『7つの明るい未来技術 2030年のゲーム・チェンジャー』連載第4回を読んだ

小説家・ライターの渡辺浩弐さん(note Twitter)の新連載4回目が更新されたー!

今回発表されたのは第4回。4月18日に連載がまとまった単行本が発売するものの、4月30日でこの回の記事はクローズされる模様。内容確認したい人は今のうちに読んでおかなきゃだぜ。

以下、今までと同じく、本文に突っ込みをいれながらの感想文……にしようと思ったのですが、ほとんど自分語りになります。


今回のテーマは「NFT」。概念だけは広まりつつも、結局何ができるのかよくわからないやつです。

渡辺さんとNFTといえば自身の作品(「10年後の小説」)の執筆も含め、今までに何度か語られてきました。そしてその企画に私も参加しておいてなんですが、いまだにNFTの真価がわからない!

デジタルな作品を一点ものにするってことですが、基本的にその作品はNFTを所持していなくても楽しめるものです。今多く広まっているのは画像データにNFTが付与されているものでしょうけど、所持してなくても画像はダウンロードできちゃいます。

思うに「所持」という言葉が、現状似合っていないのでは。

今現在ではNFTを所持することのメリットって、自慢できる、その作品・作家さんを好きだとアピールできる、作者さんの認知があるかも、ある種の売名行為、などがほとんどではないかと考えます。

デジタルな資産を所有しています! っていうよりはスポンサー行為やネーミングライツの購入に近いのが現状なんじゃないかなーと。

渋谷公会堂がCCレモンホールになってもあそこは「渋谷公会堂」なんですよね(って書きつつ調べたら今は渋谷公会堂に戻ったあとさらに「LINE CUBE SHIBUYA」なんだそうで。)。

あるいは、「イッツ・ア・スモールワールド (提供:NIPPON EXPRESSホールディングス)」みたいな。結局「ディズニーのあれね」みたいな。

あとは、現状NFTの転売が盛んではないことから、所有者からの購入の交渉コストが高くなってしまっていること。NFTを持っていなくても楽しめるなら、売り切れてしまっている時にわざわざ誰かから買い取ってでもほしい、ってそもそも思わないんじゃないかっていう疑問もあります。

デジタルデータにNFTが付与されているってのは、構成として「デジタルデータ+証明書」なんですよね? そしてこの場合はどちらかといえば、証明書の方に価値があることを認めましょうといっています(と認識しています)。

だけど、これが「文豪の直筆原稿+証明書」だった場合は、価値があるのはやっぱり基本的には直筆原稿の方だと思うんですよね。超ラグジュアリーな社会階級だと証明書を発行してもらうために何億か払う、みたいなこともあるのかもしれませんけど。ファンとして「それ欲しい」の気持ち=価値を見出だすのは原稿の方だと思います。

あるいは、現状のNFTは普段使いのものというよりはコレクション的なものに使われていることが多いので、人と人との間での所有者移動が少ない。それをブロックチェーンで追える必要はあるの、とか。

このあたり矛盾というかすんなり納得できない部分が多く感じています。

っていうあたりが、いまの私のNFT観です。


さらにこの先の未来、僕たちがメタバース空間で暮らしていくことになったとしたら。そこではコンテンツだけでなく、あらゆるものが......服も、家具も、建物も、土地も......瞬時にしてコピーできるものとなる。
そういう世界でどうやって財産を所有したり、売り買いしたりするのか。

どういう文脈かがいまいちとりづらいですが、NFTが付与されたもの以外は違法コピーとして排除されたり、利用に制限がかかるシステム下であれば、「それならわかる!」となります。ネットゲームの限定品でチートで手に入れたものは削除されるとか。


当社のサイトはクレジットカードやペイパルで、日本円や米ドルでの決済も用意されています。またアップルペイやグーグルペイで、つまりスマートフォンからも簡単に購入できます。手続きとしては普通のECサイトを使うくらいの作業ですね。

これは素晴らしい……! 「10年後の小説」のときもこの機能ほしかった!


例えば記念写真をNFT化することで未来永劫この場面を残しておきたい、という気持ちをネットに焼き付けることができます。

これは面白いですね! いわゆるまとめサイトなどで「面白い画像大喜利」がされていてもNFTのブロックチェーンを辿っていくと大元の撮影者に遡れるとか。あるいは(渡辺さんの過去の言説ですが)「吉野家コピペ」は最初に書いた人が明確に判明しているので、もしも使用料を1回1円でも徴収できていれば彼は大金持ちだったはずだ、みたいな。

(とはいっても、拡散されていく画像、文章がオリジナルのまま拡散されていくことはないのでどこかでブロックチェーンを外れてしまう問題点もありそう。この点は技術的に対策可能なんでしょうか)


あるいは自分一人だけが命より大切と思っているようなもの、それらの価値までがネット上に永遠のものとして保管されるようになる。それだけでなく、場合によってはビジネスになっていく可能性がある、ということだ。

連載記事の終わりの部分。ここまで対談が続いていましたが「場合によってはビジネスになっていく可能性がある」という部分が、今回の本旨なのかなという気がします。

そういえば、そもそもはNFTはそれ自身が本物である証明にすぎなくて、売り買いよりも記録に残すということがメインの技術だった気がします。

なのでNFTの購入もデジタル資産の所有移動ではなく、現状は「私は正規流通でこれを買いました」という記録作りとしてのものと考えた方がいいのかなー。

「○○が好きです」という表明はインターネット上で多く見ますけど、その内容は千差万別です。「ツアー全通しました」から、「作品は全部買ってます」、「YouTubeで(海賊版を)見てます」までいろいろ。ブロックチェーンに基づく履歴が他人からも見れるようになれば、そのあたりもスムーズになりますよね。


第4回も楽しく読みました。でもやっぱり難しいね! 単行本収録部分ではもうちょっと具体的な例もあるといいな。

読んでいれば大抵の未来技術にもついていけるという評判の渡辺作品ですが、NFTはいまだよくわからないね!


渡辺さんはこの連載(と単行本版)『7つの明るい未来技術 2030年のゲーム・チェンジャー』にあわせて各テーマについてYouTube配信を始めました。

ハイテクノロジーをやわらかく話すといった内容で配信タイトルは「ハイテク夜話」。再生リストも作られているようです(非公開動画はすでに配信枠だけ確保してリストに入れてあるみたい?)。

すでに人工冬眠、デジタルツイン、ブレイン・マシン・インターフェイスの3回がアーカイブ視聴できるので興味ある方は是非!


あとあと、渡辺浩弐さんの無料公開されている小説がまとまっているページを見つけたので、とりあえずブックマークだけでもしておくといいよ! ショートショートなので1作5分の暇潰し! しかも100作以上あるみたい!!

渡辺浩弐さんデータベース 試し読み可能作品


今回掲載の脱字疑惑など。

連載発表当時にはなくていつのまにか追加された、冒頭の「この連載が書籍化されます!」のなかのISBNが別作品のISBNです。

今回は単行本内容とは関係ないからオレ的にはセーフ!


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