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映画#4『マグノリア』/予想外の展開に目が点になる

昨今、映画のネタバレから身を守るのは難しい。あまりに有名なシーンはSNSでふとした瞬間に画像が流れてきたり、口コミサイトは映画の核心に触れるような情報で溢れている。

まず初めにお伝えしたいのは、この映画は絶対にネタバレなしで観ていただきたいということ。ミステリーにありがちな“予想を裏切る展開”とか”大どんでん返し”とは毛色が異なるものの、3時間の果てに目撃する結末はあまりにも予想外なので、映画の中の登場人物たちと一緒になって「目が点になる感覚」を体験してほしい。

最近、驚いたり、心が動くような瞬間がなかったなあと悩んでいるそこのあなた。ぜひお試しあれ。

< voodoo girl’s 偏愛ポイント >
・ミステリアスなプロローグからの秀逸なオープニング
・元天才クイズ少年ドニー・スミスの悲痛な叫び


①ミステリアスなプロローグからの秀逸なオープニング

この映画では、ストーリーが始まる前にプロローグがある。そこで語られる”事例”は本筋の登場人物たちとは全く関係ないものの、この映画がどこへ向かっていくのかを仄めかすような、でもなんだかモヤっとするし、むしろ少し不穏な空気さえ感じさせるような仕上がりとなっている。

「何となく点けたテレビでやっていた怪奇現象のドキュメンタリー番組に、気づいたら目が釘付けになっていた」という感覚に近いのだが、このミステリアスな導入のおかげで、ストーリーが始まる前から映画の世界に一気に惹きつけられる。

そして、プロローグが終わるとAimee Mannの『One』の寂しいメロディーが流れ始め(この瞬間も好き!)、群像劇の主人公となる9人の男女の人生が順番に映し出される。音楽とマッチした雰囲気もさることながら、9人のキャラクターをスピーディーかつ的確にオーディエンスに紹介する手腕は圧巻。この短い時間だけでも、彼らがそれぞれの人生で問題を抱えていることは明白になる。中でも、トップバッターのトム・クルーズの役柄はかなりパンチが強く割と最低で(笑)、最近のトム様とのギャップが面白い。

②元天才クイズ少年ドニー・スミスの悲痛な叫び

9人の中でもわたしの1番のお気に入りはドニー・スミスだ。子供の頃は天才クイズ少年としてちやほやされていたが、今は鈍臭くて仕事もぱっとしない中年男性。さらに悪いことに、彼はバーテンダーの若い男の子に絶賛片思い中で、彼の気を引くために必要もないのに歯科矯正を始めようとするご執心ぶり。

可哀想としか言いようのないキャラクターなのだが、彼は彼なりに一生懸命愛を求めていて、その姿にとても心動かされる。特に、次のセリフは共感できる人も多いのではないでしょうか?

“I have so much love to give, I just don’t know where to put it.”
ーQuiz Kid Donnie Smith

Magnolia(1999)

既視感のわけ

わたしのお気に入りドニー・スミスのチャームポイントといえば赤いメガネ。なんだかこういうビジュアル見たことあるような,,,とずっと考えながらそれなりの年月が経ち、最近になってようやく、『バービー』鑑賞をきっかけにその理由にたどり着いた。

『バービー』で重要な役を演じるアメリカ・フェレーラの代表作といえばドラマ『アグリー・ベティ』。『アグリー・ベティ』といえば赤縁メガネと歯科矯正器具。ああ、すっきりした。わたしの脳内ではいつも認識より先に、色んな作品との関連付けが行われている気がする。

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