暮れ行く星空

歳をとった

祖父ちゃんが死んだ歳に近づいてきた
ただ昔の年寄りは今よりずっと老けていたように思う
祖父ちゃんはビルの防水工事の小さな会社をやっていて
2月の寒い日に秩父の現場に行って帰宅して
梅酒を造るホワイトリカーという安焼酎に氷砂糖を入れて
一口二口飲んだところで様子がおかしくなった
(祖父ちゃんはケチ、よく言えば質素であった)
高校1年だった僕が最初に祖父ちゃんの異常に気付いた
視界がおかしくなったようでメガネをかけたり外したりして
レンズを拭いて椅子から立てないようだった

救急車が来た
脳梗塞だった
40日苦しんで死んだ
当時モルヒネを使えるのは一部の金持ちだけだった

うちには父母は離婚していなかった
ケチな祖父ちゃんだったが僕に6万もする無線機を買ってくれた
祖父ちゃんの会社に無線機をとりにいくと
電話番の女子社員がいた
子どもながらピンときた
こんな小さな会社に電話番なんかいらない

その人のことは祖母ちゃんには言わなかった
僕と祖父ちゃんだけの秘密だ

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