Webtoon設定集とローカライズ
世界のみなさま、こんにちはWebtoon(縦読みマンガ)・Web小説の翻訳を得意とする(株)ボイスルジャパンにて中の人をしております、youmeです。そうです、弊社にお問い合わせいただいたら一番に回答する、あの人です。
今回はWebtoon翻訳の際に出てくるローカライズについてお話できればと思います。
翻訳後の読者がスムーズに読めるように作品の場面設定を現地仕様に一部変更することを、エンタメ翻訳業界ではローカライズと呼んでいます。主にマンガやWebtoon・ゲーム界隈でよく使われている用語です。
ローカライズするかどうかは翻訳を発注するクライアント側で決定します。最終的には読者に最も近い配信先プラットフォームの意向によるところが大きいのですが、翻訳を行う前に作品を確認し、クライアントさんと相談した上でローカライズを行うかどうかを決めています。
ローカライズ検討の対象となるのは現代の場面設定で展開されるドラマや俺TUEEE・異世界転生などの物語です。ロマンスファンタジーなどはそもそも場面自体が架空の世界なので、ローカライズなしで進められます。(だから世界的な展開も早いのでしょう)
ただ、全てをローカライズすればいいかといえばそうでもなく、映像化への展開を考える場合はしないほうがいい場合もあり、やるべきか、やらぬべきかの答えはひとつではないのが実情です。
実際にあったケースですが、Webtoonでローカライズを行った作品が後にアニメ化された際に、同じ作品なのにキャラ設定に日本語版と原語版がある、といったケースがありました。
通常、映像翻訳では音声や画面の編集が難しいことから設定のローカライズは行いません。なので映像化を見据える場合はローカライズしないという選択肢もありえます。
ローカライズするかどうかについては先程クライアントさんと相談して決めるという話をしましたが、時にはローカライズ依頼が出ていたものを、ローカライズしないようにこちらからご提案させてもらうこともあります。
たとえば韓国作品の場合、特に大学を舞台にした学園ものの場合は大学ブルゾンや軍隊問題などからそのままの設定で進めることが多いです。
Webtoon翻訳を支える設定集
Webtoon翻訳のプロセスもスタジオ制作と同様に分業制をとっています。翻訳→翻訳検収→写植編集→写植検収の全行程を納品スケジュールとにらめっこしながらPM(プロジェクトマネージャー)が進行管理する、といった形です。
複数人が関わり、しかも1作品あたり数ヶ月〜1年程度に渡る長丁場になります。そのため話を進めるにしたがって辻褄が合わないことがないように、設定集という物語の設計図を最初に作成します。
この設定集作成はローカライズの有無に関わらずすべての長編作品で行います。Webtoon翻訳における非常に重要なステップです。
設定集は話の筋をぶらさないための重要な資料になるため、名前だけでなく、年齢や性別、口調や作中での呼ばれ方まで整理します。制作で言う原作企画やキャラデザインと似たような工程です。
設定集作成のために、翻訳者さんには作品を先読みしてもらいます。作品を読み込みながら物語の世界観をインストールしてもらうのです。
短い場合で10話、多い時には30話以上を読み込んでもらうため、もともとWebtoonを日頃から楽しんでいる方が翻訳を担当されることがほとんどです。作品を読み込みながら設定集を作成してもらうので、本当にWebtoon翻訳者のみなさんには頭が上がりません。いつもありがとうございます。
大きく変えるのは名前と主人公のいる国
名前と物語の主人公のいる国や地域。ローカライズすることが決定したら大きく変えるのはこの2点です。
名前の変更 難易度 ★☆☆
ローカライズによって名前を変更する場合は元の名前から音や意味を借りたり、キャラの特性を生かした名前を付けます。日本語版キャラに人格を吹き込む重要なステップです。
弊社ではこの部分を翻訳者さんに任せておりますが、みなさんなかなかセンスのいい名前をつけてくださいます。漢字や音などにちょっとした洒落がきいていることもあり、作品を楽しんでくださっていることが伝わってきます。(たまに名前が伏線になってることがあってあわわわわ;;;;;)
国や地域の変更 難易度 ★★★
『梨泰院クラス』→『六本木クラス』の例で有名な場面変更ですが、場面を日本設定にした場合、どこにするか…は結構悩みどころです。
某作品で池尻大橋や丸子橋なんてのが出てきたのを見たことがあるのですが、あれは土地勘がないとなかなか理解するのはしんどいのでは…と想像しています。
作中の移動の距離感や作中の雰囲気も合わせて提案してくださるので、これも翻訳者さんのセンスが光るポイントです。
ローカライズでは大きくこの2点が変更されます。物語の世界観を決定づける内容のため、作品を読み込んで、設定を整理した上で世界観をどう翻訳していくかを最初に決める、とても奥が深い作業なのです。
というわけで現代を舞台にした作品の海外展開をご検討中のWebtoon業界関係者の皆様におかれましてはぜひ! この記事を通じてローカライズの奥深さを知っていただければ幸いです。(すっごくがんばってるんだよぅぅぅ)
今回も最後までお読みいただきありがとうございます!
Webtoon翻訳に興味がある方は問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。オンラインでカジュアルMTGしましょう! ご連絡お待ちしております。