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缶コーヒー

「あんたが淹れたコーヒーの方が美味しいんだろうけどさ、まあ飲んでよ」
去り際に渡された缶コーヒー。そんなやりとりがあるからこの仕事は楽しい。

 お客様からの頂き物は色んな形がある。ありがとうの言葉から、野菜、お菓子、チップと、気持ちの表わし方は人それぞれ。私たちはそれをお客様満足度の物差しと見ている。
 お客様をさらに喜ばせるコツは、素直にいただくこと。
「いやいや、そんな気を使わずに!」なんて野暮な事は言わずに
「やった!これ好きなんですよ。ありがとうございます。」と、お年玉をもらった小学生のように喜ぶ。実際こちらも嬉しいのだから演技ではないが、少しだけ盛る。こうすると、差し出してくれた相手も気持ちがいい。

 そんな、サービスの対価にプラスαされたコミュニケーションが、会話のきっかけになり心の扉を開く。通じ合う事が出来たなら、次の機会にはもっと会話を楽しめるかもしれない。自ら望んで行く訳ではない通院に、少しだけ彩りを添えられたなら、ケアドライバーとして嬉しいことはない。

 先日、私がコーヒーの資格を持っているのを知ったお客様から缶コーヒーをいただいた。「あんたが淹れた方が」なんて言わないでください。この缶コーヒーには、あなたと楽しく会話出来たという付加価値が詰まっていて、私が専門知識で淹れたものの3倍は美味いですから。


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