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ヴィジュアル系における白塗り文化について 〜その4:中世ヨーロッパ〜

白塗り文化の起源について、西洋伝統の部分はヴィジュアル系においては絶対に外せない要素の一つでしょう。
一部では耽美系と呼ばれる、とことんまで美を追求する中世ヨーロッパの装いを模した絢爛な装い。
そこに見られる白塗りは、前述のピエロやコープスペイントのそれとは異なり、純粋に美と富の象徴として肌を白くするもの。その辺りが起源であることは明白でしょう。
今回は耽美でゴシックな世界の話をします♰

元来、キリスト教の教えの元では化粧=悪、という考え方でした。
女性を飾り立てるものは堕天使が女性に与えた男性を誘惑する道具とされ、そこから導き出された「人々は神から与えられた生まれ持つ自身の姿を愛するべきで、過度に飾り立てるべきではない」という考え方の下、化粧をすることを良しとはされていませんでした。
"神"や"聖書"、"アダムとイブ"などのキリスト教由来のモチーフを使用するバンドにはあまり白塗りがいることがなく、いたとしても優美さよりも悪魔的、ひいてはコテ系に繋がるのももしかするとその辺りの価値観が影響しているのかも知れません。(悪魔的という話になるとブラックメタルの話にもまた繋がってきそうです)
それはさておき、では耽美モチーフの白塗りはというと、やはり16世紀のイギリスまで遡り、エリザベス1世の名が挙げられます。
高貴な身分に産まれながらも、天然痘への罹患により肌に残る瘢痕を隠す為、そして持ち前の美意識から地肌が見えなくなるぐらい肌を白く塗りたくったことで有名なエリザベス1世。
そこを発端とし、高貴な者は肌を白くするという風習がダイレクトにヴィジュアル系に影響している、という考え方で良さそうです。

補足すると、耽美系のバンドの白塗りにはしばしこういった貴族的な白塗りと、以前にも述べたピエロ的な白塗りが混在します。
例えば中世ヨーロッパをベースにしながらも様々な世界観を次々に取り入れたMALICE MIZER。Köziさんのメイクや衣装はピエロを思わせる人形の役柄であり、Mana様のそれとは同じ白塗りでも全くの別物であることが伺えます。
MisarukaではドラマーであるvetchieさんがMALICE MIZERのカバーである「月下の夜想曲」リリース時の衣装にピエロ的なメイクを施しています。
他にもMisarukaには宮廷道化師を指す「Jester」という言葉をモチーフにした曲があったりすることからも、ヴィクトリア朝ではなく、それ以前のヴァロア朝あたりの宮廷文化をルーツとしている、と憶測されます。

と、ここまで書いておいて何なんですが本項の中心として挙げているMALICE MIZER、その出自の部分を辿ると大筋のルーツはやはりゴスなんですよね。 それもMana様に対して世間が持つイメージであるゴシックロリータではなく、 BauhausやThe Cureに代表されるようなゴシック・ロック。
初期の音楽性やファッションはゴス系そのものでしたし、活動を進める中では軍服やボンデージ衣装も着用していたりもしました。当時の(インディーズ期の)MALICE MIZERをリアルタイムで追っていたわけではないので何とも言えませんが、色々と模索をしていく中で最も商業的に成功を見せたタイミングが、その後のイメージに繋がったあのヨーロピアンなスタイルだった、と。僕はそう考えます。
MALICE MIZERがヴィジュアル系×ゴシックロリータという世界観を確立させた後に誕生した耽美系統のバンドについては、そんなMALICE MIZERの作ったイメージと、ヴィジュアル系に深く浸透しきったゴシックスタイル、そして冒頭で述べた中世ヨーロッパ文化の美を追求する白塗り、これらの価値観のミックスであると予測します。MALICE MIZERの台頭後、彼らのフォロワーバンドは多々現れては消えていきましたが、バンドによってどの意味合いが強いかは異なってくるでしょう。
更に余談ですが、MALICE MIZERはGackt氏脱退後にそれまでの華美なスタイルを脱ぎ捨て、ゴシックファッションへ身を包みます。
1999年11月にリリースされた「再会の血と薔薇」は逝去したKami氏へ捧ぐ曲であり、もしかするとあの当時の白塗りは残されたメンバーの弔いの意思や死生観などを反映させたものだったのかも、などと言う邪推をしてしまいます。
偉そうに語っていますがMALICE MIZERについてはまだまだ勉強不足な所だらけなので、今後時間をかけて紐解いていきたいと思います、という所で西洋文化×白塗りバンドの話はおしまい。
ご拝読いただきありがとうございました。

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