『7つの明るい未来技術 2030年のゲーム・チェンジャー』連載第6回を読んだ

小説家・ライターの渡辺浩弐さん(note Twitter)の新連載6回目が更新されたー!

今回発表されたのは第6回。そして4月18日より連載がまとまった単行本が発売中! 4月30日でこの回の記事はクローズされる模様。単行本を買う前に内容確認したい人は今のうちに読んでおかなきゃだぜ。

以下、今までと同じく、本文に突っ込みをいれながらの感想文です。


今回のテーマは「遺伝子検査」。お酒に弱いとかアレルギーとかそういうのがわかるやつですね。わかってしまったら便利な反面、進める道が決められてしまうようなそんな怖さを持ったテーマです。


価格はフルパックで税込み3万2780円。

リンクもされているので少し覗いてみましたが項目がめちゃくちゃ多いですね。いわゆる病気や健康関係の項目から勉強(数学能力、英単語の読み書き能力)、性格にいたるまで。

3万円ちょっとだったら、高校を卒業した身内の子に受けさせるのもいい気がします。卒業祝い3万円をあげるよりは確実にひとつの指針になりそう。

物事にたいして、好き嫌いと向いてる向いてないの基準があるとするなら、嫌い×向いてないの分野は選ばないようにして生きていくと少し人生が楽になりそうです。

あるいは、その分野を避けるための努力であれば、瞬間的には辛くても納得感をもって頑張れるのではないでしょうか。


一方で性格、例えば忍耐性といった項目については遺伝要素はおおよそ3割と言われています。

遺伝以外の育ってきた環境(なのかな?)も性格に関係するんですね。3割。絶対的な割合ではないけれど、結構大きなものです。


違いがあるということしかわかっていない、実際にはどの機能に関係しているかわからない部分もあって。そういう部分もそのままデータを読み取り、保管しています。それが後になって研究が進んだり有意なレベルの統計数値が現れたりして、何かの特徴に関係していると判明したら、その時点でご報告できるんです。

この部分、とっても面白かったです。DNAの各箇所が共通しているサンプル群があれば統計的にわかっちゃうんですね。DNAの機能ってゲノム編集やら何やらで実験して比較してで確かめているものだと思っていましたが、統計からも推測できるものなんだ。


誤解を恐れずに言えば、遺伝子診断は、かつて宗教や占いが担っていたところまでを引き受けていく可能性があると考えています 。

ここも面白かったです。かつて渡辺さんが占いを受ける人は無防備に個人情報を提出するというニュアンスのことを書いていた記憶があります。それはもちろん正確な情報をもとに当たる占いを期待しているからなのですが、遺伝子検査も受けたい人=正確な情報を欲しがっている人、なのでその点も似ているなーと思ったり。言ってみればDNAなんて究極の個人情報ですからね。


今のところは医師の診断とみなされるレベルのものは返していません。それは医療行為に踏み込むことになりますから。疾患によっては可能性というより確実性といえるところまでわかることがありますが、残念ながらお客様にお伝えできないものもあります。

この点は「そうなのかー」と少し残念な気持ちも。逆に言うとお医者さんが大本にいるサービスならば告知可能になりうるってことなんでしょうか。そうならば、そのうち出てくるのかな。

極端な話で言えば、明らかに平均年齢が短いグループがあるならばそのグループは払う年金が少なくてもいいはずですし、変えられないものであればあるほど、知っておくべきものである……というふうになっていくといいな。「急にお前来年辺り死ぬから」って言われたら困っちゃうのは間違いないんだけど!


マッチングサイトからの相談も頂いていまして、ここでもお酒が飲める飲めないなどの情報は有用なのではないかという提案をしたことがあります。あるいは忍耐力、外向性、開拓性といった生まれつきの性格も重要だと思います。

ただどういうマッチングがうまくいくかは、誰かが考えるのではなく、成功事例のデータから策定していくべきでしょうね。

マッチングにDNAが関わってきたら面白いですね。DNAも属性もゲームのパラメータのように、最終的には数値で表記できるものだと思っています。なのでお見合いを勧めてくるおばちゃんが絶滅する頃にはこのポジションをコンピュータが成り代わるのかなーとなんとなく思ってました。まだもうちょっと時間かかるのかな。


お酒に弱い人はコーヒー好きな人が多かったり、お酒に強い人が太る原因は圧倒的に揚げ物だったり

地味に知らなかったことが出てきた! お酒が弱い人はコーヒー好きが多い!

お酒飲む人が太るのはつまみを食べるから。お酒好きでも、お酒だけを飲んでいる人は太らない、っていうのは昔タモリが言ってました。本当なんだ。


少し前に「親ガチャ」という言葉が流行った。

まだ、実践にはデータが不足していると思われますが、このまま遺伝子検査サービスを行う会社が続いていけば、親子代々にわたってDNAデータが蓄積されていきます。そうなったときにはこの人と結婚したら、こんな子供が産まれます、ってデータも揃ってきますよね。もっと言えば理想の子供を産むためにはこういう配偶者を見つけましょう、ってことになりそうです。もし配偶者同士の愛はなかったとしても、お互いの理想の子供像が一致していれば結婚へ、なんて未来も待っているのかも。

親ガチャと言われることはあっても、子ガチャは百パーセント成功するようになるんでしょうかね。


しかし大事なことは、どんなカードにも活かし方はあるということだ。知った上でブラフを効かせることもできる。組み合わせ次第で化けることもある、ハイカードが最後の1枚でロイヤルストレートフラッシュになることも、ある。

組み合わせというのも、もしかしたら自分一人で完結する必要はなく、チームのなかのカードを合わせて良い手を出せればいいのかも。

しかしそれ以前に、結果を出すためなら相性がよくない人とでも組める、能力が高くても相性が悪い人なら組みたくない、みたいな部分もDNAレベルで決まってたりするんでしょうか。あたし、後者よりだわ。


という感じの「遺伝子検査」回でした。

遺伝子データが完全に解明された世界の物語『M-Noah』に近づいているなーと感じました。(『M-Noah』のメインストーリーは渡辺さん執筆)

『M-Noah』は『アンドロメディア』、『アンドロメサイア』(『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』)に続く『アンドロジニアス』との関連が示唆されている作品です。もしかしたらこの遺伝子検査回が『アンドロジニアス』の予習になるのかも?

『M-Noah』は全人類の遺伝子バンクも完成した世界です。ちょっと話はそれますが、DNAデータって個人情報にならないのと思って調べたら、現在の日本の法律では「生存する個人の情報」じゃないと個人情報にはならない模様。死んだ人のDNAデータは個人情報にはならなそうです。

でも『M-Noah』世界だとDNAデータから人をよみがえらせることも可能なんだよな。その場合はどうなるのかしら。


次回は最終回「AI/ロボット」。すでに発売されている単行本では全文を読むことができます。ゲームのAIから始まって哲学的な話まで進んでいきました。

終盤は明らかにとある渡辺作品ともリンクした話になっていき……という感じで面白く読めました。


渡辺さんはこの連載(と単行本版)『7つの明るい未来技術 2030年のゲーム・チェンジャー』にあわせて各テーマについてYouTube配信を始めました。

ハイテクノロジーをやわらかく話すといった内容で配信タイトルは「ハイテク夜話」。再生リストも作られているようです。

すでに人工冬眠、デジタルツイン、ブレイン・マシン・インターフェイス、NFTの4回がアーカイブ視聴できるので興味ある方は是非!


あとあと、渡辺浩弐さんの無料公開されている小説がまとまっているページを見つけたので、とりあえずブックマークだけでもしておくといいよ! ショートショートなので1作5分の暇潰し! しかも100作以上あるみたい!!

渡辺浩弐さんデータベース 試し読み可能作品


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