見出し画像

頼られる条件とは

「もし私なら、自分が産んだのだからと、誰かに頼ることをためらってしまうかもしれない」
 母が言ったこの言葉が印象深い。私はその言葉を、その世代の母親達が社会に背負わされた十字架のように感じてしまった。

 この日は、医療的ケアが必要なお子さんを介助しているご家族へ、ごせん介護タクシーとして何か出来ないかを話し合っていた。私は、喀痰吸引の資格をとり、通院の付添いを代わることが出来ないかと考えた。お子さんが病院に行っている数時間だけでも、ご家族を介助から離す時間ができればと思ったのだ。しかしその提案をしたところ、母から前出の意見を聞く。

 もちろん母も、積極的に手助けをしたい気持ちは私と変わらない。しかしサービスを作ったとして、それで声が掛かるかというと、そうでは無いという話だった。

 自身の子育て経験を当事者に重ねたその言葉には、子供ながらに深い愛情を感じた。しかし同時に、その時代の母親達が抱えていた重圧も感じ取った。

「家族なんだから、母親なんだから、あなたの子供なんだから」
誰からでもなく、社会から押し付けられる「母の役割」。それが女性たちを苦しめて来たことは周知の事実だ。

 改めて、私たちが出来ることはなんだろう。
 それは必要なサービスを用意することだけではなく、「この人にならお願いできる」と安心してもらうことだ。医療的ケア児に関わらず、高齢者の介護についても同じで、一人で責任を抱えてしまう人がいたなら、ごせん介護タクシーの前では、その重い荷物を下ろしてくれるような、そんなタクシーで居なければならない。

 私の提案は一旦見送りになったが、自分たちの心構えを話し合えた良い会議となった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?