ソードワールド2.5リプレイ 《風の廻り道》キャンペーン 第五話「大草原の美食家達」前編
はじめに
この記事は2023/6/17に行われた「ソードワールド2.5(グループSNEのTRPG)」のセッションログを再編集したリプレイです。
読みやすくするため、実際のセッションログを少しだけ脚色したり、発言順序を整理したりしています。
前回はこちら。
本作は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。
(C)GroupSNE
(C)KADOKAWA
0. あらすじ
アルフレイム大陸北西部、ドーデン地方。
冒険者ギルド《風の廻り道》は“鉄道路を活かした長距離移動を伴う依頼”を取り扱う支部である。そこに所属する冒険者であるPC達は、前回《アルショニア女王国》辺境伯家の少年ルルセットを《マグノア草原国》まで護衛する依頼を請け負い、見事それを成功させた。
現在PC達は《マグノア草原国》に留まり、同国首都に滞在している。
偏屈な射手のアレックス、酒好きの神官リゼル、豪放磊落な戦士のヒルデ、復讐に生きる女戦士パローロ、自称英雄の少女剣士リラの5人を待ち受ける新たな冒険とは……?
1. 導入
GM:◆描写◆
アルフレイム地方北西部、ドーデン地方。
荒野に草原、森林といった様々な環境を鉄道路が結ぶ、魔動機文化の盛んな地である。
地方中東部に広がる《フィノア草原》は、開けた平原に豊かな土壌と日照時間を有する、地方有数の肥沃な農地として知られている。
広大な草原には放牧や農耕を行う小村が点在しており、それらの村は伝統的に首都《マグノア》へと税を納めている。
これらの村群と農地、そしてそれを統括する城塞都市を含め、この一帯は《マグノア草原国》と称されていた。
首都である城塞都市《マグノア》は石造りの城壁に囲まれた街で、木造の家屋が立ち並んでいる。
街の東側にある冒険者《花々の歌声》亭は温かみのある木造二階建てで、ギルドホールには沢山のテーブルが並べられていた。
PC達は前回のルルセット=クライル辺境伯子の護衛任務の後、この城塞都市《マグノア》に滞在している。
GM:というわけで、まずはシナリオ導入部から!
第四話にて、依頼人のルルセット=クライルを《マグノア草原国》首都に送り届けたPC達。
現在PC達は、《マグノア》にある冒険者ギルドの一軒に身を寄せて簡単な依頼で日銭を稼ぎながら滞在中という訳です。
GM:それでは……
GM:ヒルデさんから、最近何をやっていたかなどのRPをお願いします。
RPの途中で次のPCを指名して絡んでもらえると、GM助かります!
ヒルデ:お! わかりました~!
ヒルデ:依頼を終えてギルドに帰ってきます。冒険者になってから今まで色々と経験したことで、しっかりフードを被るようになっています
ヒルデ:「あ~ッ、お腹空いた!」
ヒルデ:……で、アレックスを見つけます
ヒルデ:「……お、アル坊~!」*手を振る
アレックス:「なんだ、依頼終わりか?」
アレックス:*武器担いでがちゃがちゃと歩いてくる
ヒルデ:「あんたも、お昼まだでしょ?」*カウンターに指を立てる
アレックス:「あぁ。新調した銃の初期点検がやっと終わったとこだ」
アレックス:「依頼って何してたんだ? この間出てた妖魔退治か?」
ヒルデ:「そ。大した敵じゃなかったんだけど、逃げ足が速くって……」
ヒルデ:「一日中走り回って、もー大変よ!」
アレックス:「それでそんな元気が余ってるんなら、少しくらい分けてもらいたいぜ」*眉間を揉む
ヒルデ:「そっちはどお? うまくやってる?」
アレックス:「ふふん、うまいなんてもんじゃねえさ」
アレックス:「見ろ、この磨き上げられたパーツの数々を……!」
ヒルデ:「へぇ、やるじゃ……」
アレックス:*ロングバレルに頬擦りする
ヒルデ:*流石にちょっと、引く
アレックス:「奢ってやろうか」
アレックス:「最近はお前もちゃんとその、やってるみたいだしな」
アレックス:*ヒルデの被ってるフードをつまみ
ヒルデ:「まーね。いつまでも田舎者じゃない、ってことで」
アレックス:「そいつは結構」
アレックス:「(つっても、二人きりってのは些かアレだな……)」
アレックス:誰かが通りかからないかな…… と思ってたところにパローロさんを見つけることにしましょう
パローロ:お、良いですよ!
アレックス:「あ、姐さ~ん」パロ姐さんに声かけましょう
パローロ:*めっちゃ落ち込んだ様子でギルドホールを歩いている
アレックス:「……あれ?」
ヒルデ:「おーい、パローロ~!」
パローロ:「……ん、アル坊、ヒルデ、久しぶり」*耳を立てる
ヒルデ:「どしたよ? しょんぼりして」
パローロ:「……やむにやまれぬ事情がある」
パローロ:「端的に言えば、お金が無い」
ヒルデ:「そりゃあ……深刻だ」
アレックス:「何やってんだ……」*呆れ顔
アレックス:「姐さんの腕なら、日銭に困るようなことないだろ?」
パローロ:「どうしても欲しい装備があって……」
パローロ:*新調した”大きな手袋”とフレイル・カスタムを見せる
アレックス:「げっ……また一段と武器がゴツく……」
アレックス:「(あー……前回、あの吸血鬼野郎に舐められてたのがよっぽど腹に据えかねたのか)」
アレックス:「……そりゃしょうがねえな」
パローロ:「それで……リゼルにお金を借りて、買ってきたところ」
パローロ:*遅れて付いてきたリゼルを振り返る
リゼル:「おや、奇遇だね」*ギルドのドアをくぐり
リゼル:「君たちが二人で食事とは珍しい」*アレックスとヒルデを見る
リゼル:「……逢瀬の邪魔をしてしまったかな?」
アレックス:「そんなんじゃねぇって!」
アレックス:「なぁ姐さん、このおっさんに金を借りるっつーか……貸し作るのはヤバいんじゃねえの?」*パローロに
パローロ:「背に腹は代えられなかった」*渋面
リゼル:「そこの二人、人を守銭奴のように言わないでくれたまえ」
リゼル:「見ず知らずの相手ならともかく、人柄も居所もわかっている仲間を相手に高利貸しのような真似をするとでも?」
ヒルデ:「でも、タダじゃないんでしょ?」
リゼル:「そうだな……」
リゼル:「ま、それについてはその時にね。楽しみにしておくといい」
ヒルデ:「あーあー……」
アレックス:*姐さんに肩ぽん
パローロ:「覚悟はしておく。でも、受けた恩は返す主義だから」
リゼル:「とはいえ、私もそうそうお金の使い道がある訳でもないからね」
リゼル:「せいぜいが換金できそうなものに変えて持ち歩く程度だ」
リゼル:*ベルトのバックルを撫でながら
アレックス:「おっさんも装備新調したのか?」
リゼル:「まあ、緊急用に少し……ね」
アレックス:「いいねえ」
ヒルデ:「いいなぁ。あたしも新しい武器が欲しいのに、馬鹿みたいに重くって持てたもんじゃないんだ」
アレックス:「お前、物が重いとか言うようなガラかよ」
ヒルデ:「本当に重いんだって。あんたが持ったら構えるだけで骨が折れちまうよ」
アレックス:「そんなわけねぇだろ……流石に」
リゼル:「とはいえ、ここでアレックス達と会えたのはタイミングが良かった。今日はここでリラと落ち合おうと思っていてね」
リゼル:「その後君達を探しに行くつもりだったんだが、手間が省けたな」
ヒルデ:「ふむ?」
リゼル:「久しぶりに《風の廻り道》の皆で集まりたかったんだ。支部長に近況報告も入れておく必要があるしね」
アレックス:「へえ、お馴染みの面子が揃うな」
リラ:*ギルドの扉を開けて入ってこよう
リラ:「お、なんだ。皆揃ってたのか」
リラ:*珍しく合流に早く来たリゼルに驚きつつ
パローロ:「久しぶり」*サムズアップ
リラ:「や、久しぶりだね皆」
ヒルデ:「よ~!」*手を振る
アレックス:「英雄サマの凱旋だぜ」*ニヤついて
リラ:「よせやい」
リラ:「今回は冒険に出てないから、それは過大な評価というものだ」
アレックス:「ん、じゃあ何してたんだ?」
リラ:「せっかく大きな国だからね」
リラ:「図書館で過去の英雄譚を読み解き、これからの自分の成長プランを練っていたのさ」
アレックス:「そりゃまた、勤勉なことで」
リラ:「ほら、見なよこの装備の数々。かなりサマになってないかな?」
リラ:*何の変哲もない長剣と凧盾を示す
ヒルデ:「リラまで!? いいな~ッ」
アレックス:「確かにな、随分英雄サマらしくなられて」
パローロ:「うん、恰好良くなった」
リラ:「どんな英雄も下準備はするものだからね」
ヒルデ:「いいなぁ~! なんで丁度良い重量の武器が少ないんだ」
リラ:「そう言う皆も、装い新たにって感じだね」
GM:それでは、この辺りで……
GM:◆描写◆
近況を話し合いながら昼食を摂るPC達のテーブルに、身長1.2m程の小柄な人影が近づいてくる。
人影は目深にフードを被っており、その顔は幾重にも巻かれた布帯で隠されていた。
その手足も、ゆったりとしたローブに覆われており、細かい造作を窺い知ることはできない。
???:「君達は……《風の廻り道》亭の冒険者、ですね?」
リラ:「いかにも、その通りだが……」
ヒルデ:「んぐむ?」*めちゃくちゃに頬張っている
リラ:「君は?」*問い返す
???:「僕はキュイ。キュイ・エールと名乗っています」
キュイ:「貴方達に、ある依頼を頼みたい。《マグノア草原国》に拠点を置かない、貴方達にしか頼めない仕事なのです」
リゼル:「おや、飛び込みの仕事とは……俺たちも有名になったな」
アレックス:「待ち合わせじゃないのか」
リゼル:「いや? 全然予定にない事柄だが」
パローロ:「キュイ……?」*覚えがあるんだか無いんだか
GM:OK! ではここで判定といきましょう
GM:「キュイ」という名前を耳にしたPCは、難易度13の見識判定をどうぞ
リゼル:「失敬、キュイ氏。その恰好は……怪我でもされているので?」
キュイ:「……いえ。そういう訳では」
キュイ:「誤解させたならすみませんが、これが僕の平時の装いです」
リゼル:「おっと、そうでしたか」
パローロ:「キュイ・エール……聞いたことがある」
アレックス:「姐さん、知ってるのか」
パローロ:「特定の店に属さない放浪料理人……だよね?」
リラ:「もしかして”銀の小匙の”キュイ・エール?」
キュイ:「恐縮ながら、そのような呼び名を頂いております」
キュイ:「僕のことをご存じであれば話が早い。お願いしたいことというのは、近く開かれる”マグノア御前料理大会”に関する依頼なのです」
リゼル:「ああ、噂に聞く料理大会か」
アレックス:「そんなんがあるのか?」
リゼル:「最近街中が浮かれている……というか、妙に出店が増えている気はしないかい?」
アレックス:「言われてみれば」
リゼル:「あれで大会前に市民の反応を見て、味を調整している料理人もいるのさ」
リラ:「お金のない冒険者でも、口が上手ければおこぼれにあずかれるから良いところだ」
ヒルデ:「(もぐもぐ……ごくん)……料理大会! 食べ物の美味い国だとは思ってたけど、こりゃ想像以上だ」
リゼル:「高級料亭から市民向けの大衆食堂まで……」
リゼル:「この国の人々が料理にかける情念は凄まじいものがあるからね」
キュイ:「《マグノア草原国》国王であるアミード王は生粋の美食家。究極の美味の探求は、王にとってのライフワークなのです」
アミード:「余に究極の一皿を献ずるのは!! 誰だ!!」※イメージ映像
アレックス:「大会のことはわかったけど」*映像をかき消しながら
アレックス:「俺たちに手伝えることなんてあるのかね?」
パローロ:「食材調達とか?」*狩猟的な
キュイ:「ずばり、その通りです」
キュイ:*懐から一枚の羊皮紙を取り出す
GM:羊皮紙には冒険者ギルド向けの依頼文フォーマットが丁寧な交易共通語でしたためられています
パローロ:個人依頼?
GM:処理的にはPC達が今いる冒険者ギルドを通している、って設定
パローロ:「おぉ~」*報酬金額に目を輝かせる
アレックス:「(仕事内容を考えれば、悪くない……むしろ良い報酬だ)」
リラ:「いいね。稼ぎにもなりそうだ」*内容に目を通しながら
リラ:「一つ確認したいことがあるんだけど、良いかな?」
キュイ:「はい、なんでしょう」
リラ:「依頼の本筋というか、主目的は食材調達時の護衛ってことだけど」
リラ:「補足事項を見ると、君はマグノア料理界の有力者と対立してるって書いてあるよね?」
リラ:「むしろ、それが理由で僕たちに依頼を持ちかけてくれた訳だ」
キュイ:「はい。仰る通りです」
リラ:「もし食材調達時以外のアクシデント……つまるところ、その対立相手からの度を越した悪意について我々が対応した場合は」
リラ:「追加の報酬を期待しても良いのかな?」
ヒルデ:「おっ、やるねぇ。リラ」
パローロ:「たしかに。契約内容の確認は大事」
リラ:「うん。そこら辺は明確にしておかないとね」
リラ:「冒険者にとっては、契約と信頼は重要だから」
キュイ:「あまり考えたくはないですが」
キュイ:「やりかねない相手……ではあります。その場合、追加報酬は勿論お約束します」*金には困っていないような口ぶり
リラ:「了解した。そこは随時対応ということだね」
リゼル:「(美食の国、という名称こそ耳触りはいいけど)」
リゼル:「(そこにいるのが人である以上、その手のトラブルには事欠かないか)」
パローロ:*金払いは良さそうだけど、こりゃひと騒動ありそうだな……と短く息を吐く
アレックス:「ま、断る理由はないんでないの」
リゼル:「そうだね、前回みたいなことにはさすがにならないだろう」
ヒルデ:「丁度良いね。滞納しなくて済みそうだよ」*パローロに
パローロ:「うん、助かる。私は当然受けるよ」
リラ:「僕も異論なしだ。この仕事、参加させてもらおう」
リゼル:「では、キュイ氏。ご依頼の一件については、我々《風の廻り道》にお任せください」
キュイ:「ありがとう。助かります」*丁寧な一礼
キュイ:「外に私の荷馬車を停めてありますので、詳しい話はそちらで移動しながら……ということで」
キュイ:*ギルドホールのカウンターにPC達の食事代を支払い、外に出る
リラ:「わ……」
アレックス:「っておい、マジか」
ヒルデ:「奢り損ねたねぇ」*笑いながらアレックスを突つく
パローロ:*機嫌良さそうに尻尾を振りながら付いていく
リゼル:*手早く荷物を纏めて同行しよう
GM:では、次チャプターに移行します~!
2. 食卓の黒い宝石
GM:◆描写◆
フードを被った依頼人、キュイ・エールからの依頼をPC達が承諾してからまる半日が経った。
現在、《花々の歌声》亭を発ったPC達はキュイの運転する二頭立ての幌馬車に揺られ、彼が目当てとする食材の産地へと向かっていた。
放浪の料理人を生業としているキュイの馬車の荷台には、塩漬けの肉や干し野菜など幾らかの食材が積まれている。
御者台においても、謎めいた依頼人は布帯とフードを取らずにいた。
キュイ:「改めて、依頼内容について説明しましょう」
キュイ:「今回貴方達に頼みたいのは、食材調達時の護衛です」
キュイ:「この度のマグノア御前料理大会で、私はあるキノコを料理の材料に使いたいと思っています」
キュイ:「……黒いマグノアアーガリクス、通称“マグノアブラック”というキノコをご存知ですか?」
リラ:これPC的には知ってる?
GM:判定で決めましょう。成否で特に何か変わるわけでもないですがね
GM:難易度13の見識判定でお願いします
パローロ:「キノコには明るくない」
ヒルデ:「まずその、マグノア……アーガ……なんちゃらが分かんない」
アレックス:「名前からして、マグノア原産の珍しいキノコってとこか」
リラ:「少なくとも、屋台飯で使われる類のものではなさそうだ」
リゼル:「あいにく、美食とは縁遠くて」
リゼル:「神官の家の出でしてね。粗食がモットーなのです」
パローロ:「酒の肴には詳しいのに……」*ジト目
リゼル:「つまり自然環境にしか存在しない食材だと」
リラ:「なるほど、これはたしかに採りに行かないとダメそうだ」
キュイ:「その通りです」
キュイ:「しかし、マグノアブラックそのものは流通量こそ極めて少ないものの、一応は一般的な範疇の食材なのです」
キュイ:「マグノア南部の川沿いには背の高い草が生い茂る地域がありまして。マグノアブラックはその辺りから見つかります」
キュイ:「現地の業者は、専門の訓練を積んだ豚に探させているようですよ。尤も、月に10個見つかれば多い方ですがね」
パローロ:「……まずは豚から捕まえるの?」
ヒルデ:「採集に護衛が要るような風には思えないな」
リゼル:「流通している食材らしいからね。本来なら、収穫を専門にしている業者に頼めばいい話だ」
アレックス:「じゃわ、ざわざ足運ぶ理由は別にあるってことか?」
キュイ:「えぇ。ただ流通しているマグノアブラックを使ったのでは……達人達の集うマグノア御前料理大会を勝ち抜くことはできない」
キュイ:「今回私は……“誰も見たことのないマグノアブラック”を料理に使いたいのです」
リゼル:「ほう……?」
ヒルデ:「誰も見たことの無いマグノアブラック……?」
アレックス:「なんだそりゃ?」
リラ:「希少性のある……というか前代未聞のキノコ?」
パローロ:「何かアテが?」
キュイ:「何故マグノアブラックというキノコが栽培できないのか?」
キュイ:「それは、このキノコが地中深くにある木の根から見つかるからなのです。正確に言えば、大菌塊から散った胞子から発生する小実体が、木の根から生えます」
アレックス:「普通のは、その小実体ってのが地表近くに生えたものを業者が見つけて流通させてるんだな」*納得
ヒルデ:「そりゃ栽培は難しそうだなー……」
キュイ:「その通り。そしてこの球状のキノコは、地中深くの環境であれば非常に大きく育つのです」
キュイ:「おそらく地下深くに、誰も見たことのない巨大なマグノアブラックの実体……いわば大菌塊が存在するのです」
キュイ:「私はこれを、料理に使ってみたい」
パローロ:「へぇ~……」
ヒルデ:「なるほど、無策じゃない訳だ」
リラ:「穴掘りをするって感じでもなさそうだもんね」
アレックス:「なるほど、母体を使っちまおうってわけか」
キュイ:「そういう訳です」
キュイ:「もちろん、貴方達に土を掘ってもらう必要はありません」
キュイ:「このキノコの生息地に、ちょっとした穴のアテがありまして。その穴に潜り、キノコを探すのです」
キュイ:「……キノコの採取のために森の地面に穴を掘るのは、森の環境保護の観点からも止めておきたいですしね」
パローロ:「……なるほど、それで私達の出番」
キュイ:「はい。その穴のアテというのが、野生動物の巣穴でして」
キュイ:「刺激しなければそこまで危険でもないのですが、念の為護衛を付けたかったのです」
アレックス:「ちと大仰な気もするが、納得だな」
パローロ:「人が潜れるサイズの巣穴なら、住んでいるのは大物かもしれない。念を入れるのは順当」
ヒルデ:「こりゃあ楽しみだねぇ。料理大会のためでもあり、あんた自身の望みでもあるんだろう?」
ヒルデ:「きっと素晴らしい冒険になるよ、なぁ!」
キュイ:「へへ……」
GM:ではここで判定と参りましょう。
GM:PC全員は難易度11の異常感知判定をどうぞ
パローロ:「……後ろから蹄の音」*警戒するように耳を立て
リゼル:「おや、本当かい?」
アレックス:「馬で追ってきてるな」*同じく警戒して後ろを覗いてた
ヒルデ:「毎度よく気付くよねぇ」*全然わからん! という顔
リゼル:「数は?」
アレックス:「こっちと同じ5人だ」
リゼル:「振り切れ……はしないか。明らかに速度が違うね」
パローロ:「騎乗してるから馬でも攻撃してくる。厄介」
リラ:「警戒していた通りの展開になってきたね」*武器を確認
GM:先に相手の姿も見えてる 魔物知識判定を振っちゃいましょうか
GM:データも抜けてますし、ざっくりとしたエネミーの解説をば
GM:彼らは馬に乗った追い剥ぎであります。
簡単に言うと「騎乗」を現すために2部位になっていて、「本体」のHPを0にすると自動的に騎馬も戦闘不能(戦闘の意思なし)となります。
GM:何らかの手段で馬から落とすと弱体化します
GM:副官は《斬り返し》、首領は《全力攻撃》と【チャージ】の能力を持っています 首領の攻撃は場合によっては侮れない威力になることに留意してください
パローロ:ふむ……馬は無視して本体を叩いて良さそうだな
アレックス:そうですね 手っ取り早い
リラ:警戒すべきは《斬り返し》で攻撃を当てに来る副官と、それなりの固定値に【チャージ】と《全力攻撃》を合わせて大ダメージを狙ってくる首領だけだね
ヒルデ:雑兵はそうでもない感じです?
リラ:ステータス的に、特に怖いところはないね
リゼル:なるほど。よっぽど運に見放されない限り大怪我はしないな
ヒルデ:GM! 敵が見えたタイミングで異貌化してても良い?
パローロ:私も獣変貌しておきたい
GM:OKですよ~!
GM:ではでは……
◆描写◆
馬に乗った数人の男たちは、瞬く間にキュイの幌馬車を追い抜いた。
男たちは背負った長柄の武器を抜くと、馬を並べて道を塞いでしまった。
首領格と思われる強面の男が、威圧的に武器を掲げて胴間声を張り上げる。
追い剝ぎの首領:「おうおうおう、如何にも怪しい馬車だな、えぇ?」
追い剝ぎの首領:「こいつは獣くせぇ。ロクな奴が乗ってるわけがねぇぜ」
パローロ:『臭いのはお前たちの方』*馬車から飛び降り
追い剝ぎの首領:「へっ、何かと思えば、まさか用心棒を雇ってたのか?」
追い剝ぎの首領:「ただの料理人が用心棒を雇うなんてよォ、そりゃ後ろめたい事情がありますって言ってるようなもんなんじゃねぇか」
パローロ:『ただの食材調達に、後ろめたさも何もない』
ヒルデ:「明らかに言い掛かりだろ! 何者だお前ら」
リゼル:「タイミングが良すぎるな。キュイ氏の幌馬車の外見を知ってて追跡してきたとしか考えられない」
リラ:「君たちこそ、誰かに雇われたんじゃないのか?」
追い剝ぎの首領:「へっ、教える義理も無いね」
追い剝ぎの首領:「見れば角持ちまで連んでやがる。見苦しいったらねぇぜ。ただの料理人かどうかも怪しくなってきたな」
追い剥ぎの首領:「こりゃ、馬車の中もしっかり改めないとなァ~」
リラ:「皆、最低でも後ろの副官だけは殺さないように」
リラ:「情報を絞る必要がある。下っ端じゃロクな事知らないだろうしさ」
追い剝ぎの副官:「カシラ、あんまり侮らん方が良いかもしれませんぜ」
追い剝ぎの副官:「奴ら、場慣れしてやがる。素人じゃねぇ」
追い剝ぎの首領:「ハッ! 上等よォ! どんな相手でも俺の剛腕で叩き潰すまで! 手前ら、かかれーッ!」
3. VS! 馬に乗った追い剥ぎ達
GM:それでは戦闘開始~っ!
GM:戦闘準備に入ります。各自、装備する武器を宣言してね
リゼル:ヘビーメイス装備
パローロ:フレイル・カスタム&バックラーを装備
リラ:ロングソードとカイトシールドを構える!
ヒルデ:モールを装備します! あと追手に気付いたタイミングで異貌しておきたい
アレックス:ここは……デリンジャーを装備する!
GM:では魔物知識判定は省略 先制判定といきましょう 目標13!
GM:では、追い剝ぎの首領が意気揚々と部下に号令をかけたその時!
GM:◆描写◆
パローロは手にした護符を前方に向かって投げつける。以前、敵が使っていた弾け護符を1つだけ拾っていたのだ。
甲高い破裂音に雑兵たちの馬が怯み、出だしが一歩遅くなる。その隙を見逃さず、PC達は敵陣に斬り込んだ!
GM:それではPC達の先手で第一ラウンドだ!
アレックス:先手が取れたなら、シグナルバレットで仕掛けようかな! 先に手番貰っても?
リラ:どうぞ!
ヒルデ:よろしく~!
パローロ:どうぞどうぞ
リゼル:いいよ
アレックス:それではデリンジャーで8m先の雑兵(本体)に狙いをつけて
アレックス:補助動作で【シグナル・バレット】を発動!
アレックス:主動作で《牽制攻撃》を宣言して撃ちます!
追い剝ぎの雑兵:「グワーッ!?」*顔面に閃光弾を受け悶絶!
アレックス:「っしゃ、畳めェ!」*銃声と共に叫ぶ
パローロ:「アル坊、ナイス牽制」
アレックス:「サンキュー姐さん!」
リゼル:「私も仕掛けるとしようか」
リゼル:手番もらって、主動作で「覇者のバックル」の効果を使用します
リゼル:「さて、試してみるとしよう……【ライトニング】!」
リラ:「合言葉そのまんまじゃん!」
GM:リゼルがマナを込めて合言葉を唱えると、腰のベルトバックルから稲妻が迸る! 一直線に奔る電撃は、雑兵二人と首領を巻き込んだ!
ヒルデ:「なっ……何それ! 魔法!?」
アレックス:「電撃の魔法を撃てるベルトだ。早速役に立つとはな!」
リゼル:「うーん、流石に本職の魔術師ばりにはいかないね」
リラ:「へぇ、今は便利な道具があるんだね」
リゼル:「マナの消費も重いし、乱戦時に撃つと君達を巻き込む。使いどころは限られるな」
リゼル:魔法制御の特技が無いからお前らごと殺すことになってしまう……
リゼル:まぁ私にデメリットは無いからいいんだけど
リラ:良くねーよ
パローロ:『……へそ光線?』
リゼル:「やめてくれないか。恰好悪いだろ」
ヒルデ:あたしも魔法使いたい! 手番もらいます!
ヒルデ:操霊魔法【スパーク】を前方雑兵3人の居る空間に行使!
ヒルデ:*異貌化して伸びた角がフードを突き破っている。フードを被るようになったけど、今度はよく脱ぎ忘れるようになったから
ヒルデ:*武器を構えたまま、狙いを定めて魔法を行使!
ヒルデ:「っ……できた!」*マナを解放!
GM:ヒルデが力を込めて武器を前に押し出すと、その瞬間雑兵たちの周囲に小規模な稲妻が爆ぜる! 直撃を受けた雑兵が苦悶の表情で足を止める!
ヒルデ:「やった! 攻撃魔法だ! ねぇ見た!?」*浮かれ
アレックス:「わかったから、はしゃぐな!」*前見ろー!
リラ:「いいねぇ、一気に楽になりそうだ」
リラ:次手番もらいます! まずは雑兵たちの戦線に斬り込む!
GM:OK! 移動妨害なしで受けます。
リラ:リゼルとヒルデの攻撃を受けてHP8の雑兵に必殺攻撃します!
リラ:*盾を構えながら、魔法攻撃で浮足立った敵陣に斬り込み!
リラ:長剣で即座に三度、正中線を突く!
GM:寝ずの鍛錬に裏打ちされたオーソドックスな剣技が、正確に敵の弱点を貫いていく!
追い剥ぎの雑兵:「ぐあああっ!?」*革鎧の隙間に刃を受け、落馬!
リラ:「よし、陣形が崩れた。パローロ!」
パローロ:では手番もらいます!
パローロ:移動して乱戦エリアに入り……補助動作で練技【キャッツアイ】起動! 命中力を高め、HP10点の雑兵にフレイル・カスタムで攻撃!
GM:パローロは呼吸を整える。身体のマナが目に集中し、その瞳は猫のように鋭い眼光を放つ!
GM:素早い動作で相手への距離を詰めると、長柄のフレイルの棍を相手に叩き込んだ! 遠心力の乗った衝撃が兜越しに頭を揺らし、雑兵は昏倒!
追い剝ぎの首領:「くっ……! あっさりやられやがって、情けねぇ!」
リゼル:「相変わらず容赦がないな。ウチの戦士たちは」
リラ:「もう少し優しくしてあげた方が良かったかな?」*剣と盾を構え
追い剝ぎの首領:「ハッ! 今のうちに良い気になってやがれッ!」
追い剝ぎの首領:*馬の肩を叩き、突撃準備!
GM:それでは第一ラウンド裏、敵のターンだ!
GM:まずは首領から動きます!
追い剝ぎの首領:移動して乱戦エリアに突入! 騎芸【チャージ】を宣言してダメージを上昇させ、更に《全力攻撃》を宣言!
パローロ:当たるとかなり痛そうだな 文字通り力任せの突撃か
追い剝ぎの首領:「ブッ潰れやがれぇ!」*大棍棒を大上段に構え!
追い剝ぎの首領:「ぬぅおらァ!!」*重厚な武器を馬上から叩き付ける!
リラ:「がふっ……!」*盾で受け止め、大きくのけぞる
パローロ:『リラッ!!』
リゼル:「騎馬突撃をまともに受けた……生きているかい!?」
アレックス:「気ぃ抜くな! まだ来るぞ!?」*馬の追撃
追い剝ぎの首領:そのまま「部位:馬」で追撃だ!
リラ:「ふぅ、危ない危ない」*後ろへの足捌きで、辛うじて追撃回避!
追い剝ぎの首領:「馬鹿な……ッ!?」
追い剝ぎの首領:「さっきの突撃を受けて、何故動ける!?」
リラ:「あの一撃は重かった……けど、そのおかげで距離を離せた!」
追い剝ぎの首領:「なんだとォ!」
追い剝ぎの副官:「(カシラの突撃をまともに受けたが、その力を受け流して後方に飛び退き、馬による追撃を躱す間合いを取った……ってとこか)」
追い剝ぎの副官:「(言うは易し。だが実行するには歴戦の経験とクソ度胸が要る技だ……どうなってる? この小娘)」
追い剝ぎの首領:「手前みてぇのは衛兵やってた頃にも見たことねぇ」
追い剝ぎの首領:「一体何モンだ?」*警戒度を上げる
リラ:「英雄」
追い剝ぎの首領:「ハッ、こりゃとんだ誇大妄想家だぜ!」
ヒルデ:「やっぱり強いね、リラは」
追い剝ぎの副官:それじゃあ副官動きます!
追い剝ぎの副官:部位数の関係で後衛に襲い掛かることもできるが……
追い剝ぎの副官:リゼルとヒルデがしっかり構えていることを見越し、敢えて前線に乱入!
追い剝ぎの副官:そのままパローロに攻撃!
追い剝ぎの副官:《斬り返しⅠ》を宣言だ!
追い剝ぎの副官:そのままパローロに馬で追撃!
追い剝ぎの副官:「くっ、ちょこまかと……!」*剣を繰り出し、馬の追撃も全て躱される!
パローロ:『そんな攻撃じゃ、当たらない』*常に馬と敵の死角へと回り込み回避!
追い剝ぎの雑兵:雑兵はリラさんに攻撃だ!
リラ:「(親分と副官以外は本当に数任せ、ってところだな)」*盾で雑兵の攻撃をいなし
GM:それじゃあ第二ラウンド! 再びPC達の手番だ!
ヒルデ:殴りたいです!
パローロ:やっちまいな~!
リラ:いけ~!
リゼル:バフやデバフはないからやっちゃって
アレックス:ぶっとばせー!
ヒルデ:まず補助動作で練技【キャッツアイ】を起動! 命中判定にプラス修正を得る!
ヒルデ:なんか……首領の回避ってそんなに高くなかった気がする
GM:ギクッ
ヒルデ:通常移動で乱戦エリアに突入! 主動作で首領に《全力攻撃》!
GM:ヒルデがモールを構え、攻撃後の首領に突撃!
大振りの一撃が的確に馬上の首領を構え、金属鎧に槌頭がめり込む!
ヒルデ:「おらァ!」*後方から駆け寄り、スイング!
追い剝ぎの首領:「ごはっ!?」
追い剝ぎの首領:「こ、この馬鹿力がァ!」*咳き込みながら
アレックス:「猛進にも程があるだろ……」
ヒルデ:「魔法もいいけど、やっぱあたしの本領はこれだね!」
パローロ:『相変わらず凄い威力』
リラ:「いいね!」
リゼル:「このまま押し切ってしまおうか」
リラ:次いいですか!
リゼル:いいよ
アレックス:GO!
パローロ:ごーごー
追い剝ぎの首領:「ぬおおおッ! 舐めるんじゃねぇ!」*棍棒を横構えに、リラの剣を受け止める!
リラ:「これで一手。鍔競り合いをしている棍棒で、どう守る!?」
追い剝ぎの首領:「……ッ!」
追い剝ぎの副官:「カシラァ! 後ろだッ!」
パローロ:わ、私が行くか……当たるか?
アレックス:Let’s Go!!
リゼル:君がしくじってもアレックスがなんとかする
パローロ:首領に普通のフレイル攻撃! かいくぐり発動中だから、当たればクリティカル値8だ
リラ:「パローロ! よろしく!」
パローロ:『リラのおかげで隙だらけ』*フレイルを回転させる
GM:素早いステップで首領の死角に回り込んだパローロが長柄のフレイル先端部を回す!
咄嗟に繰り出された馬の後ろ蹴りを躱し、リラが鍔迫り合いで釘付けに抑えた首領の後ろから、遠心力を活かした一撃を叩き込んだ!
追い剝ぎの首領:「ぐあっ……!?」*昏倒!
GM:大柄な首領が馬から崩れ落ち、雑兵が悲鳴を上げ武器を捨て投降!
副官は忌々しげにPC達を一瞥すると、武器を捨てて継戦の意思がないことを示した。
GM:戦闘終了です~!
4. 依頼人の正体は
パローロ:「これで終わり」*変貌解除しながら
ヒルデ:「うんうん、物分かりが良くて何よりだ」
リラ:「理想的な動きだったね!」
アレックス:「何てことない連中だったな」*デリンジャーを仕舞う
追い剝ぎの首領:「ぐ、うう……負けたのか、俺は」*地面に伸びながら
パローロ:「お、死んでない。結構頑丈」
アレックス:「殺す気で殴ったのかよ……?」
追い剝ぎの副官:「決着を焦ったな。練度で完全に劣ってたってことだ」*どっかりと腰を下ろす
ヒルデ:「こっちも変に潔いな」
リゼル:「……さて、それじゃあ」*負傷した雑兵に最低限の手当を施し
リゼル:「君達、一体誰からの差し金だい?」
リラ:「ま、ある程度の予想はつくけどね」*剣の柄は握ったまま
追い剝ぎの首領:「俺たちを雇ったのはマグノアの料亭亭主、"金の卓布”のドンドジールって男だ」
リゼル:これはPC達知ってるのかな
GM:冒頭の判定でキュイのことを知ってたPCならこの情報も知っていることにしようか
リラ:料理人……っていうか最早趣味の悪い成金じゃないか
GM:要するにとにかく高級志向の料亭で、料理の味そのものよりはそこに集まるカネと権力の方に価値があるタイプの料亭だね
リゼル:そこに通うことそのものが、自身の財力をアピールするステータスになるってわけね そしてそこで得られるコネがまた財力に繋がると
リラ:「金の卓布……あぁ、あの成金趣味の高級料亭?」
パローロ:「無駄に凝った装飾の店構えの……」
リゼル:「へぇ、そんな店があるのか」
パローロ:「店主のろくな噂を聞かないから、黒幕としては妥当……」
リラ:「味以外を重要視しているっていうか……」
ヒルデ:「美味くないのに高いの?」*首を傾げる
リラ:「そこに通うことに意味がある、っていう店もあるんだよ」
リラ:「この国では、食がステータスだからね。材料の値段とお店の内装や格式は分かりやすい価値観だから」
アレックス:「……くだんねーな」
リゼル:「食事の本分を見失ってる気がするなぁ」*苦笑
アレックス:「ちょっと待て。そういえば依頼人は?」
ヒルデ:「っと! 馬車の陰に隠れたままだっけ」*振り返る
GM:◆描写◆
PC達が振り向くと、幌馬車の陰に隠れていたキュイが姿を現す。
咄嗟のことで気が動転していたのか、目深に被っていたフードが外れ、その素顔が顕になっていた。
フードの下の素顔は、尖った耳に犬のような容貌――最下級の妖魔、コボルドのものであった。
リゼル:「……コボルド」*目を丸くして
アレックス:「コボルドだったのか、あんた……」*僅かに不快感を滲ませ
パローロ:「流石に、驚いた……!」
キュイ:「まずは、正体を隠していたことを謝罪します」
キュイ:「その……この姿だと、誤解を招くことも多いので」
リラ:「そう珍しいことじゃないよ」
アレックス:「マジかよ?」
リラ:「コボルドは手先が器用だし、味覚と嗅覚はかなり発達してる」
リラ:「繊細な味付けならドワーフやエルフ以上だろうね」
追い剝ぎの首領:「ドンドジールの大旦那は、それが気に入らねぇんだと」
追い剝ぎの首領:*どっこらせ、と起き上がって地面に腰を下ろす
追い剝ぎの首領:「虫の良いことを言うようだが、俺個人はソイツに恨みがあるわけでも気に入らねぇわけでもねぇ。小金のために狼藉した」
ヒルデ:「だからってなぁ……」
アレックス:「そりゃま、コボルドが大手を振って役人に文句も言えねえしな。襲われるわけだぜ」*溜息
ヒルデ:「なんで正々堂々と料理対決で負かさないのさ」
追い剝ぎの首領:「料理の味で勝負することそのものが馬鹿馬鹿しい、薄汚い妖魔が料理大会に出ることこそマグノアの食に対する冒涜だ、ってな」
リゼル:「だが、それはこの国の首長の望みという話でもないだろう」
リゼル:「料亭主の手前勝手な哲学だ」
リラ:「だね。それが王命ってのは聞いた覚えがない」
リゼル:「だから、こうして闇討ちのような真似に走るわけだ」
リゼル:「キュイ氏」
キュイ:「は、はい……」*尻尾を縮こまらせる
リゼル:「とりあえず、私たちのスタンスについて話しましょうか」
キュイ:「……お願いします」*依頼の辞退か? という反応
リゼル:「依頼は正式な手順に則ったもので、報酬も文句のない額です」
リゼル:「まあ、リラが言ったように妨害の質によってはさらに上乗せしていただく必要もあるやもしれませんが……」
キュイ:「も、勿論……! それは……!」
リゼル:「正体を隠していたことは……信頼関係の構築という点においてはたしかにあまり良くないことかもしれませんが」
リゼル:「依頼内容そのものが偽装だったわけでもありません」
リゼル:「あなたがコボルドであること。また、街の権力者があなたを敵視していること」
リゼル:「そのどちらも、我々が一度受けた依頼を反故にする理由にはなりませんとも」
キュイ:「……!」
キュイ:「そ、それじゃあ……」*表情が明るくなる
パローロ:「当然、依頼を途中で投げ出すなんて、不義理な真似はしない」
ヒルデ:「まぁ……あたしはたぶん、そっち側だし? 言うことないよ」
ヒルデ:「……本当、旅に出てからよく分からんことばっかりだ」
リラ:「依頼時のやり取りで、僕が気になる点は解決済だからね」
リラ:「今更どうこう言うつもりはないよ」
アレックス:「甘ェなあ……」*呆れ顔
リゼル:「君は反対かい? アレックス」
アレックス:「戻ってから、そのドンドジールって奴に難癖つけられたり、とんでもない面倒になるかもなんだぜ?」
キュイ:「……」*クゥーン
ヒルデ:「……でも」
ヒルデ:「キュイこそ料理人の矜持を持っていると、あたしは思うよ」
リラ:その可能性は勿論ある>難癖つけられたり
リラ:というか、キュイがマグノアの冒険者への依頼を避けて僕らに話を持ち掛けたのもその面があるからだろうし
リゼル:関わりづらいだろうねぇ
リゼル:「そうだな……」
リゼル:「それじゃあアレックス、こう聞こうか」
リゼル:「たとえばここで依頼を反故にして、街に帰ったとしよう」
アレックス:「……」*続きを促す
リゼル:「我々はその後トラブルに巻き込まれることはなく、ひょっとすると、件の料亭の主から歓待を受けるかもしれない」
リゼル:「料理大会は恙なく進行し、その料亭が勝つかもしれない。味か根回しか、秘訣はわからないけどね」
リゼル:「ただし、そこにはキュイ氏の名前だけがない」
アレックス:「……」
リゼル:「端的に聞くが、君はそういった状況を目の当たりにして、だ」
リゼル:「ムカつかないか?」*わざとアレックスに刺さるような言い回し
アレックス:「妖魔に共感はできねえよ。おっさん」
リゼル:「まぁ、それならそれでいいさ」
アレックス:「でも……アンタが言いたいことはわかった」
アレックス:「それに……もう弾も撃っちまったしな。このまま戻っても割に合わねぇ」
リラ:「うん、感情より損得勘定ができるのはアレックスの良いところだと思うよ!」*にっ
アレックス:「そりゃどうも」*満更でもない様子
パローロ:「アル坊、我慢出来て偉い」
アレックス:「姐さ~ん……」*へにょ
ヒルデ:「なぁ、もし良かったら」
ヒルデ:「キュイの料理、食べさせてくれないかい?」*キュイに
キュイ:「……!」
キュイ:「えぇ、喜んで! もう少しで、目的地の村に着きますし」
キュイ:「そこで皆さんに夕食を振舞わせてください。今の手持ち食材だと、簡単な料理しか作れませんが……腕によりをかけて作ります」
ヒルデ:「やった!」
パローロ:「……ごはん!」*ガッツポーズ
GM:それでは、ここで報酬の改定を
ヒルデ:そういえば、この追い剝ぎ共はどうすれば良いのかな?
パローロ:街の官憲に突き出すにも、我々も仕事があるしな……
GM:PC達には勝てないってことがわかったし、放っておいても悪さや報復には来ないことは約束します
リラ:まぁ、依頼のために見逃してやるか…… 実害は出てないわけだし
リゼル:戦利品は巻き上げたしね
GM:ではでは、一行は再びキュイの幌馬車に乗り込み目的地を目指す。
GM:しばらく街道を進むと、丘に囲まれた小さな森が見えてくる。その傍らにある農村が、今回の目的地である《ショウロ村》だ。
GM:さて、PC達は無事に食材を調達できるのだろうか?
GM:そしてキュイはマグノア御前料理大会に出場し、栄光に輝くことができるのだろうか……?
GM:というところで後半に続きます。お楽しみに。
←第四話「勇気と誇りと鮮血の下僕」
第五話「大草原の美食家達」後編→
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