渡辺浩弐さんが発表したショートショート数を調べてみた
最初に結論
渡辺浩弐さんによるショートショートは、少なく見積もって630作品は発表されていると言えます。
はじめに
作家・渡辺浩弐さん (note X(Twitter))が書いたショートショート作品数を調べてみました。
この記事は渡辺浩弐さんのファンが恣意的な基準で確認していったものなので、渡辺浩弐さん本人が認識している作品数とは異なると思われます。
もちろん公式なものでもありませんし、間違ってても責任はとれません。その点よろしくお願いいたします。
この記事は、2023/09/12までに発表されたものを確認したものです。これ以降ショートショート作品の発表があっても記事への追加はしない予定です。この日付までに発表されたショートショート作品が更に見つかったら、それは追加するつもりです。
不備などありましたら、この記事へのコメントか、筆者のX(Twitter)までお願いいたします。
ショートショートの定義
この記事では作品文字数とその作品が単独で完結している物語かの2点をもってショートショートであるとする。
例外的な作品については記事内で都度言及していく。
作品文字数について
星新一作品のうち、ショートショートとされている作品の最短作品と、最長作品を特定する。そして、その2作品の間に位置する作品はこの条件を満たすこととする。
この条件を用いる理由は「特定の作家が書いたショートショート数を調べるのは、結局のところ星新一が書いた1001余編の作品数と比べることにほかならない」ためである。
ショートショート数を調べることが星新一の作品数との比較である以上、その定義は星新一側に寄ったものであるべきであると考えた。
調べてみたところ最短と最長の作品に該当すると思われるものは以下の2作である。
前者はネット検索で調べた結果、これではないかと思われるもの。後者は『星新一ショートショート1001』全3巻(1巻 2巻 3巻)をhontoの収録作品一覧の項から各作品のページ数を調べ、最もページ数が長かったもの(2巻の1401-1450の計50ページ)。なお、2位は「殿さまの日」(2巻の1195-1231の計37ページ)。作品ごとの文体の違いにより一律にページ数=文字数とするのは乱暴である。しかし、2位と13ページの差があれば最長としてよいと判断した。
この2作は星新一公式サイト内でもショートショートとして扱われている。
横道にそれるが、「城のなかの人」が豊臣秀頼を主人公とした歴史小説であることも附記しておく。つまり、いわゆるSFの人である星新一作品のうち、歴史小説もショートショートとして扱われている。このことからもショートショートの定義にジャンルは関係ないと判断し、定義にジャンル要件は含まなかった。
星新一ショートショートのうち、この2作品が最短、最長であるとは限らない。可能性として以下のような作品のなかにこの文字数より短い/長いものがあると考えられる。
先の全集に収録された「1001作品」のあとに発表された作品
記事筆者が見つけられていない作品
今後出てくるであろう未発表作品
仮の閾値としてこの作品、文字数を扱っていることを了解いただきたい。また、これよりも短い/長い作品をご存じの方はぜひご教示いただきたい。
文字数には作品自体のタイトルは含んでいない。しかし、作品内の切れ目における節タイトルは文字として含んでいる(「城のなかの人」の節名「太閤」「秀次」「城」……は文字数に含んでいる)。
段落冒頭などに置かれたスペースは一文字として含んでいる。これは渡辺の作品にスペースを明確な一文字として扱っている作品(「この小説はおそろしいですか?」)が存在するというファンの立場ゆえのものである。
版面上の見映えのために使われたスペースは削除した上で文字数を計算している(「城のなかの人」内の和歌の上の句、下の句の前に使われたスペース計5文字、及び節名の前に使われたスペース各2文字は削除して計算している)。
ルビは一切ないものとして文字計算をしている。通常のルビはもちろん、仮に「とある魔術の禁書目録」という当て字が出てきても「とある魔術の禁書目録」で10文字に計算されている。
なお、星新一作品には中編小説(公式サイトによる区分)として30073文字の「宇宙の声」、49706文字の「まぼろしの星」が存在する。これは52552文字のショートショート「城のなかの人」よりも短いものであるが、この区分の違いは不明である。この記事では52552文字のショートショート「城のなかの人」を最長のショートショートとして扱う。
単独で完結している物語か
ストーリーが続いていく、いわゆる連載小説では各回の発表分が文字数条件を満たしていても、各回をショートショートとして認めない。
(なお先に述べた「城のなかの人」は公式サイトによると連載形式で発表されたものである。「分割連載された一作のショートショート」という存在は個人的には少し不思議に思える。この記事では一作を分割連載で発表された渡辺の作品はショートショートとしては数えないこととする)
また各回で物語が完結しているが、主人公が同一である連作構成の作品も各回をショートショートとは認めない。これは星新一による連作短編『ほら男爵 現代の冒険』の各話がショートショートとされていないためである。
連載作品と読切作品の境界はときとして曖昧である。この判断は記事筆者が行うしかない。
しかし「特定の作家が書いたショートショート数を調べるのは、結局のところ星新一が書いた1001余編の作品数と比べることにほかならない」以上、星新一や、その関係者、ファンが納得できるよう、判断に迷うものはショートショートとして計算しないこととする。
単行本化作品
「1999年のゲーム・キッズ」シリーズ (102作)
『1999年のゲーム・キッズ(上)』、『1999年のゲーム・キッズ(下)』収録作が101作。
単行本未収録作品が以下1作。
1995年のゲーム・キッズ
シリーズ合計で102作。
「2000年のゲーム・キッズ」 シリーズ(106作)
『2000年のゲーム・キッズ(上)』、『2000年のゲーム・キッズ(下)』収録作が102作。
単行本未収録作品が以下4作。
友達バー
器用な奴
基地外
ラブ・レター
シリーズ合計で106作。
「2999年のゲーム・キッズ」 シリーズ(100作)
『2999年のゲーム・キッズ(上)』、『2999年のゲーム・キッズ(下)』収録作が114作(114篇)。
うち、「シカの話」の第一章~第十三章はそれぞれが単独で完結しているとするのは難しいと判断。この13作(13篇)は除外。
「シズクダイヤものがたり」は架空の宝飾店の広告として作られたイラスト+文章であり、ショートショートではないと判断。この作品は除外。
シリーズ合計で100作。
「プラトニックチェーン」シリーズ(102作)
『プラトニックチェーン(上)』、『プラトニックチェーン(下)』収録作が102作。
シリーズ合計で102作。
「Hな人人」シリーズ(26作)
『Hな人人』収録作が26作。
シリーズ合計で26作。
「2013年のゲーム・キッズ」シリーズ(50作)
『2013年のゲーム・キッズ』収録作が49作。
単行本未収録作品が以下3作。
マチ★アソビのゲーム・キッズ
謎と旅する女
渡辺浩弐を告発する
「謎と旅する女」はウェブ上で公開された、インタラクティブな要素を含む読み物。ショートショートとするかは判断が分かれると思われる。この作品は除外。
「渡辺浩弐を告発する」は朗読劇の脚本として書かれたものである。この作品は除外。
シリーズ合計で50作。
「令和元年のゲーム・キッズ」シリーズ(31作)
『令和元年のゲーム・キッズ』収録作が31作。
単行本未収録作品が以下1作。
クロニクル
「クロニクル」はシリーズの世界設定をまとめたものであり、ショートショートではないと判断。この作品は除外。
シリーズ合計で31作。
「2020年のゲーム・キッズ」シリーズ(21作)
『2020年のゲーム・キッズ →その先の未来』収録作が16作。
単行本未収録作品が以下5作。
好きなことで、生きていく?
約束された神ゲーム
人間のふりをしたAIのふりをした人間のふりをしたAI
死ぬぞ
ブスマニア
シリーズとして発表されたものの、『2020年のゲーム・キッズ →その先の未来』以外の単行本に収録された作品はそちらの項で確認する。
シリーズ合計で21作。
「2030年のゲーム・キッズ」シリーズ(15作)
『2030年のゲーム・キッズ』収録作が15作。
なお、この単行本に収録された「2030年のゲーム・キッズ」が筆者が文字数を確認した渡辺浩弐作品における最長ショートショートである。紙書籍で88ページ分、37021文字。
シリーズ合計で15作。
「渡辺浩弐ホラー選集」(6作)
『渡辺浩弐ホラー選集』収録作が11作。
ここまでに確認した他の単行本と重複収録であるため、除外する作品が以下3作。
あなたに似ている
真説・謎と旅する女
ひきこもり・宇宙になる
他の単行本に収録されているが、連作短編のうちの一編であることから除外する作品が以下1作。
猿は猿を殺さない
判断に悩むため除外する作品が以下1作。(「@Run-City」の個人篇の小説版ストーリー全6話のうちの第2話が基になっている。全話を確認すると第1話と第2話は1話完結。第3話と第4話、第5話と第6話もそれぞれ連続した2話構成である。となると「@Run-City」の個人篇の小説版ストーリーは部分的に連載小説の形式であるとも言える。この構成のなかで「レイの話」を100%ショートショートであるとは言いがたいと判断した)
レイの話
単行本合計で6作。
「世にも醜いクラスメートの話」(17作)
『世にも醜いクラスメートの話 渡辺浩弐ホラーストーリーズ』収録作が17作。
単行本合計で17作。
「中野ブロードウェイ怪談」(26作)
『中野ブロードウェイ怪談』収録作が26作。
単行本合計で26作。
未単行本化作品
「エムノア M-Noah」(11作)
「ゲームシナリオは作家「渡辺浩弐」氏が手掛ける」という表現が公式から発せられている。作内のショートショートはすべて渡辺が書いたと仮定する。また、話名がつけられた作中作のみ数えることとする。
単独で完結しているとは言えないと判断し、除外する作品が以下3作。
クロニクル
ぼくの正体
わたしの正体
シリーズ合計で11作。
「最後の1行」(8作)
シリーズ合計で8作。
「READING × READING」提供作品(4作)
合計で4作。
その他独立作品(5作)
これは小説ではない
戴の大冒険
完璧少女計画 パーフェクトガールプロジェクト
そして船から船へ
ウィークデイ
参考
存在は確かだが、公式に発表されていないものなど。
『デジモンストーリーズ サイバースルゥース』サブクエスト原案(10作)
「渡辺さんには10本担当していただき、ゲーム中にはすべて収録されています」
『デジモンストーリーズ サイバースルゥース ハッカーズメモリー』サブクエスト原案(幾つか)
「今回も渡辺浩弐さんにサブクエストのシナリオ原案を幾つかお願いさせていただいておりますのでご期待ください」
「観光」(1作)
渡辺が書いたとされる「観光」という作品が検索エンジンから確認できる。作内のアイデアが、渡辺が以前語っていたものに一致している部分があり、渡辺の作品と思われる。渡辺はこの作品に公の場では言及していない。
ここまでに除外した作品(24~26作)
このリストでは除外したが、別の基準で数えればショートショートとされたかもしれない作品。
『2999年のゲーム・キッズ』の「シカの話」の第一章~第十三章の13作(篇)
『2999年のゲーム・キッズ』の「シズクダイヤものがたり」
『2013年のゲーム・キッズ』の「謎と旅する女」
『2013年のゲーム・キッズ』の「渡辺浩弐を告発する」
『令和元年のゲーム・キッズ』の「クロニクル」
『@Run-City』の個人篇の小説版ストーリー全6話(数え方によって4話~6話)
『M-Noah エムノア』の3作
ショートショートではないとする作品
ショートショート作品を数えるには、記事筆者がどこまで渡辺作品を把握しているのか(を記事読者に知らせること)も重要なことである。これらの作品以外の渡辺によるフィクションがあればご教示いただきたい。
前提として「フィクション以外の作品」「漫画作品」は、すべてショートショートではないとする。
長編小説・連載小説
Mの暗号
アンドロメディア
怪人21世紀 中野ブロードウェイ探偵 ユウ&AI
晴れときどき女子高生
吐田君に言わせるとこの世界は
iKILL2.0
死ぬのがこわくなくなる話
中野ブロードウェイ脱出ゲーム
M
ロールプレイングメール
みなごろしのすすめ
日月時男のひきこもり日記
ガン・キッズ
連作短編小説
BLACK OUT
iKILL ィキル
吐田家のレシピ
短すぎる文字数の作品
「ノベル実況」作品(「天空の密室」、「ドアドア」、「理想の女房」)
「Novelive」作品(「冷たい彼女」、「黙る彼女」、「例の、3つの願い」)
「ツイストーリー」作品
「バレンタインデーに」
まとめ
以上の作品数をまとめると以下のようになる。
630作 確実にショートショートと言えるであろう作品数
11作+幾つか 存在は確かだが、公式な形では発表されていない作品数
24~26作 数え方によってはショートショートとされるかもしれない作品数
記事冒頭には「少なくとも630作品」と書いたが、「多く見積もれば665~667+幾つかの作品」とも言えそうだ。
星新一作品は確認されているだけでも1138編が存在しているそうだ(リスト下部参照)。渡辺の600作品超も決して少なくない数だが、ここから更に500作品多く書かれているというのはショートショートの神様の神たる所以をみた思いである。
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