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「アオアシ」から学ぶキャリア教育:2

第2話 東京シティ・エスぺリオン

これは予想なのですが、東京シティ・エスぺリオンはFC東京というJリーグのチームを意識して描かれていると思う。(小林先生のコメントもあったような、なかったような。)

青井葦人は、福田と出会った後、その練習をずっと続けている。(73p)これは、第1回でも書いた「誠実性」がここでも描かれている。

ここで葦人にとって、人生の1つの岐路が提示される。福田監督の誘いに乗って、ユースのセレクションを受けるのか、地元の双海高校に中学校のチームのメンバーと一緒に進学するか。(78p)
そこには、セレクションを受けることを応援する兄の存在があり、(葦人にサッカーを教えた)その兄(アナザーストーリーも漫画となっております。)から、福田監督の経歴(Jリーグからスペインへ移籍。ケガをした後も海外のクラブを転々としてユースの監督として戻ってきたこと)が紹介される。

私自身が、FC東京のビッグフレームス(サポーター)なので、福田といえば福田健二選手を思い出します。(どこかに、小林有吾先生もそれを意識して描いたとあったように思います)

さて、青井葦人はセレクションを受けに、東京へ。セレクションの会場で、福田監督の義理の妹である一条花と出会います。葦人以外のいろいろなユースセレクション参加者を紹介してもらいますが、葦人の目に留まったのは、プロが使っている芝生のコートでした。

第1話でも書いたように、「経験の開放性」とは小さなチャレンジです。そして、人は心理的な安全基地がないと挑戦できないと言われてます。というのも、主に子育てや教育などで使われる愛着(アタッチメント=特定の人に対する情緒的きずな)という概念があります。この愛着(アタッチメント)には、<恐怖や不安を感じる危機的場面での確実な避難場所としての安全基地機能であり、もう一つは、危機がない時にもいつでも逃げ込める安全基地を感じつつ外界の探索をするという探索基地機能の両面>があると言われてます。(米澤好史『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』2015、福村出版 16pより引用)
セレクションという多くの人が緊張するであろう場面であっても、ポジティブなことを見つけ、そして送り出してくれた兄を思い出し、そこに進んでいくということは、キャリアにおける土台が必要なのです。

そもそも「キャリア」という言葉が労働や教育、あるいは福祉の場面でも見られるようになってますが、キャリアは単なる「仕事」ということでもありません。厚労省は「時間的持続性ないしは継続性を持った概念」として定義してます。(https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/07/h0731-3.html)簡単に一言で言えば、「キャリア」とは「人の生き方そのもの」とも言えます。なので、職務を支えている土台には、出生から労働可能となる時期までの間における心理的な発達や過程を無視できません。

そういった意味で、葦人は母子家庭に育ち、サッカーをするきっかけを与えて支えてくれる兄との関係によって、心身ともに「挑戦できる」状態であることも、実はストロングポイントでもあります。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、「就労準備性ピラミッド」という考え方を提示して、職務遂行という実際に働くためには、基本的労働習慣、対人技能、日常生活管理、健康管理というものが下層にあり、「仕事がうまくいかない」原因は少なくとも4~5層の中にあるのではないかと提起してます。(https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/hokkaido/Readiness.html
そう考えると、いまのところ青井葦人は「対人技能」に難がありそうですが…。

福田監督もユースのセレクションがなぜ、チームに必要なのかを語りますが、最後に「セレクションから必ず合格者が出るわけではない」(106p)と語るところで、第2話は終わります。

それでは、今回はここまでにしておきましょう。

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