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マッチョなHくん。
大学院に進んだ時、院から合流してきたHくんっていう人がいてさ。 背はあまり高くなくて、黒縁メガネで、イケメンとは言えないけど、特に数学に秀でてて。いち早く博士課程に残ることを決め、たしかすぐ助手のポストに就いたはず。
同じ大学院に50人くらいの同期がいたのに、なぜHくんを覚えているかというと、彼がマッチョだったから。 今ほどジムがどこにでもあるわけじゃなくて、プロテインとかも高かった時代なのに、すれ違いざまに二度見するレベルの筋肉だったな。
口数少なくてシャイな感じだったけど、Hくんの親しい友達が「ねえねえ、胸動かしてみて」とからかうと、シャツを着てても分かる丸く盛り上がった胸を上下に動かしてくれてた。 エロかったな。
僕はまだ、自分がゲイだとは認めていない、自分のセクシャリティから目を逸らしていた時期だったけど、女の子の胸じゃなくて男の子の胸に興奮したという時点で、ゲイと認めるべきだったんだよな。
Hくんは、高校の時から筋トレを始めたらしい。高校生の成長期にがっつり筋トレをしたのでそこから背が伸びなくなったと、照れくさそうに話していたのを覚えてる。
自分がマッチョ系の男が好きだと自覚したのは、Hくんに憧れを持った時だ。それでもまだ僕は、マッチョに憧れるというのとゲイであるというのは別だと、思い込もうしていたよ。自分がゲイであるということを認めるのが、難しかった。自分の中で折り合いをつけられなかった。
Hくんは大学院在籍中に結婚し、子供もできたと噂で聞いた。その後、彼がどうなったのか、ふと知りたくなることもあるけれど、知ったところで何の意味もないよね。 でも。どうしてるのかなあ。
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