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VRと現実をつなぐ場所-Virtual Photography Showcase 2024

恵比寿駅から歩いて6分、弘重ギャラリーの地下に降りると、そこは仮想現実とつながっていた。Virtual Photography Showcase 2024、4月30日から5月5日まで開催された写真展だ。仮想現実で撮影した写真が展示されていた。

写真の舞台となっているのはVRChat、仮想現実の世界では馴染の、何十万人もの人が集まるソーシャルVRだ。VRChatには10万を超える世界が広がる。美しい世界、怖い世界、可笑しな世界と多様だ。

Virtual Photography Showcase 2024では、そんな世界を舞台に、バーチャルフォトグラファー、VTuber、クリエイターなど6名が撮影した作品が展示された。

仮想現実と写真

仮想現実の写真とは?と思う人もいるだろう。仮想現実では、VRゴーグルによる左右の目の視差で、現実と同じ見え方が再現される。現実との違いは、見えるものがコンピューターグラフィックスというくらい。現実と同じようなもう一つの世界だ。

この世界には、現実と同じく写真を撮る文化がある。きれいな風景、友だち、自撮りなどの写真を撮る。もちろんカメラも仮想。虚空からカメラを呼び出し、手に持って撮影する。

現実の世界に写真家がいるように、仮想現実にも写真家がいる。構図を練り、瞬間を切り取り、色彩を洗練し、作品へと昇華させる。それがバーチャルフォトグラファーと呼ばれる人たちだ。

多くの場合、バーチャルフォトグラファーは撮影した作品を仮想現実やWebサイトに掲載する。Virtual Photography Showcase 2024は、そのような枠を飛び出し、仮想現実の写真を現実の空間に展示した写真展だ。

その狙いはどこにあったのか。主催者のAmaNeko氏は「写真を通じてバーチャルとフィジカルをつなげる」をテーマとする。仮想現実の経験がない人たちに、仮想現実の写真を通じて、そこに広がる世界や生きている人たち、またバーチャルフォトグラファーという存在の認知を広めようとしている。

写真から感じる世界

会場には、出展者の紹介とメッセージと共に写真が展示されている。どのようなテーマ、想いが込もった作品なのかを頭に浮かべながら、壁に展示される作品を見る。

着物姿で雪の降る京都のような街に佇む女性。散歩する女性と犬。空を飛ぶクジラを見上げる少女。宇宙空間から見える星空など、現実のようで現実ではない、少し不思議で美しい作品が並ぶ。

作品はテーマと写真で仮想現実を表現する。写真の向こうに世界があり、そこに人がいることが表されている。

VRChatの経験者は、写真から仮想現実の世界の存在を感じられるだろう。VRChatに馴染みがない人でも、これらの写真を通して、もう一つの世界を覗き込んでいるように感じられるかもしれない。

VRと現実をつなぐ場所

写真展の最終日には、主催者と出展者によるトークイベントも実施され、写真展の背景や仮想現実と現実の写真の違いなどが語られた。会場には、40人近くの人が集まり満員の様相だ。作品を見にきた人は、VRChatの経験者が大半をしめてはいるが、なかには仮想現実に馴染みがない人も訪れ作品を鑑賞していた。

仮想現実やメタバースは、2016年にVR元年と呼ばれる年を迎え、多数のサービスや世界が生まれて現在に至る。今も多くの人が集まり、多様な文化を生み出し成長を続けている。その魅力を多くの人に届けたい、Virtual Photography Showcase 2024はそんな想いが実現した写真展だ。主催者のAmaNeko氏は、来年も写真展を開催する計画だ。多くの人にVRと現実がつながるこの場所を訪れてほしい。

Virtual Photography Showcase 2024

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