデン」はシンプルなメロディの繰り返しが、繰り返す季節のように無性に心を落ち着かせてくれる。
 「やば。」はLASAのアルバムの中でもこれまで人前で歌われていなかった唯一の楽曲で、とても楽しみにしていた。後ろの画面には生命力を感じさせるような木や水のしぶきが表れ、数人のダンサーが踊るように木製のベンチを持ってきてダンサーと絡みながら、座ったり寝そべったりして歌う風さん。どんな体制でも歌えるってすごい。畳みかけるようなリズムとタイキングさんのギターが冴え、風さんのスキャットというのか「more、more、more、more」がもうやばい!
 次の曲もベンチに座っての「優しさ」。これもリズムが変えてあり新鮮な感じ。この曲は風さんの歌唱という面での魅力が一番出ているのではないかと思う。圧巻は、間奏前の「ahー」のところ。「来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ」と心の中で言えるくらい、長めにブレイクが入り、みんな一斉に息をのんだ。あの万感の思いを込めた「ahー」を、目を瞑って聴きながら、私は心の奥の何かが解き放たれていくのを感じた。

 「次の曲ではみんなに自由な感覚を味わってもらいたくて、この曲のみ動画や写真の撮影OKです」とのMCに数万人がどよめいた。一部の海外アーティストのライブでは見たことがあったけれど、このスマホに自分だけの生動画を収められるなんて!!!「grace」という最新曲を皆、驚き喜びながら撮影。白いオールインワンの上にアイボリーの布がサリーのように巻きつけられた衣装は、「何なんw」で座禅を組むと仏像に見え、「grace」のイントロで立って大きく手を広げた姿は、まるでブラジルのコルコバードのキリスト像。十字を切っているような振りもある。もちろん花道にも出てきて、少しでも観客に近づこうとしてくれているのが伺えた。最後の方は、ダンサー達が旗を持って行進してくる、どこかの国のセレモニーのようだ。
 しかしこの曲、このライブの一週間ほど前にリリースされた新曲である。この堂々とした歌いっぷり、パフォーマンスぶり。「新曲をライブでやるのはむつかしいー!」なんてMCをしていた彼はもうどこにもいない。

 次にバンドメンバー紹介、HEATツアー(HELP EVER ARENA TOUR)の時のゴールデンメンバーにいつも音源のアレンジをされている名プロデューサーでもあるYaffleさんがキーボード。この方が入っていることでスタジアムライブへの並大抵ではない気合を感じた。
 そして次の曲はおそらくYaffleさんが加わったパナスタアレンジの真骨頂「帰ろう」。え、こんなレゲエの曲あったっけ?と思っていると「じゃあ、もう携帯しもてもらおかー。一曲だけ…(ちょっとボソボソと)って言うように言われとるんです」と風さん。そして「帰ろう」の歌が始まった。聴衆が動画撮影の興奮冷めやらぬなか、あれよあれよという間に浮き足たつような「帰ろう」が流れる。バックに浮かぶは太陽をイメージするような模様、ライトまでラスタカラー。ああ、あの風さんが時に押しつぶされるように思う時があると言っていたこの曲を、夏の海が似合うようなレゲエにしたのか。
 「帰ろう」のYoutubeのコメント欄には、沢山の方の感動コメントが書かれている。この曲を聴いて救われた、涙がこぼれた、喪失体験や健康上の悩み…それぞれの方の思いを太陽のもとに昇華させるかのような、このアレンジである。
 しかし軽い曲調には聴こえるが、レゲエの神様として崇められたボブ・マーリーは非常に思想的、宗教的なメッセージを歌い、ベジタリアンでもあった。それになぞらえてるのかもなどと考えるのは深読みのしすぎかな。

3 LOVE ALL SERVE ALL


 次は「さよならべいべ」ファーストアルバムのHEHNつながりだ。この曲は、風さんが故郷の岡山を去るときに作った曲。これを聴くと誰の心にもいる大人になる直前の不器用な男子が、心をツンツンつついてくる。バックに映っているのは、以前のコンサートの客席の画像か、みんなが手を振る振りをしている。それを見てなおさら盛り上がった。

 「みんな疲れたじゃろ、ちょっと座ろかー」というMC。ところで、今日あんまりピアノ弾いてないんじゃない?と思うと、花道の先の小さなステージにいつもの風ピアノが現れた。そうそうこのかわいいピアノを弾かなきゃ、ピアノを弾かなきゃ風さんじゃない。
 ピンスポットに照らし出される風さんとピアノ。おおっ、これなんの曲?即興のようなピアノソロから始まるスタイルは、武道館ライブでの「死ぬのがいいわ」を思い出させる、でもちょっと響きが明るく違う曲のようだと思ったら「ロンリーラプソディ」だった。バックの映像はするするとシルエットの木が生えてきて、だんだんと葉を茂らせていく、全体に緑色の世界。曲の途中でaahTと同じく「いいもんだけ吸ってー、ネガティブなもん吐いてー」と呼吸の指導をしてくれる。このまま一緒に瞑想出来たら良いのに。最後の「a―ha―a―ha―a―ha―」は、アカペラになり、最後の一音までゆっくり細心の注意を払って歌ってくれる。そう、なぜだかわからないが歌っているではなく、歌ってくれていると感じた。

 次はアルバムなら「それでは、」だなと思ったら、「それでは、」が始まった。この曲を風さんが歌い出すと極上のシルクのヴェールが何万人の上にそっとかけられていくよう。バックの木のシルエットは青に変わり、葉が散り始めた。「ロンリーラプソディ」の時は、打ち込みのような音が聴こえたが、「それでは、」はピアノの響きだけのオーセンティックな弾き語り。冬に向かい木々たちが眠りはじめるように、聴衆は水を打ったように静まり返って、ピアノの最後の音にまで耳を澄ませた。
 ここでみんなの頭の中では青春病の歌い出しが聴こえている(はずだ)と思った瞬間、「せいしゅんのやまいに」と歌い出し「青春病」が始まった。バンドの方達が戻ってきて、バック映像の木にも葉が戻り、木漏れ日なのかキラキラ光り始める。非常に内省的な2つの曲の後で、現実の世界をまたいきいきと生き始めたように見えた。前の方の背中に当たらないように無事、野ざらしダンスもできた。最後の方で、風さんが不在となり、バンドメンバーの方々の弾いている部分がそれぞれせり上がって行った。

・・・(見とれる)

 明るい雰囲気が一転、ダークな雰囲気と赤いライトに変わって、野太いSAXの音がスタジアムに響き渡った。キャー!サクソフォン風(かぜ)だ!!ここで赤い着物合わせのようなジャケットのセットアップに着替えた風さんが登場。HEATのブルーレイで観た神戸のサプライズ登場を彷彿とさせるSAXイントロ。これがまた、脂の乗りきったベテランジャズメンのような音を出している。曲は「死ぬのがいいわ」だった。バックにはモノクロの風さんが映り、ピアノを弾くような指の動きをしたり、幽霊のようなポーズをしたりする。その前で歌い踊る真っ赤な風さん。アジアを皮切りに全世界でバズっているという少し中毒性のあるこの曲の世界を、赤と黒のコントラストで表現していた。
 次は「燃えよ」。文字通り、また炎の上がる演出があり、舞台から少し離れたかぼちゃブロックでも頬にその熱さを感じた。舞台はどんなに熱いだろう。花道でダンサーからキーター(ショルダーキーボード)を渡されて、弾きまくる~これもHEATの場面と同じ感じで、表情も動画の恍惚感をちょこっと再現。それからクラブを思わせるような映像が流れ、「きらり」に続いていく。Kirari Remixesにあるようなアレンジ。間奏で「すいたーすいたースタジアムー」と言ってくれる。ちょっとゆるい言い方がたまらない。踊りまくるダンサーさんはdamnやきらりのオタク役でおなじみのシンゴさんをリーダーになんと16人もいたらしい!今回は国籍もさまざまに見える。

 「まつり」冒頭のアルペジオが鳴り、またもやaahTを思い出す。パナスタはこれまでのツアーやライブの名場面を思い出させる箇所があったり、アルバムと同じ曲順で安心感を与えつつも、アレンジはかなり大胆に変えてきており、舞台演出と共にそれぞれの楽曲の新しい魅力を見せてくれている。「まつり」が始まり、みんながまつりダンスを踊る。踊りの楽しさに酔っている間に気づけば風さんの立っている場所が、どんどん上がっていき、すごく高いところにいる!怖くないのかな…と思っていると、バックに花火の映像が映り始め、本物の花火がポンポン上がり始めた。曲の終わりの「なんにせよめでたい~ハッ!」に合わせて最も激しく花火が打ち上げられ盛り上がりは最高潮に達した。
 「すごいですね、吹田スタジアム、こんなに派手な演出ができるんですね。ここは音楽ライブを初めてやるところで、ほんとこんなとこでやらせてもらえて感謝しております。」ここでダンサーさんの紹介。「今の曲が最後かと思うたらあと一曲あります。わしらはまだ人間やし、色々あるけど、わしらはAmazingでPerfectな存在やし、お互い支え合って、愛し合って、学び合っていきましょうや。Let’s live together, Let’s love together, Let’s learn together」というようなことを言い、少し大きな声で「 Love all serve all!」と言って最後の曲を始めた。「旅路」だった。風さんにとって、これがやっぱり最後の曲なのだ。HEATもアルバムLASAもこの曲で終わっているというのもあるけど、ライブは終わってもまだまだわしらの旅路は続くよ、一緒に歩もう、とでも言いたげだ。
「旅路」が終わると、インストの「grace」がかかり、風さんの挨拶が始まる、大画面にアップで映し出される真っ赤な衣装を着た風さんのエアハグ、思いっきりぎゅーっとしている。みんなを抱きしめ、また自分をも抱きしめているような。それから「ごめんねぇ~」みたいな表情で、右端行って、左端行って、上の階までくまなく手を振って拍手に応える。アップになったら目が少しうるんでいた。そして3万5千人が手拍子する中、舞台袖に入って行った。風さんのライブはいつもアンコールはない。

 この曲「grace」のエンディングは、クラップのようなリズムだけになる。リリースされた時、ここ何かカーテンコールみたいに聴こえるなと思っていた。ついこのリズムに合わせて手を叩いてしまうじゃないか。絶対に、出てこないって分かっているのに。もう…またこの人にやられた。
 退場のアナウンスを待つ間、パラパラと何かの挨拶のような雨が、スタジアムに少しだけ降った。

さよなら、風の秋まつり。



藤井風 アリーナツアーat大阪レポート↓

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