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Twitterで信頼の定義を変えるクリエイター

最近、自分ツッコミくまというキャラクターにハマっている。
LINEスタンプで人気を博し(月間MVPなど受賞多数)、丸っこくて白いくまが自分に自分でつっこむコメントがかわいくて、もともとかわいいもの好きの僕はメロメロになっている。グッズも集めているし、スタンプも全部購入。「前田から送られていくるスタンプはほぼ自分ツッコミくま」という知人も多い。

手書きを思わせる揺れのあるタッチが非常に特徴的かつシンプル。「線が揺れている時点でNG」と言った広告代理店的視点をあざ笑うかのように、世間的にも人気は高い。

自分ツッコミくまの快進撃は続く。LINEスタンプの売上だけではなく、
・大手企業とのコラボスタンプ
・グッズがバカ売れ
・カフェが大行列
・メジャー漫画誌での連載
・連載したマンガの単行本が予約段階で重版
・Twitterで漫画を配信し、派生キャラクターが誕生(モグラコロッケなど)
と大成功と言っていい状態。1人のクリエイターが作り出したキャラクターとしては、異例の成功を収めている。
現状、大手玩具ブランドとの連携やお菓子メーカーのパッケージになっていないにもかかわらずこの人気ぶりは、ビジネスとしてみても異例だろう。

自分ツッコミくまを生み出すクリエイターは「ナガノ」さん。本名なのか、苗字なのか、地名なのかわからないけどとにかく「ナガノ」さんなのだ。
Twitterアカウントのフォロワーは25万人超え。運用手法からも本人1人で管理されているようで、リプライに対する反応もよく、人柄まで伝わる神運用である。

https://twitter.com/ngntrtr

Twitterで配信されるのは、新しいスタンプのリリースや活動報告など広報的情報にとどまらない。特に人気なのは、コンビニスイーツや外食チェーンのメニューの食レポだ。

画用紙と思われしき1枚の紙に手書き(たぶん)で1商品を解説。食したときの感覚的情報を見事に表現する一枚絵は、公開されるなり一気に拡散されて、驚異の食レポ力とともに自分ツッコミくまのイメージが不特定多数の人へと共有されていく。

https://twitter.com/ngntrtr/status/1090583192854122496

さらに、新しい仕事(コラボスタンプやカフェ、連載など)が決まるたびに自分の言葉で「ありがたいです!」や「信じられません!」などと一人の人間としてファンに報告。これがまた感じがいい。
Youtuberと同じような「自分たちが育てたすぐそこにいるクリエイター」としてブランディングに成功している。趣味的にも職業的にも追いかけて行きたくなる。

SNSを使った表現活動は、吊るし上げられる可能性もある危険な手法だ。無自覚に社会悪を発信してしまうリスクは、誰にでもつきまとう。自分の言葉でファンに接していればなおさらだ。

しかもプロフィールの詳細はほぼ「自分ツッコミくまのひと」である。実態がない。有名コンテンツホルダーが関わっているわけでもない。それでも好感を持たれるのはなぜだろう。

リプライとのやり取りを見ていて気がつくのは、ファンはみんなナガノさんを信頼しているということだ。
イラストが定期的にアップされるわけではなく、雑誌や新聞のように同じフォーマットのものが一定したクオリティーで世に出てくるわけでもない。
それでも「ナガノさんならいいスタンプを作ってくれるだろう」「この人ならまた面白いものを書いてくれる」と、ナガノさんに期待している。

一昔前であれば、読者から信用を失って忘れ去られるタイプのクリエイターである。しかし、ファンは忘れることなくナガノさんを信用してコンテンツを楽しむ。そして消費する。そして、ナガノさんもそれに応える。

我々は「信頼」の定義を変える必要があるのかも知れない。

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