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低炭素技術が気候目標達成の鍵に:日本における多様な技術の役割


地球温暖化を2℃以下に抑えるためには、再生可能エネルギーをはじめとする既存の技術だけでなく、さまざまな低炭素技術を大規模に導入する必要があります。パリ協定の1.5℃目標への勢いがやや鈍化しているものの、ネットゼロを目指す取り組みが止まることはありません。これからの数十年にわたり、低炭素技術が主導する新たな時代が到来するでしょう。

多様な技術が必要な背景

気候変動への対応は複雑であり、一つの技術だけではなく、複数の技術が相互に補完し合うことで、持続可能な未来が実現されます。特に、日本においては、エネルギー資源の限られた状況の中で、低炭素技術の導入が欠かせません。当社の最新の技術アウトルックでは、243の技術が10のテーマに分類され、それぞれが異なる段階で開発されています。これらの技術が今後、エネルギー転換を加速させる可能性があります。

既に市場を変革している技術

ランキングの上位には、既に市場で注目を集めている技術が含まれています。たとえば、輸送分野では電動車(EV)や電動バス、急速充電インフラなどが急速に普及しつつあります。電力分野では、固定式洋上風力発電やクリスタリンシリコンのp型およびn型太陽電池が将来の太陽光発電の主力となるでしょう。また、短時間のエネルギー貯蔵においては、リチウムイオン電池が他の競合技術を大きくリードしています。

発展途上の技術と課題

電力網やエネルギー利用に関するイノベーションと投資は、引き続き大きな焦点となっています。中でも、開発段階にある「ダイナミックラインレーティング(DLR)」は、電力網の容量をリアルタイムで増強する技術であり、再生可能エネルギーが電力システムを支配する中で、その重要性が増しています。

一方で、カーボンキャプチャー(CCUS)は、政策の支援や石油大手の関心を背景に、着実に進展しています。しかし、水素技術は、プロジェクトの実行におけるコスト上昇や輸送の課題、消費の進展の遅さなどにより、昨年から順位を下げました。それでも、長期的には水素が産業の脱炭素化に重要な役割を果たすと信じています。

今後の可能性と課題

小型モジュール炉(SMR)は、複数の設計が登場し、1ユニットあたり最大300 MWの容量を持つものが開発されていますが、高い資本コストや燃料供給の制約(高濃縮低濃度ウラン)、そして運転許可取得の難しさなどが課題となっています。

また、ナトリウムイオン電池や全固体電池は、リチウムイオン電池に代わる有望な技術として注目されていますが、普及にはまだ時間がかかりそうです。技術性能とコストのバランスをどう取るかが課題であり、エネルギー密度においてはリチウムイオン電池が優れていますが、ナトリウムイオンや全固体電池は安全性が高く、長期的にはコストが低減する可能性があります。

日本における展望

日本は、再生可能エネルギーの導入を進める一方で、これらの新興技術の発展にも積極的に関わるべきです。多様な技術が集約されることで、持続可能なエネルギー転換が実現し、経済的な成長と環境保護が両立する未来が開かれます。日本のエネルギー戦略には、このような革新技術を積極的に取り入れ、世界に先駆けた低炭素社会の実現を目指すことが求められます。


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