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読んでもらえる小説を書くには

 小説を書くからには、沢山の人に読んでもらいたい。多くの創作者はそう思っているだろう。

 そのための「小説の書き方」「もっと文が上手くなる方法」等、先達たちの教えは偉大だ。

 しかし、本当に必要なのはテクニックなのか?
ふと思い立ったので私なりに考えをまとめてみた。

 必要なのか?とは言ったが、まあ、当然テクニックは必要だ。しかし、まずその前に考えなければいけないことがある。

『自分が読者なら、どんな小説を読みたいか』である。
 皆さんは、小説あるいは本を読む時、なにを期待して読むだろう。
 私は、知識だったり、今まで感じたことのない感情を体感したい。という気持ちで読んでいる。
つまり、『本を読むからには、何か受け取りたい』のである。

 時は金なり、というが、時間は本当に貴重なものだ。創作界隈で度々、「小説は漫画に比べて閲覧数が伸びない!」と話題になる。それは、ひとえに小説が『時間を喰うコンテンツ』であるからだ。
 漫画は小説より短時間で読める上に、それが良いものかどうか、ぱっと見で判断しやすいのだ。

 つまり、読む人は『消費した時間に見合う価値のある何か』を受け取りたいのだ。
 それは時に知識であり、恐怖であり、喜びであり、悲しみである。主人公の体験を通して感じる冒険の記憶である。


 さて、では書き手としての考えに移りたい。
あなたが小説を書くとする。あなたの小説を読んだ人は、なにを受け取ってくれるだろう。

 言い換えると、『読み手になにを渡したいか』だ。
 ホラー小説であれば恐怖を。恋愛小説であれば恋の切なさを、ギャグなら笑いを、エロ小説なら「うわ!エロい!!」という興奮を。

 もちろん、そんなことを考えなくても小説は書ける。自分の思うまま自分の感情の発露として物語を書くのも立派な小説だ。
 しかし、それは自分のために書いた小説であって、人のための小説ではない。
 つまり、人に読んでもらえることは期待できないのである。

 自分のための小説はあくまでも自分の感情と向き合うためのものだ。だから深く考えなくても良い。しかし、『人に読んでもらうための小説』はそうもいかない。

 考えなければいけない。笑ってもらうにはどう書くか。泣いてもらうにはどう書くか。
 同じ意味の文章でも、言い回しや語順、使用する単語で読む人への伝わり方は変わる。
 全く同じセリフでも、どのタイミングでいうかで感じるものが変わってくる。

 とにかく考えるのだ。
 どこをどうすれば読んでくれる人が、自分の与えたいものを受け取ってくれるだろう。

 そしてここで初めて、『書き方講座』が必要になってくるのである。


 もしあなたが、一生懸命書いた小説が沢山の人に読んでもらえない、と落ち込んでいたならば、一度考えてみて欲しい。

 その小説は誰のために書いたものだろう。

 もしそれが、誰のためでもなかったり、自分のために書いたものなら、見てもらえなくても仕方がないのだ。
 それはあなたの大切な心の塊だ。閲覧数で価値が決まるものではない。心そのものだからだ。

 沢山の人に読んでもらえなくてもいい。
 あなたがそう思っているなら、もちろんそれで良い。
 それがあなたの小説だ。

 でももし、沢山の人に見てもらいたい、と思って書くならば、『読む人に、なにを受け取ってもらいたいか』を明確に考えてみて欲しい。

 読んでくれる人になにがなんでもその感情を届けてやると、いっそ殺意にも似た感情で書くのだ。
 そうして試行錯誤し、磨いて、研ぎ澄ませた小説は「絶対に面白いと保証するから読め!」と大声で叫びたくなるほど、キラキラと輝いていることだろう。



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