Voicyが“声”に込める想いと信念
株式会社Voicyが開発・運営をする音声プラットフォームVoicyは2022年9月23日、おかげさまでサービス提供開始から6周年を迎えます。
Voicyは今年、新たなコーポレートメッセージ「声で、未来を変える。」を掲げました。それは、“声”の持つ大きな可能性を信じているからこそです。
今回ニュースリリースでは、パーソナリティの声がリスナーへポジティブな影響を与える存在となっている様子を特設サイトにまとめ、発表しました。
ここでは、この機会にあらためて、Voicyの創業にまつわるエピソードや信念、これからの展望について、Voicy代表・緒方憲太郎の視点でお届けします。
なぜその事業をやるのか、周りに理解されなかった
創業当初は「音声なんてもう伸びてない市場なのになぜ」と、周囲に信じてもらえませんでした。
素敵な事業とは、いったいなんでしょうか。
お金を稼ぐこと?ユーザーのニーズにこたえること?
社会的であること?時代にマッチしていること?
どれも、事業にとって大事な要素だと思います。
しかし、僕が大切にしていることは少し違うところにあります。Voicyは、僕が一生を懸けて体現したいことが詰まっているサービスです。おかげさまで、注目されているねと言っていただくことも増えましたが、決して平坦な道を歩んできたわけではありません。
29歳で訪れた分岐点。TOEIC415点で飛び込んだニューヨークでの会社員生活で知った「仕事で価値を生み続けないと生きられないこと」
創業前の話です。僕は、29歳まで公認会計士として働いていました。会計士を目指した理由を挙げるとすれば、色々な事業が見られそうだから。取っておくと将来選択肢がありそうだから。そんな理由だったと思います。憧れより、一つ生きる術を持っておこうとしたんだと思います。
しかし、苦労してようやくスタートした公認会計士の仕事を、僕は心の底から楽しむことはできませんでした。いつの間にか僕の思考は、不安なく生きるためには仕事が必要で、そのための環境を得なければと考えるようになりました。自分に合った楽しい仕事が存在するなんて、当時は考えもしませんでした。
人生は、要領よくポジションを取りながら進むものなのかもしれない。僕の仕事に対する価値観はどんどん仕事に対して期待しない方に向かっていたようでした。
そんな29歳のとき、転機がやってきました。何かを変えなければ。そう思った僕は、1年間、海外放浪することを決断しました。そして、ニューヨークで会社員として働きました。TOEIC415点で飛び込んだ職場は本当に大変で、生きるために必死に仕事をしていました。僕はそこで、仕事で価値を生み続けないと生きられないことを知りました。
仕事観を変えたのは、海外に飛び込んで体験した2つのできごと
そんななか、海外に飛び込むことで、自分の仕事観を変える2つのできごとがありました。
1つ目は、東日本大震災が起こり、アメリカにいる医師を日本に送る団体を立ち上げたことです。医師の友人が絶対つくりたいと言い出し、その立ち上げに奮闘しました。震災直後の情報が混乱するなか、医師を集め、金や航空会社から宿まで各地交渉し、多くの医師と思いを被災地に送ることができました。いろんな感謝が生まれる場所に立ち会ったとき、なにかが心の中に生まれた気がしました。
2つ目は、友人がやっているオーケストラから、ボストンシンフォニーホールというとても大きなホールで単独公演をやりたいから仕切ってほしいと頼まれたことです。もちろんイベントビジネスはやったことがありません。資金調達から価格設定、当日の運営まで。必死でした。今でも、よくできたなと思います。フィナーレの2,700人のスタンディングオベーションのど真ん中で感じた身震いは一生忘れません。
友人がやりたい未知の夢を実現する手伝いが多くの人に価値を与えていく。こうやって社会はハッピーになっていくのか。それまで、自分の環境を良くするために行動を選んでいました。新しい価値を生み、人をハッピーにしてるとき、こんなに幸せを受け取ることは知りませんでした。そこには、今まで考えてた要領良い生き方やお金は関係ありませんでした。
人をハッピーにするために生きる。30歳にして見つけたやりたいこと
新しい価値を生み、人と社会がハッピーになる仕事がしたい。帰国して、次の仕事に選んだのは、ベンチャー企業をサポートするお仕事でした。約300社。資金調達の相談、事業の相談、投資家との架け橋になる日々を過ごしました。ベンチャー企業が挑戦する新しい世界やエキサイティングな成長に虜になりました。
誰かが喜んだり、社会が変わる仕事はこんなに面白いのか。かつて意識していた要領よく生きるという概念はそこにはありませんでした。泥臭くても面白い。この仕事は天職なのかも知れないと感じました。仕事をつくり出すという経験は、僕にとって本当に刺激的でした。
しかし、ある体験が、僕の大切にすることをまたもや変化させることになります。
僕は、あるIT事業を一緒につくっていました。事業は順調に成長しているかと思われました。しかし、いつの間にか、その事業が大切にしていたコンテンツや世界観が壊れていきました。原因は、意図しないコンテンツばかりに課金が集中してしまったことでした。また、課金をしていたユーザーのお金の流れも、決してそのユーザーにとって本当に幸せになるお金の使い方ではないという現状を知りました。
ビジネスモデルは、文化を壊す可能性がある。ときにユーザーをより不幸にする。事業にとって大切なことは、お金が稼げればいいんじゃない。自分を表現するために事業があるんじゃない。社会が前に進む事業であるかどうか。社会に幸せな価値を生みだすことなんだ。
僕が次に挑戦するなら、多くの人を幸せにする素敵な事業をつくってみせることかもしれない。いままでの経験を使えば、素敵なものを社会に届けられるかもしれない。そして僕は、35歳で株式会社Voicyを立ち上げます。事業にとって本当に大切だと思うものを体現していくために。
“声”を選んだ理由
そもそも、なぜ音声で起業することにしたんですか?
動画全盛期のなかで創業したこともあり、よく聴かれる質問のひとつです。
逆に、質問させてください。
人と飲みに行って、テキストや動画を介してコミュニケーションを取りますか?
おそらく、不自由のない方はみんな声で話していると思います。
人と話すことは最高のエンターテイメントで、好きな人の声を聴きたいという気持ちはほとんどの人が持つ感情ではないでしょうか。
それがIT化されていないことに気がついたんです。
世の中の情報のほとんどが目から取り入れるものばかり。
耳の世界は革命的に伸びる。人が一番求めているのは人の声。
声は、人々をハッピーにさせることができるんじゃないか。
スマートフォンの次に、人々の行動や生活を変えるのは声だ。
そう考えて、音声とテクノロジーを使った事業にしようと決意しました。
創業、ようやくサービス開始。失敗続きだったVoicy
2015年、エンジニアの窪田と出会い、Voicyの元になるサービスをつくっていきました。しかし、思い通りにはいきませんでした。友人のオフィスを転々と間借りしながら、二人で作るサービスはなかなか完成しませんでした。コンセプトも理解されません。人のアドバイスを受けて二転三転。ようやくリリースに辿り着いたサービスは、ユーザー数が100人にも満たない状況が数ヶ月も続きました。
アプリもよく落ちるし、サービスや事業をバカにされるのはまだよかったのですが、配信してくれるパーソナリティさんたちにまでその影響が及ぶのは、とても悲しかったです。
「使ってくれる人がいるだけでも嬉しいね。でも、もうちょっと使ってくれてもいいのにね。」そうやって窪田と夜中のオフィスで笑っていたのを覚えてます。
「とにかく声で発信しやすくなれば、今まで音声発信してない人も参加して更にクリエイティブにもなる。そしたら面白いコンテンツが生まれるから、それでリスナーも喜ぶんだ!」そうやって意気込んでいましたが、日々のデータとにらめっこしていた僕の声は、約半年間、なかなか元気になりませんでした。
Voicyにとっての大きな転機。声は、“人”を届けられる。
どうしたらVoicyを使ってくれる人が増えるだろうか?もっと手軽に、もっと心の内面を出したらきっと面白くなるはずなんだ。音声で情報を伝えるんじゃなくて、その人の人間性を伝えるサービスにしよう。それも、簡単に収録ができて簡単に聴けるからこその、声のブログを目指そう。
2018年、これまでニュースや情報コンテンツが多かったVoicyに声のブログが登場すると、Voicyはこれまでないほどにユーザーが伸び、コメント欄も盛り上がるようになりました。声のブログは、新しい価値がある。それを知った人たちがパーソナリティに応募してくれたり、リスナーもその魅力や楽しみ方を発信してくれるようになり、Voicyのサービスは一気に姿を変えました。
Voicyは、これまで文章では伝わらなかった温かさ、普段見せないその人のオフの部分をうまく表現し始めました。音声は、これまで見えなかった人間性の部分や感情などを表現することができると、確信に変わった瞬間でした。
なんで、音声の会社!?
動画の方がいいんじゃない。
情報なら活字で充分!
そんな音声に対して懐疑的な意見ばかりだった世界が、Voicyのユーザー数増加と比例するように、感謝される世界に色が変わっていきました。そして、少しずつ、Voicyや音声の必要性を発信してくれる仲間が増えてきたんです。
どんな発信よりもシンプルな収録だからこそ、専門家や経営者、ワーキングマザーなどの多忙な人たちの声を届けられるように
声のブログを目指したことによる転機を経て、Voicyが生み出したフォーマットは「音声の大衆化」を起こしました。テキストや動画などのどんな発信よりシンプルで手間のかからないこの声の発信ツールは、編集しない声だからこそ、本人性や想いが届く新しいコンテンツを生み出します。そして、手軽に収録できることから、各分野の専門家や経営者、ワーキングマザーといった忙しい方々の声を世の中に届けられるようになりました。
リスナーにも新しい価値を提供してきました。応募通過率5%前後の審査を通過したパーソナリティが集まることで、日々を豊かにする信頼度の高い声とだけ出会える環境になっています。さらに、“ながら聴き”ができることで、忙しいなかでも人や情報に触れる機会をつくることができ、Voicyの平均聴取維持率は80%超。多くの方が放送を最後まで楽しむ文化が生まれています。
現在では、おかげさまで会員登録者数は前年比2倍の150万人を突破。チャンネル数は1,600を超えました。サービス開始当初には考えられないことです。
企業スポンサーやプレミアムリスナー機能などを通じて1ヶ月の収益が900万円を超えるパーソナリティも生まれたりと、流通総額は前年比約4倍となっています。ブランディングの一環などで音声活用をしている企業など、音声の法人利用も増えていますし、テレビ・新聞・雑誌・Webなどのメディアによるチャンネルは、70チャンネル超、人や社会を豊かにする声が集まる音声の総合プラットフォームになりました。
新しい価値を生み、人と社会の未来を豊かに変えるサービスへ
みんなの見本になるような素敵な会社をつくりたい。
世の中にハッピーを生みながら、楽しんで稼げる会社を目指していいんだって実証したい。
これが、Voicyを立ち上げたときに決めた、僕が大切にしていることです。この想いから、人の声を届けることがなによりも価値になる、人と社会を豊かにするコンテンツを届けるプラットフォームをつくりたい。そう考えました。
そうして生まれたVoicyは、パーソナリティファーストを掲げています。それは、その価値の源泉はパーソナリティの声だから。
僕は、音声に無限の可能性を感じています。その可能性は、決して自分の力だけで理解したものではありません。Voicyを使ってくれているパーソナリティ、そしてリスナーの方々にVoicyを通じて教えてもらったこと、気づかされたことばかりです。
声には、未来を変えられるだけの力がある。
僕たちは、インターネット上における発信、そして受信に大きな変化を生み出そうとしています。発信者にとって、編集なしで収録した声をそのまま発信できることは、手間が少なく、自分自身の活動や生活に時間を使えるようになります。編集をしないからこそ、本人性と思考が削ぎ落とされることなく、発信者の人柄をありのまま届けることができます。一方で受信者は、ながら聴きができることで、忙しいなかでも人や情報に触れる機会が増え、新しいコンテンツと向き合う日常がやってきます。
声を届けることで新しい仲間が増え、
自分もアップデートされる未来がある。
声を聴くことで新しい価値観に出会え、
人生をアップデートできる未来がある。
人々がアップデートしつづけ豊かになることで、社会は前進し、社会が前進すれば、未来は明るく進化する。そう信じています。
これからの音声業界の可能性は無限大です。その声を届けるプラットフォームであるVoicyは多くの人々の未来を変える主役の集合体になっていきます。僕たちVoicyは、新しい価値を生み出す価値創造型テック企業として、ユニーク&ユーモアも大切にしながら、人と社会をより豊かにするため全力で挑戦し続けます。
音声xテクノロジーでワクワクする社会をつくる
代表取締役CEO 緒方 憲太郎
<プロフィール>
大阪大学基礎工学部卒業後、大阪大学経済学部を卒業。公認会計士として社会人をスタートさせた後、1年間の世界一周の旅に出る。旅先では、医療系NPO法人の立ち上げやオーケストラ公演のディレクションも。その後、アメリカの会計事務所Ernst&Youngに就職。帰国後は、ベンチャー企業の経営者支援を経て、2016年に株式会社Voicyを創業。現在Voicyは、累計36億円を調達し、会員登録者数150万人の音声プラットフォームとなっているほか、自身としても、声優・平野文さんや経済学者・竹中平蔵さんなど数々の番組を進行しながら、人の魅力や価値を引き出しリスナーへ届けている。2022年4月から、ABCラジオ「緒方憲太郎の道に迷えばオモロい方へ」を放送中。アナウンサーの父の背中を見て育ったことが音声の原体験で、自身も、創業時にアナウンス学校に通った経験をもつ。声のチカラで、生活と社会を変えて、新しいワクワクする価値を生む事業が好き。近著は、日本経済新聞出版『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』。
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