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「おい。お前、不良か?」

ある日の月曜日。
いつもの様に靴を上履きに替えて校舎に入ろうとしていた。
いや…実際はいつもの様であって欲しいと願いながらかもしれない。

すると7m離れた所から俺しか居ない土間に声が響いた。

「おい。お前、不良か?」

手は上履きにかかった状態でフリーズ。
横目でチラッとみると、長ランの学校一番の怖い先輩と名高い方のシルエットだった。
(マジか…なぜこんな日に限って会うんだ…)そう心に悔いた。

「いえ不良ではありません」
下駄箱のフリーズした手の先の上履きに向けて、俺はしっかり発した。

「じゃあ何だその頭?舐めてんの?」
もう横に居た…

3年生には近づかないと決めた1年生の俺。耳元で囁かれるぐらいの距離は言うまでもなく中学始まって以来の一番至近距離。心臓がバクついてMAX爆ぜそうだ。


この◯◯な頭は、俺が好んでした訳では無い。だから掘り下げないでくれ…
そもそもココに至るまで、長い週末のストーリーがあるのだ。どっから話せば良い…

「えっと…」
時は土曜日に戻る。

土曜日の夜

決まって空手の大会前夜は、ブルースリーの映画かベストキッドを観て気持ちを高ぶらせていた。
そしてそこに父ちゃんが帰ってきた。

父「明日の大会絶対勝ちなさいよ。」
俺「あ〜。そうね。」

父「勝負は気持ちで決まるんだわな。だから相手にコイツは《強そう!》と思わせるのも大事。それが戦略ってやつだでね〜。」
俺「あ〜。なるほどね〜!」

父「よし!俺がやったるわ!ここ座れ!」
そうやって俺は席に座り、映画に集中していた。

父「よし!出来た!」
俺「え?出来た?」
鏡を見ると髪型がヤバい事になっていた。

俺「なんじゃこりゃ〜」

当時は大人か不良しかしてる所を見た事がない、オシャレな『ツーブロック』!!
そんな目立った髪型をして学校にいけば確実に先生に目をつけられ怒られる時代だった。

『怒られてまでオシャレをしたい奴=不良』
それが不良の代名詞のツーブロックだった

俺「何てコトを!!これじゃ学校行けないよ。。」
父「コレで明日の空手の大会の相手は、ビビるどよぉ〜!ワッハッハ!」

次の日の大会は確かに戦略勝ちで、相手は思いのほか手数が減り、映画で高揚してる俺は勝ち進んでいった!父の戦略勝ちは功を生じたのだ。

そしてその日の夜。

父「ほら言っただろ?!そんなもんだて!」
誇らしげに言われたが

俺「でも学校ではこの髪型は流石にヤバいから、もう少し手直ししてよ。」
父「へ?何でよ?それがオシャレだがや?」

俺「オシャレは学校ではダメなんだて…」
父「変な学校だな。」

確かに今思えば変だ。
ある程度の規律は大事だと思う。風紀を乱す茶髪とか制服の規定を破ってはいけない。ただ黒髪の刈り方が奇抜だと何が悪いことなのか?ある部分が長くてある部分が短いだけのツーブロック 。今なら何も変な事をしてると思わないし、当時もそうだったはずだ。

そうやって父ちゃんは渋々髪を直してくれた。
で、こんな髪型になったのだ。

俺「お〜まだコレならイイか?!」

パイナップルの様な頭だった。少し奇抜だがこれなら坊主よりはマシだし、別にオシャレで目立つコトないから、スポーツ刈りと変わらんと思っていた。だが普通よりは目立つ。すぐ伸びるから、怖い先輩とか先生とかに会わない様に登校しよう。

月曜日の朝

そして土間の時間に戻る。

先輩「何だその頭?舐めてんの?」
説明が難しい…いつからこうなった話をしたら良いんだ。。

先輩「おい!聞いてんのか?!」
俺「あっ…はい。。」
(もう何でもいいや…なる様になれ。。)
そして俺は切り出した。

俺「あの…お父さんが。」

先輩「は?お父さんが?」
先輩は復唱した。

………
しばし沈黙。

多分先輩はこう想像したのだろう。

(こんな頭にさせる親がいるのか?
子供にこんな過激な頭をさせる親って、どんな親だ?正気じゃねぇ。しかも見るからに不良ぽくない子に…こんな髪型させるのはなぜだ?
いや普通はさせないだろ。
そうか。普通じゃないのか?
マジか?マジな親か?マジなあっち系の親なのか?コイツに手出したら面倒臭い系なのか?)

するとビクビクする私の横からスッと消え、先輩の冷静な声が聞こえた。
先輩「そうか。お父さんがな。」

そう言って無事パイナップル頭は、少し伸びるまでクラスの奴らにいじられて終わりを告げた。

そしてそれ以来、先輩からは声をかけられる事はなかったとさ。

今回の学び

父「勝負は気持ちで決まるんだわな。だから相手にコイツは《強そう!》と思わせるのも大事。それが戦略ってやつだでね〜。」

これはビジネスでも大事な戦略です。
よくYouTuberなどもマーケティング戦略に使う策略!自分をどう見せて、自分のポジショニングをするのか?是非この機会にこのテクニックをご活用下さいw

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