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オンラインワークショップのテンプレート無料大公開(有料イベントの場合は要相談) #オンラインワークショップテンプレート

 この記事にはアップデート(オンラインワークショップ用のテンプレートを無料公開します|楽描人カエルン #グラレコ写経|note)があります。こちらもよろしくお願い致します。(2022/05/15、更新)
 オンラインワークショップに参加して「残念」な気持ちになったり、主催したが参加者の満足度が低かったということはないだろうか。「段取り八分」と言われるほどオンラインワークショップにおいて準備は重要となる。本稿が多少なりともオンラインワークショップの品質向上と主催者の手間の削減になれば幸いである。

1.はじめに

 対面型のワークショップとは違ってオンラインで実施するワークショップは「段取り八分」(準備を十分にすることが肝要であるという建設業等界隈で言われる言葉)と言われるほど入念な準備が肝要となる。何度かオンラインイベントを開催しているが品質をそれなりに担保しようとするとやはりかなりの手間となる。

 自分自身のワークショップの質の向上のためファシリテーターワークショップデザイナグラフィックレコーダーイベント主催者経験を多数持つ方などにに企画/イベントの実施(サポート)/振り返りに参画していただきフィードバックをしていただいたのだがそれをまとめたのが本稿となる。また実際の開催にあたりいくつかの様式を使って資料化しているのだが、その様式(テンプレート)を無料で公開するものである。(有料イベントで利用するばあいについては後述の記載を確認してもらいたい)

 なお本稿ではオンラインワークショップの中身である「ワークショップデザイン」については必要最低限しか触れていない。「ワークショップデザイン」に関する知識はある程度あるという前提としている。(ワークショップのデザインに関しては「造形ワークショップ入門」、もしくは本稿の最後の参考文献等が参考になるだろう)

2.筆者について

 吾輩は「楽描人カエルン」という屋号で活動しているグラフィックレコーダーである。(楽描人カエルン - KAERUN, On-Line & On-Air Doodler)グラフィックレコーディング(以下、GR)、ファシリテーショングラフィック(以下、FG)を世に広めるために日々活動している。

オンライン・ライブドローイングを得意とするグラフィックレコーダー/カワイイ似顔絵と圧倒的な速さが特徴/他者と関わり問題と向き合うビジュアル化術を世に広めるため講座を自らデザイン/現役ICTエンジニア、新商品開発/新事業企画/R&D/ITシステムの企画設計の経験を通じて結果を出すための独自のビジュアル化術を編み出した(Twitterのプロフィールより)

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 オンラインイベントが増えることはGRの機会増大につながる。GRが増えることでグラフィックレコーダー(以下、GRer)を目指したい/なりたい人も増える。将来的には吾輩が作ったワークショップを他のグラフィックレコーダー(GRer)が講師として登壇する形にして更なるGRerの増加を見込んでいる。ちなみに「グラフィッカー」という向きもあるようだがどうやら和製英語なので吾輩は使わない。

 吾輩を呼ぶときは「カエルン」と呼び捨てにしていただきたい。間違っても「先生」などは呼ばないようにしていただきたい。たまに「楽猫(ネコ)人」と言う人がいるのだがネコではない。カエルなのに「人」なのは「グラ★レコ星」からきた宇宙人という設定なので承知願いたい。本稿では「講師」となっているが一般的な用語で書き進めるため仕方なくそうしているにすぎない。

3.対象となるワークショップの概要

 1時間程度のオンラインワークショップで事前課題および個人ワークおよびグループワークが含まれているものを想定している。

 以下の内容については、様々なオンラインイベントに参加した経験から良かったものの要素を抽出したものを載せ、GR固有の部分を極力排した。

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事前課題 :: オンラインワークショップで講師が延々と説明を聞かされ「つらい」と感じたとういう経験があるのでは無いだろうか。インストラクショナルデザインでは「90/20/8の法則」と言われるが、オンラインではこれよりも短くなっているようだ。何らかのビデオを見る/資料を読む、ある程度まとまった手順が必要な練習のようなものは非同期つまりオンラインワークショップの前に参加者に済ませてもらうのが良い。

 参加者のほとんどが前提知識を持っているところに少数の知識がない人が紛れるとその対応においてオンラインで行うと大勢の人は既に知っている内容を延々と聞かされれるはめになる。事前にアンケートに答えてもらうことでその知識が無いことが本人に気付いてもらうように仕向けるという工夫にも使える。解像度を上げるという趣旨のワークショップであれば普段なら考えないような質問をするというのもある。(今回のテンプレートは後者のパターン)

個人ワーク :: テンプレートでは、講師が提示するお題について参加者が考えをまとめて手書きしそれをカメラを使って映し全参加者で見るというアクティビティになっている。GR講座であれば「●●を描いて」という指示となる。アイスブレークとして「テレワークが増えましたが問題だと思っていることを書いて」という自分と向き合うようなものにも転用可能だろう。

グループワーク :: テンプレートでは、講師が提示したお題について少人数(4名もしくは3~5名)でディスカッションし後で全体に共有するというアクティビティになっている。これにはブレークアウトルーム機能(ビデオ会議サービス zoomの機能名称、ブレークアウトセッションとも言う)を使うことを想定している。Microsoft Teamsではブレイクアウトルーム機能が現時点(2020年7月12日現在)では無いが、チームにチャネルを組み合わせることで擬似的に利用できるようである

 ブレークアウトセッションが成立しないのは講師の指示が各グループにうまく伝わらないケースであることが多い。資料を事前配布している場合は参加者はそれを読む。オンラインワークショップの多くではそれがない。有効な対処はブレークアウトルーム機能を始める前にチャットに指示を入力することである。こうしておくことでブレークアウトルームにおいてチャットを読むことで指示を確認できる。

 日本人のメンタリティとして「失敗したくない」があるが講師の指示の理解が参加者で分かれるとワークをせずにその確認に終始してしまうということが起こりがちである。その対策でもある。

Q&Aネットワーキング(懇親会、反省会) :: 吾輩の主張としてはQ&Aのタイミング全参加者がいるその時その場で質問することを強く推進したい。ワークショップ自体のデザインの悪さや講師によりデリバリ(実施)内容の悪さによって参加者全員もしくは大部分が同じ状況に陥っている可能性があるからである。

 もう一つの我輩の主張はオンラインワークショップでもできるだけネットワーキングしようである。

 対面イベントであればネットワーキングの時間が予め設定されていたり、たとえそれが無かったとしても直接講師に質問したり参加者同士で対話することが可能である。一方オンラインワークショップでは主催者がビデオ会議を止めてしまうとそれで終わってしまう。またすぐ近くにいる人に語りかけるということができないので主催者側でキッカケを用意しないと実現が難しい。

 このテンプレートでは「事前課題」と「参加者リスト」が兼用されておいる。参加者の意思でSNSアカウントを共有しても良い場合はそれもされる。

4.実践した上でのありがたいフィードバック

 本稿はオンラインワークショップを実践した上で、複数の方からいただいたフィードバックによりできている。こちらが反省会にて出た意見である。クリックしていただければGoogle Jamboardでもご覧いただける。

20200614_1000振り返り会#グラレコ虎の穴#脱初心者編(06_09 17_50~) のコピー 1

5.オンラインイベントのプロセス

 オンラインイベントは段取り八分と記したが以下のプロセスで考えている。いよいよここから「テンプレート」(6点)を紹介していく。

[1] 企画
[2] ワークショップデザイン
[3] 告知・集客
[4] 講座開催
[5] 懇親会(ネットワーキング)・反省会
[6] アフターフォロー
[7] ふりかえり

 また対面型と違ってオンライン講座の場合、学習は事前つまりオフラインに済ませておきオンラインの時にしかできないことをオンライン時にするようにするのが効率的である。

5.1.企画

 企画において重要なのは「軸」を持つことである。

 年間●万円の収益を上げる講座にするという目標を掲げた場合、PDCA/OODAループを高速に回して改善に勤しむことになる。仮説検証を行うことになるが「軸」が無いとあっちフラフラこっちフラフラとなり効率が悪いからだ。

 このプロセスのテンプレートは「企画書」である。

①テンプレート#企画書#グラレコ虎の穴#脱初心者編

 企画に関してはこちらを参考にさせていただいている。高橋龍征氏は年間200講座を実現したというツワモノである。そのうち2講座は吾輩のグラレコ講座なので1%分のお手伝いしている格好である。

5.2.ワークショップデザイン

 段取り八分の一番の肝はどのような講座とするか、すなわちワークショップデザインとなる。

 このプロセスでのテンプレートは「進行表」である。なお、この進行表のとおりにやってみると分かるがかなり急かされる感じである。時間配分についてはご自身のワークショップに合わせる必要があるだろう。なお「急かされる感」はわざとやっている。理由はGRerはリアルタイムで描く/書くという技能だが時間との勝負が根底にある。それを疑似体験するという意味合いがある。

②テンプレート#進行表#グラレコ虎の穴#脱初心者

 ワークショップデザイン自体については本稿で扱うのはあまりにも情報量が多い。以下の参考資料を掲載するに留める。基本的にはBEYOND/Cが実践した「ファシリテーターズガチキャンプ2020」のベース等を参考にしている。

5.3.告知・集客

  告知・集客に重要なのは合目的性である。自らの目的にそった人をできるだけ集める。目的に沿っていない人の目に届かない/仮に見ても自分は対象で無いと気づける/それでも参加する悪意があるタイプであればその参加を抑止できる仕組みも必要となる。(参考「ウェビナーをゼロから自分で企画できるようになるゼミ」)

 このプロセスでのテンプレートは「告知文」「事前課題」である。「告知文」はconnpass用に作成したためMarkdown表記となっている。

【告知文】

③テンプレート#告知文#グラレコ虎の穴#脱初心者編

【事前課題】

④テンプレート#事前課題#グラレコ虎の穴#脱初心者

5.4.講座開催

5.4.1.開催直前打合せ

 いよいよ講座開始である。その前に必要なのは「講師」と「オペレータ」の事前打合せである。テンプレート「進行表」を用いる。

 ワークシート「講座概要」「進行表」をそれぞれ読み合わせするのが良いだろう。「進行表」の読み合わせ時には「参加者」(G列)を見た上で「講師」「オペレータ」がどう役割分担するのかという目線で見るのが良いと思う。

 実際に進行が始まったら「講師」であればD列、「オペレータ」であればE列の手順(□)をチェックしていく感じで進めていけば良い。

5.4.2.注意事項説明等(待機時間)

 このプロセスでのテンプレートは「注意事項」である。「告知文」にてリスク回避のための文言は記載しているのだが量が多いこともあり読んでいない/忘れているということも十分ありえる。特に有料イベントの場合には金銭トラブル、そうでなくてもプライバシの問題などクリティカルなものは念のために再通知するようにしている。

⑦-1テンプレート#注意事項#グラレコ虎の穴

5.4.3.イベント・スタート

 このプロセスでのテンプレートは「事後アンケート」である。「5.2.ワークショップデザイン」でも記したがワークショップの内容は本稿では割愛する。

⑧テンプレート#事後アンケート#グラレコ虎の穴

 アンケートはPDCAサイクルを回すために必須である。ただしアンケートの項目についてそのまま参加者が回答するということについては期待しない方が良いと考えている。

 アンケートの回答に一喜一憂してしてはいけない。良かった悪かったのご段階評価も終わった直後であれば「講師」がいるという印象があるため甘くなりがちだ。自身が他の人の主催するイベントに参加した際にどういう気持で記入しているのか思い返してもらえば分かると思う。さらにその意気込みに対して本気度が50%以上前後する人がいるもいるという具合だ。

 アンケートの読み取るポイントとしては回答率がある。講座の内容に満足しないとアンケートに回答しないという対応をする人が意外に多い。とはいえ回答がないことから理由の分析等も難しい。また、自由記入欄には改善のヒントが書かれていることがある。ただしこれも「生存者バイアス」がかかっていることにも注意が必要だ。つまり自分にとって最適なオーディエンスがアンケート自体を回答していない自由記入欄に書いていない可能性も考慮すべきだ。

6.コミュニティ::CoCreSalon(コクリサロン)

 このテンプレートについては皆さんのご指導/ご鞭撻/ご意見により改善していく所存である。辛口な意見も大歓迎である。意見等をお願いしたい。

 意見を議論をしながら伝えたい、内容についてもっと知りたいという話もあるかと思われる。また、有料イベントについては要相談と最初に但し書きもした。

 これらについては以下のFacebook Pageにアクセスしていただきたい。イベント等も開催しオンラインイベントについての知見の共有とネットワーキングを図っている。特に有料イベントでの活用を考えている方についてはCoCreSalonに対する貢献をしていただきたいと考えている。

fb_CoCreSalon_コクリサロン

 7.謝辞

  本稿の執筆にあたり多大なる協力をいただいたのでその方々についてご紹介して終わりにしたい。

 「小瀬 一幸」さん、「おりひか いくお」(@Orihika)さん、「立花 浩司(Koji Tachibana)」さん、には都合3回のオンラインイベントに参加いただいただけでなく、事前/事後のチェックなども行っていただきました。

 また本稿の執筆に関する活動には直接関わってはいませんが「企画」のところに関しては「高橋龍征@年間200講座を実現。BizDev/起業→場づくり&企画の支援」さんのnoteや講座を参考にさせていただいております。

 またお名前の表示は差し控えさせていただいておりますが他にも何人かの方に協力をいただいている。みなさんにも感謝をしております。ありがとうございます。

 なお今回「公開」している理由のひとつに過去に真似られた経験があるからである。真似されることには特に問題は感じない。吾輩が心を痛めたのは「あたかも自分が最初にやったかのように主張」していたことによる。個人的には先行者に対するリスペクトは新しいことがどんどん生み出される世界において大事だと思っている。このような経緯もあり本稿の取り扱いも後述の「8.著作権/参考情報/用語定義等」の通りとした。

 本稿においても様々なワークショップやイベントから多大なヒントを得ている。吾輩の能力の低さから本来この場で御礼すべき人や参照すべき資料等が抜けているかと思われる。この場にてそれらの方々に感謝を示したい。本件で何らかしらの疑義がある方は連絡をしていただくか、心の中で自分の仕事に関して誇りに思っていただきたい。

8.著作権/参考情報/用語定義等

表示 - 継承 4.0 国際 (CC BY-SA 4.0) :: 今回公開した資料に関しては著作者である「楽描人カエルン @ujisakaeru」の表示、改変可能だが当該表示の継承という形での利用をお願いしたい。有償利用の場合は「6.コミュニティ::CoCreSalon(コクリサロン)」に基づく対応をお願いしたい。

# GR :: グラフィックレコーディング

会議やミーティング、あるいはカンファレンスやワークショップなど、さまざまな立場の人たちが集まる場所で行われる議論を、グラフィックによって可視化することで、より良い対話をもたらし、課題解決に導く手法です。(書籍の「内容紹介」より)

# VF :: ビジュアルファシリテーション

グラフィックレコーディング・グラフィックファシリテーション等の手法を含む、戦略プランニング・戦略の実行・チームビルディング・グループの問題解決・グループワークの様々なタイプで用いられる、視覚的なファシリテーション手法の総称である。(「ビジュアルファシリテーションが活用される領域と役割、和田あずみ、三澤直加、富田誠、2018、日本デザイン学会」

# RTD :: リアルタイムドキュメンテーション

リアルタイムドキュメンテーション(以下 RTD)の試みは 2008 年頃から始められた [1]。当初はワークショップ・プロセスの視覚化と資料化に焦点が当てられていたが、ファシリテーショングラフィック(以下 FG)やグラフィックレコーディング(以下 GR)の趨勢と重なり、議論や表現活動への創造的参加を支援するツールとして活用されるに至っている。本稿ではFG も GR も含めて RTDと呼ぶ。(「デザイン研究におけるリアルタイムドキュメンテーションの課題と可能性、原田泰、安武伸朗、横溝賢、2018、日本デザイン学会」

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