価格戦略で成長を加速させる:Miro、Splunk、Loom、OpenAIの挑戦 SaaStr24から
AIサミットのステージで行われた「成長、収益、利益を促進するための価格設定とパッケージ化を活用する方法」に関するパネルディスカッションでは、Miro、Splunk、Loom、OpenAIのリーダーたちが、自身の経験を元に価格設定に関する興味深いエピソードを共有しました。それぞれの企業が、ビジネスの成長段階や市場の成熟度に応じてどのように価格設定やパッケージ化を調整してきたかについて話し合ったのです。
Miroの価格設定および収益化責任者のAkshay Sharma氏は、Miroが初期段階でどのようにしてユーザーが真の価値を感じる瞬間を見極めたかを語りました。彼らは、複数のユーザーが一つのMiroボード上で協力することで、初めてMiroの価値が本当に伝わることを発見し、そのため、最初に「有料プランでは最低でも5ユーザー」という設定をしました。これが、ユーザーに価値を感じさせるための戦略的な決断であり、収益最大化が最優先ではなく、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)を重視していたことがうかがえます。その後、プロダクトが成熟するにつれ、セキュリティ機能を求める大企業向けに「ビジネスプラン(最低20ユーザー)」を導入。ここでも短期的な利益追求よりも、長期的な顧客価値を重視していたことがわかります。
一方で、OpenAIの成長責任者Alison Harmon氏は、AI市場の急速な変化に対応するために、価格を頻繁に見直す独自の戦略を説明しました。Harmon氏によれば、OpenAIは新しいモデルをリリースするたびに、それが改良されるたびに価格を下げており、市場全体のAIの採用を促進することが目的です。通常、価格が向上すれば価格も上がると考えられがちですが、OpenAIは逆に価格を下げることで、より多くの企業や顧客にAI技術を利用してもらうことを目指しています。この戦略は、AI市場の特異性に応じたものであり、一般的なビジネス戦略とは一線を画しています。
Loomのプロダクト責任者であるJanie Lee氏は、実験を行うかどうかの決定プロセスについて述べました。Lee氏は、実験の目的が「新しいプロダクトやパッケージが市場に適しているかどうかの検証」なのか、それとも「既存の人気パッケージに大きな変更を加えるリスクの軽減」なのかによって、実験方法が異なると説明。特に既存のパッケージの変更は、売上に直接影響を与えるため、慎重に行う必要があると強調しました。
SplunkのVPであるCarsten Holm氏は、南アフリカで価格実験を行ったエピソードを披露しました。英語圏の市場で、失敗した場合にも大きな影響が出ない場所として南アフリカを選び、そこで得た知見を元に他地域で展開を進めるという戦略です。彼の発言は、価格設定がいかにデリケートな問題であり、一度公開した価格を変更するのが非常に難しいという現実を反映しています。
このパネルディスカッションは、価格設定が単なる数字ではなく、成長や顧客満足度、そして長期的なビジネス成功を左右する重要な要素であることを強調していました。各企業が直面した課題とその解決策は、多くのスタートアップや成長企業にとって有益な示唆を与えたことでしょう。