村山茂樹

村山茂樹 元長崎県北高来郡森山町郷土資料館学芸員 インベントリ・リサーチ代表 千葉大…

村山茂樹

村山茂樹 元長崎県北高来郡森山町郷土資料館学芸員 インベントリ・リサーチ代表 千葉大学理学部生物学科卒業 九州大学大学院理学研究科海洋生物学専攻修士課程修了 北海道大学大学院生態環境科学専攻博士課程満期退学 ライフワーク 微生物と動植物の相互作用の理解 人類史の総合的理解

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受験教養からその先へ―世界史の教科書教養から真の市民教養へ―(3)第2回人類の進化2

現生人類Homo sapiensは、登場して7万年前に第一回目の飛躍、そして出アフリカした後2万年くらい前に第二回目の飛躍を起こしました。従来人類の飛躍というと、農耕牧畜の開始による生産経済のはじまりが注目されがちでしたが、実はそれに至る二段階の飛躍があったのです。いったいそれは何だったのでしょうか。

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    • 受験教養からその先へ―世界史の教科書教養から真の市民教養へ―(2)第1回人類の進化1

      世界史の教科書の記述は人類の進化から説き起こされています。人類の進化史については今の教科書はかなり現代の自然人類学の研究に沿ってきていますが、人文系の専門教育を受けてきた人の多くが生物の進化についての専門知識に乏しく、故に通俗的な進化理解に引きずられた解釈で教科書を読解しがちです。歴史学の専門教育を受けた教員でも、この辺の理解が十分ではないことが少なくないのではないでしょうか。この問題を考慮して、歴史教科書に記されている人類の進化の記述をどう解釈するのが妥当か、有料部分で公開

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      • 受験教養からその先へ―世界史の教科書教養から真の市民教養へ―(1)プロローグ

        歴史学など現代の実証系学問のドグマの枠組みの多くは19世紀に形成されました。しかし、そうした枠組みの妥当性がだいたい1970年代以降に問い直されるようになり、その成果がだいたい2010年前後に急速に花開いて、今実証系学問のみている地平が大きく変貌してきています。 しかし、市民教養としてセット商品化されているものの多くが学問の古いドグマの尻尾を引きずっているのが現状です。また、学校で習う教科書の記述も、順次新しい学問の風景を取り入れつつあるものの、定説化してからある程度時間が

        • ヨーロッパの三重構造モデル

          ヨーロッパの三重構造モデル https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150305/438058/ 日本における人間集団形成モデルは二重構造モデルで、ヨーロッパにおけるそれは三重構造モデルである。 つまり、日本列島では最終氷期の旧石器時代、約3万7千年前に大陸から基層になる狩猟採集民が移動してきて定着、やがて最終氷期末期の1万6千年前に狩猟採集と園耕的植物栽培を組み合わせた縄文文化を発展させ、そこに紀元前10世紀末からユーラ

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        受験教養からその先へ―世界史の教科書教養から真の市民教…

          吸汁性昆虫は何を食べているのか

          私が微生物利用昆虫の食物選好性と共に強い関心を持っているのが、吸汁性昆虫の食物選好性の問題なのだが、これまで『維管束液食者』の中に『導管液食者』と『篩管液食者』があるというような表現を多用してきた。しかしこの表現も、植物生理学の基礎的な知見から眺めると、必ずしも正確ではないのである。 動物の体液が上皮によって外界から遮蔽された内側で血管系とリンパ系を通して循環する組織液系と個々の細胞内に孤立した原形質液系の二相構造によって成立しているとみなすなら、植物の体液は三相構造をなし

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          コットンと食用油と戦争と

          終戦の日には読んでもらいたい怖い怖い真夏の怪談 最近の歴史学では『第0次世界大戦』とも呼ばれている日露戦争で世界の風景は一変した。この戦争は無煙火薬が本格的に実戦投入されて最初の大規模な戦争であり、この戦争以降、農業ビジネスは兵器産業と固く結び付くこととなった。無煙火薬の素材はニトロセルロースとニトログリセリンであり、前者は綿花、後者は植物油から製造されるからである。畑から無尽蔵に弾薬用の火薬が生み出される時代が来たのだ。 農業は食糧生産によって人間の死命を制するのみなら

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