私vsマスク

私は歌い手である。この仕事を始めて今年で25年になる。
趣味は化粧品。と言ってもメイクアップのテクニックに長けているわけではなく、成分について調べたりするのが好き。
生まれつきアレルギー体質で肌が弱く、使えないものが多いので自衛のために勉強を始め、それが高じて化粧品成分検定1級と日本化粧品検定1級を取得。
歌を歌う仕事には直接関係ないので単なる趣味だが、人前に出ることも少なからずあるので商品の見栄えを良くするのも仕事のうちだと思っている。そういう意味でもとても役に立つ勉強をしていると思う。

さて新型コロナ感染症の流行でマスクをするのが当たり前になったこの頃だが、私はかぶれに非常に悩んでいる。
最も効果が高いと言われる不織布マスクはもれなくかぶれるが、かといってマスクをしないわけにもいかず、ほとほと困った私は「どうすれば被害を最小限にとどめられるか」を考え始めた。
不織布マスクが合わないので、コロナ以前から日常的に布マスクを使用していた。今から考えればつける頻度が低かったのだと思うがここまで深刻なかぶれには悩まされていなかったはずだ。
私のような者にはどうやっても防ぐのが難しい「マスクかぶれ」について考えたことを綴ってみようと思う。

1. 私のかぶれの原因
まず不織布マスクにかぶれる最大の理由としては摩擦である。もともと外的刺激に弱く、すぐに赤くなったり湿疹が出たりする。マスクをつけたまま喋ったり、ズレを直したり、表情を変えるだけでも摩擦が生じてしまいかぶれの原因になり得る。

もう一つは化学物質。
製品化されたマスクにはいろいろな化学物質が使用されているが、不織布の漂白剤などにも反応しているようだと医師に指摘されたこともある。
余談だが私は、多くの人が問題なく使えている風呂用洗剤とか蚊取り線香、外壁の塗料などを吸い込むことでも体中に湿疹が出たりする。非常に厄介である。

という大きな2つの理由からこれまで以上に可能な限り不織布マスクを避けることにした。

2. 新たな懸念
ところが布マスクでもかぶれるようになった。私の場合はマスクが当たる口周りが顕著でたまに頬。いずれも赤くなって湿疹が出ている。時々白ニキビも登場し、どれもまったく歓迎されていないのに治りも悪い。
不織布そのものが良くないと思っていたので布マスクでのかぶれは意外だったが、考えてみれば多少マシとはいえ摩擦はゼロではない。

原因としてまず浮かんだのは残留洗剤だ。布マスクは使用するたびに手洗いするが、界面活性剤が新型コロナウィルスに有効ということもあり洗剤は必ず使う。最初はすすぎが足りないためマスクに残留した洗剤が肌を刺激するのだと思っていたので、マスクの素材により液性を使い分けて、前よりすすぎの時間を長くした。

3. 対策その1「インナーシート」
しかし口周りの肌荒れが治らない。そこでマスクに内側にインナーを入れることにした。私が購入したのはシルク100%のインナーシート。
化繊には注意が必要だがシルクは問題ないことがわかっていたのでこれで解決すると思った。実際肌触りが良いこのインナーは重宝している。しかしかぶれは減らない。
もし残留洗剤が原因ならこのインナーシートも使うたびに洗っているので同じことかと気がついた。何の意味もなかった…と落胆したが、あれば使用感はかなり良くなるので洗い方を工夫してこの先も使用はしていくつもりである。

4. 対策その2「プロテクトするスプレー」
次に摩擦や刺激をプロテクトするというスプレーを導入してみた。
メイク崩れ防止を謳ったものをよく見るようになったがそれらの多くはエタノールが入っており、私にはそれが刺激になるので避けることになる。
少ない選択肢の中からエトヴォスの「モイストバリアクリーム」とラロッシュポゼの「トレリアンウルトラ8モイストバリアミスト」を使用。どちらも効果はあったと思うが完全にかぶれを防止するには至っていない。
マスクをつけること自体がかなりのストレスになってきていた。

5. 対策その3「マウスシールド」
とはいえ今や丸腰で電車には乗れない。そこでマウスシールドを導入した。
肌への接着面は段違いに少なくなり当然かぶれは激減した。久しぶりにマスクの中のムズムズを感じずに済み非常に快適である。
しかしこれは自分の飛沫を防ぐのには有効だが、マスクほどウィルスに対する防御能力はないと思う。ウレタン製の「PITTAマスク」でさえ効果がないと言う医師がいるくらいなので、マウスシールドの防御能力など推して知るべし。
一定の距離をキープしつつこれで事足りる場合のみの使用にとどめ、人が多く集まるところや電車やバスではマスクをするしかなさそうだ。

6. 対策その4「プラケット」
「プラスチックインナー」「ブラケット」(誤用?)とも言う。立体的なのでマスクが持ち上がって空洞ができ呼吸がしやすいというもの。マウスシールドの実験から考えるに肌への接着面が減るのは非常に効果的なので、これは最終兵器になるかと期待して使用してみる。
初回は短時間だったこともあり「もっと早く導入すれば良かった」と思った。メイクはよれるがかぶれるよりはマシだ。
ところが二度三度とつけていくうちにやっぱり湿疹が出た。そして私はある仮説にたどり着いた。

7. すべてはこれのせいだった
マスクをするとその素材に関わらず密閉されているので当然蒸れる。一説によると密閉された空間の中で蒸れが生じ、肌の常在菌のバランスが崩れてかぶれが起きるという記事を読んだこともあった。
蒸れてふやけた肌からマスクを外すことでカラカラの乾燥状態へ。例えて言うなら湿度80%から一気に湿度10%にまで下がるイメージ。こんな急激な温度・湿度の変化に肌は対応できない。バリア機能も低下した状態になる。
そしてプラケットの跡に湿疹ができていた。マスクが肌についていないところなのになぜ、と思ったがここであることに気がついた。

私は自分の汗や血液でもかぶれる。アトピー持ちの場合、自分の汗であっても異物と判断して過剰防衛が起きるためだ。プラケットの下は蒸れて汗をかいていたので湿疹はおそらくそのせい。
そしてマスクをしている時、肌がムズムズしたりチクチクしたりするのは、自分の呼気による蒸れで汗をかくのと同じような状態になっているのではないか。
これがたどり着いた仮説である。不織布も残留洗剤も問題だが何より自分の呼気による蒸れがすべての原因だったのだ(たぶん)。

最終章. さてこれからどうしよう
原因はほぼ判明したと思うけれど、マスクをしないわけにはいかずマウスシールドですべてを賄うこともできない。対策としては通気性の良いマスクを使用することと保湿を今以上に心がけることだが、マスクをしている限り根本的解決にはならない気がしている。こまめにマスクを外した方が良さそうである。
さらに、万が一残留しても肌に悪影響のない洗剤に変える(既にそれを選んでいるはずなのに)、シルクのインナーシートは使用継続、この辺の対策をしてしばらく様子を見てみたい。
もっと良い物や有効な手段を見つけたらまた書いてみようと思っている。

最後に。
この体質のせいで面倒なことが多々ある。よく「めんどくさい身体」と説明しているが何かを悲観しているわけでもない。おかげで役に立つ知識を得たし趣味もできた。
これからもどこか楽しんでひらりとやっていこうと思っている。

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