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環境省でG20やG7に携わる官僚の仕事 国連や民間企業を経ての転職ストーリー

迫口さんは学生時代から憧れていた国連機関での業務を経て環境省で働いている。G7やG20などの国際会議に携わり海外も舞台に活躍されている迫口さんだが、その胸中には故郷のみかん畑への想いがあるという。

<プロフィール>
迫口 貞充さん
環境省 地球環境局 国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室補佐
カリフォルニア大学バークレー校環境経済政策学部卒業、コロンビア大学大学院修士課程修了(都市計画専攻)。民間環境コンサルティング会社のERM、国連開発計画(UNDP)などを経て環境省に入省。2020年任期付採用を経て、2022年経験者採用。海洋プラスチック汚染対策の国際案件を担当し、2022年から現在のポストで、パリ協定における市場メカニズムの能力構築や透明性議題の交渉に従事。鹿児島県出身。



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憧れていた国連から環境省へ 気候変動等の環境問題に影響を受ける人たちの力になりたい

ー国連勤務を経て官僚になられたというご経歴ですが、どのようなキャリア変遷だったのでしょうか。
金融系IT企業や環境コンサル、UNDPなどを経て2020年から環境省で働いています。国連で働くことは留学のタイミングで意識した道だったので、経験できてよかったです。

私はアメリカのUCバークレーという大学を卒業したのですが、3年生のタイミングで進学か就職を検討する際、将来的に国連で働くことを意識して修士の道を選びました。
バークレーは緒方貞子さんの母校ということもあって、色々と大学の情報を調べる中で緒方さんの活躍を知り、バークレーに在籍中に国連をより具体的にイメージしていくようになりました。

私は鹿児島の片田舎のみかん農家の出身でして、ずっと環境問題に関心がありました。留学先のバークレーでは環境経済政策を勉強し、大学院では都市計画を専攻しました。修士取得後、長引くリーマンショックの影響下で採用いただいた金融情報を扱うIT企業のFactsetに入社しましたが、環境のバックグラウンドを活かすべくERMというイギリス系環境コンサルティング会社に転職し、M&Aに関わる環境デューデリジェンスや調査などを担当しました。ERMで約4年半の職歴を積み、外務省JPO(ジュニアプロフェッショナルオフィサー)制度でUNDPに転職することが叶いました。UNDPでは、NYオフィスで環境社会セーフガードポリシーの作成など環境に関わる業務を担当しました。JPO在籍中に国連の正規職員を目指しましたが叶わず、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)に移ってG20も含め国際案件を担当しました。その後UNCRDという名古屋の国連オフィスにご縁があったのですが、程なく環境省の空席情報を聞きつけ、まずは任期付で入省することとなりました。その後経験者採用で環境省を受け直し、現在はプロパー職員となっています。
※JPO:各国政府の費用負担を条件に国際機関が若手人材を受け入れる制度。外務省では35歳以下の若手の日本人に対し、2年間国際機関で勤務経験を積む機会を提供

みかん農家の息子として、気候変動の影響をダイレクトに受ける両親の姿をみてきました。実家のみかん畑が洪水や干ばつで大変な状況を見るたび、漠然とですが「環境問題や気候変動の解決に向けて何か助けになりたい」と思っていました。今の仕事がどこまで直接的に貢献できているかはわかりませんが、気候変動や環境問題の解決に向けた業務に携われているというのは、多少なりとも、幼少期から思い描いていた像に重なるのかなと思えます。

ーJPOでのご経験のあと、環境省で働くビジョンをお持ちだったのでしょうか?
いえ、すぐにそう思った訳ではないです。環境省に入ろうと思ったのは、IGESでの業務で一緒に仕事をする機会が多かったためです。IGES職員の立場で幸いにもG20を担当することができ、G20全体でひとつの成果をまとめる機会に触れ、環境省の業務に興味を持つようになりました。

軽井沢のG20では、各国の気候変動適応の取り組みをまとめたドキュメントの作成に携わりました。G20各国から該当する取り組みを窓口である環境省が収集し、それをIGESがドキュメントにまとめていく作業でした。実際に軽井沢に行くと、コミュニケ(議論の元になる成果文書)のなかに自分が担当した資料が言及されていて、国際的な場面で形になるのを見たわけです。それに加えて、夜10時から始まる議論であったり、それと並行して進められる交渉を間近で見ることによって、「国際的な議論は、すぐにまとまるものではなく、いろんな粘り強い交渉があってこそ成果物ができている」ということがわかりました。「ディシジョンメイクはこんなにいろんな努力の積み重ねでできている」というのを肌で感じて、環境省がやっている業務がすごく格好よく見えました。それで、「こういう仕事を自分もやりたい」と思うようになりました。

形式によって内容が違う、国家公務員の中途採用試験

ー転職活動はスムーズでしたか。どんな流れだったのでしょうか。
環境省に転職で入るには、把握しているものとして二つのルートがあります。一つは技術職員として環境省がダイレクトに採用しているルート。もう一つは人事院による経験者採用で、私が受けたのは後者の方です。当時環境省の任期付職員でしたから、環境省にいながら環境省を受け直した形です。そういう選択肢があることを在籍中に教えてもらっていたのでタイミングよく受けられました

最初に任期付職員として環境省に入った際の採用は、スムーズに進んだ印象です。応募をすると、職務経歴表と題材が示された作文を提出することになります。書類審査が通ると面接が2日間ありました。私は2つのポジションに応募していたので、面接を交互に受ける日程でした。
面接では「このポジションで、自分のバックグラウンドを活かしてどのような貢献ができるか」というようなことをメインで聞かれました。海外経験、国連での業務経験、IGESでの環境省との連携の経験を評価してもらえたと思います。各国との調整業務、環境コンサル時代のプロジェクト管理や技術的な経験についても面接では強調しました。

人事院の経験者採用でのプロセスはもう少し大変でした。多くの書類を直筆で提出しなければいけなかったことに加え、マークシート方式試験や筆記による作文もありました。二次試験には、課題に対する集団ディスカッションや個別面接もありました。最終合格後に続く面接は、志望した環境省で何時間もかけて次々に色々な人と面接する形式でした。その翌日に最終面接が行われ、その日のうちに合格の連絡をいただきました。

国際ルールの方針を作る、ダイレクトに意思決定に関われる仕事の魅力

ー今のお仕事内容とやりがいを教えてください。

今は気候変動に関して、パリ協定六条の市場メカニズムの能力構築支援と、COP交渉ではパリ協定十三条の透明性の議論を担当しています。G7、G20、COPなどの国際交渉に参加し、成果文書のテキストに日本のスタンスを反映するように交渉することが含まれます。チームや室で相談しながらドラフト文書を用意し、関係省庁との調整なども行います。全体クリアが取れた対処方針を持ってG7、G20、COPなどに臨み、それを元に議論していく感じです。
やはり自分がダイレクトにディシジョンメイクする交渉にあたれるというのは、代え難い経験です。自分が発言したことが国際交渉のテキストに反映されるというのは、誰にでも経験できることではないと思います。すごく責任のある業務であると同時に、貴重な経験を積めていると思います。

ーこれからのキャリアをどうお考えになりますか。

やはりこれからも国際案件に携わっていきたいですね。これまで交渉を経験してきて、こうなりたいと思うロールモデルが何人かいます。

例えば、G20軽井沢の時に議論をリードしてコミュニケをまとめていた方は、交渉の持って行き方がとても上手でした。各国の話をきちんと聞いて、バッティングしている部分においては、全員が納得してもらえる代替案を提案していました。とてもスムーズな交渉を主導していて、すごいと感じました。
また、国連環境総会のときに日本を代表して交渉していた方は、英語の単語一つとっても、それがテキスト内でどういう意味合いを持つかということを専門的に理解していました。他の国が提案したテキストに対して「このワードはこういう理由でここには適さないから、このワードの方がベターだ」といった提案ができる方で、自分自身ももっと勉強しなければならないと感じさせられました。
また、長らく交渉を一緒にさせていただいていたある方も、あらゆる場面で助言をくださいました。経験に裏付けされた知識がとても豊富で、国際交渉の経験が長いため、提案するテキストに重みがある。国際的な交渉の場においても顔と名前が知られており、専門知識と”人となり”によって交渉を進めていく姿をみて、格好良いなと思っていました。

上記の方々に加え、環境省に入って、周囲が本当に優秀ということを業務を通じて実感しています。そして、自分がその中で業務できていることをとても嬉しく思っています。私も経験を積み、ロールモデルとしている方々に少しでも近づき、自分なりの専門性と強みで環境問題の解決に貢献していけるようになりたいです。


【編・写:大屋佳世子】


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