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RWA取引はどこまで進化したのか - 多種多様な資産をトークン化する強み(コラム)

ブロックチェーン技術とWeb3の発展に伴い、デジタルの世界と現実世界の境界線が曖昧になってきています。その中で特に注目を集めているのが、RWA(Real World Assets、リアルワールドアセット)です。

RWAは、現実世界の資産をブロックチェーン上でデジタル化し、新たな価値と可能性を生み出す革新的な概念です。RWAの登場により、ブロックチェーン技術は実物資産・無形資産にも適用され始めました。そこで今回、RWAの最近の動向を掘り下げ、その可能性と課題について探っていきます。


RWAの基本概念と代表的な商品

RWAとは、現実世界で価値がある有形・無形の資産をブロックチェーン技術でトークン化したものを指します。トークン化により、従来は分割や取引が困難だった資産も、容易に分割・取引が可能となります。例えば、高額な不動産や美術品の一部所有権を、トークンという形で保有することが可能となります。

その他にトークン化可能なRWAの例としては、自動車、酒、貴金属、コレクターズアイテム(収集品)などの物理的資産から、株式や債券などの金融資産、宿泊施設やスキー場などの利用権、著作権等の知的財産に関する権利などの無形資産まで多岐にわたります。

トークン化可能なRWAの例

資産をトークン化する方法とメリット

RWAにおけるトークン化とは、現実世界の資産の所有権をブロックチェーンのトークンに変換することを指します。これはスマートコントラクト上で、ERC-20やERC-721などのトークン規格や現実世界のオフチェーンデータを参照するオラクルを利用し、RWAトークンの裏付け資産の検証等のプロセスを経て実現します。なお、その他の暗号資産トークンと同様に、ロックアップ期間や投資家のための特定の要件などの機能をプログラムすることができます。

ブロックチェーン技術を活用することで、RWAは以下のような利点をもたらします

■流動性の向上
不動産や美術品のような伝統的な資産は、迅速な売買や取引が難しいため、取引量が少ないことがあります。これらの資産をトークン化することで、取引可能な小さな単位に分解することができ、一般的に流動性の低い資産にもアクセスできるようになります。

■グローバル市場へのアクセス
居住地に関係なく、グローバルに取引できるため、地理的な障壁を取り払い、資産のオーナーに新たな市場を開きます。また、ユーザーはインターネットにアクセスできる場所ならどこでも、投資可能となります。

■透明性とセキュリティ
ブロックチェーン技術により、全てのトランザクションの透明性と不変性が確保されるため、不正のリスクが軽減され、信頼性が高まります。資産の所有権やトランザクションの履歴の確認も容易です。

■分散化
投資家は従来の金融商品をトークン化することで、ポートフォリオを多様化し、より幅広い資産クラスへアクセスすることができます。

■コストの削減
ブロックチェーン技術を活用することで、仲介者を排除し、コストを削減できます。

RWAのデメリットと課題

RWAのトークン化は、国際的な投資を容易にし、効率的で費用対効果の高い手段を提供します。しかし、この革新的なアプローチには法的な課題が伴います。各国の規制環境が異なるため、2024年8月現在、ブロックチェーン上の所有権に関する統一された法的枠組みが存在していません。これは国際取引において複雑な状況を生み出す可能性があります。

さらに、国内の議論においても課題があります。例えば、暗号資産と従来の実物資産では税制が異なる場合が多く、投資家はこの違いを十分に理解し、適切に対応する必要があります。これらの法的・税制的な複雑さは、RWA投資を検討する際に慎重に評価すべき要素となります。

また、RWAはその価値の基盤を現実世界の資産に置いていますが、これは両刃の剣となり得ます。担保となる実物資産の価値が安定性をもたらす一方で、万が一その資産に重大な問題が生じた場合、トークンの価値も連動して大きく影響を受ける可能性があります。

例えば、担保資産が著しく減価したり、法的問題で凍結されたりした場合、関連するRWAトークンの価値や流動性が著しく低下する、あるいは最悪の場合、償還不能となるリスクが存在します。このような資産連動型のリスクは、RWA投資において常に念頭に置くべき重要な事項でしょう。

RWAプロジェクトの例

RWAには多くの課題はあるものの、暗号資産業界で急成長しており、DeFi(非中央集権金融)情報サイト「Defillama」のデータによれば、2024年7月24日現在の預入資産額は約1兆円にも上ります。また、マッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、RWAの市場規模は2030年には約320兆ドルに達するという予想もあるなど、将来の大きな成長が見込まれている分野です。

RWAへの注目度が高まっている背景には、DeFiプロトコルを通じたアプローチがあります。DeFiプロトコルは、ユーザーの資産として主にステーブルコインを活用し、金や国債、社債といった伝統的な投資商品にアクセスしています。

この動きの具体例として、PAXOS(パクソス)のPAX Gold(パックス・ゴールド)が挙げられます。PAXGトークンは、ロンドンのLBMA(ロンドン貴金属市場協会)が認定した保管庫で厳重に管理された金を裏付けとしており、1トークンが1トロイオンスの金に相当します。これにより、投資家は金の所有権をデジタルで保有しつつ、その価値変動の恩恵を受けることができます。そのため、金への投資に興味はあるものの、現物の保管や管理に伴う煩雑さを避けたい投資家にとって、PAX Goldは選択肢の一つとなっています。

また、Ondo(オンド)は米国財務省債券(米国債)をオンチェーンでトークン化しました。Ondoでトークン化された米国債は、Flux Finance(フラックスファイナンス)のようなレンディングプラットフォームで担保として使用でき、保有者はこれを利用して流動性を高め、レバレッジをかけたり、他の場所で収益を上げたりすることができます。

さらにOndoは、短期の米国債と銀行需要預金で過剰担保された、米ドル利回りトークンUSDY(テザ―)及び、USDYのリベースバージョンで1ドルへの一貫したペッグを維持するmUSD(Mantle USD)も発行しました。USDYの保有者は、原資産から生成された利回りを償還額の増加(トークンの累積)という形で受け取ります。また、USDYとmUSDを自由にスワップ(交換)できます。

更に2024年8月現在、テストネットを実施中のPlume Network(プルーム・ネットワーク)は、RWA専用の初のモジュラー型レイヤー2ブロックチェーンとなっています。資産のトークン化とコンプライアンス機能をブロックチェーンに直接統合し、RWAプロジェクトの展開を簡素化します。資産発行者がRWAプロジェクトを効率的に展開できるだけでなく、法定通貨からトークンを購入し、直接Plumeチェーンに資産を移す機能などを有し、投資家も効率的に資本を投入できるようになっています。

日本におけるRWA

日本においてもRWA導入の取り組みが実施されています。2020年5月施行の改正金融商品取引法により、ブロックチェーン技術によって株式や債券などの有価証券をデジタル化したセキュリティ・トークンを「電子記録移転有価証券表示権利等」と規定し、金融商品取引業者や登録金融機関で取り扱いが可能になりました。主にコンソーシアム(共同企業体)型のブロックチェーンを活用し、法律に配慮した上で運用されています。

また、草津温泉旅館などの観光施設もセキュリティ・トークンを用いて投資対象とし、人気を博しています。

RWAは、Web3と現実世界を橋渡しする革新的な概念です。その可能性は計り知れませんが、同時に技術的・法的な課題も存在します。RWAの発展は、より包括的で効率的な金融システムの構築に寄与する可能性を秘めています。Web3エコシステムにおけるRWAの重要性は今後、更に増していくでしょう。


制作:株式会社Kudasai

株式会社Kudasaiは、2020年に創設された日本最大級の暗号資産コミュニティ「KudasaiJP」を起点とし、株式会社化されました。株式会社KudasaiはWeb3企業のみならず、Web3に関わる全てのプロジェクトや企業の成長を支援する企業です。ブロックチェーンスタートアップの計画・開発やアドバイザリー、コミュニティ拡大まで、多面的かつ包括的な成長支援ソリューションを提供しています。

「セキュリティ・トークン」の概要や技術、法整備など、基礎となる知識を盛り込んだ動画のWeb3教育コンテンツは、AI・デジタル人材育成プラットフォームを展開する株式会社zero to oneのプラットフォーム上で展開する予定です。提供を開始する際には、noteなどを通じてご案内いたします。